子どもの貧血

子どもの貧血 思春期、激しい運動にも注意

何となく顔色が悪く、元気がない。
だるそうにしている。
離乳期や思春期の子どもに、こんな症状が表れたら、貧血を疑ってもいいかもしれない。

貧血は、血液中の赤血球の数、またはヘモグロビンが減ることで起こる。
ヘモグロビンは赤血球の中にあるたんぱく質で、全身へ酸素を運ぶ役割をする。
不足すると、体のさまざまなところで酸素が足りず、疲れやすくなったり、顔などが白っぽくなったりする。

貧血の原因は
(1)血液がうまく作れない
(2)血液が壊される
(3)血液が体外へ失われる
に大きく分かれる。
中でも(1)に含まれる「鉄欠乏性貧血」が代表格。
ヘモグロビンは鉄と結びついているため、鉄が不足すると十分に作れなくなる。

*     *

乳児期に離乳食の進みが遅かったり、食物アレルギーで複数の食物制限があったりすると、鉄不足につながる可能性がある。
体の発育に見合うだけの鉄分が摂取できないと貧血になりやすい。
専門医と相談して栄養面にも十分配慮したい。

思春期はさらに鉄欠乏が起こりやすい。
女子は月経が始まって失う鉄分が増えるほか、過激なダイエットや偏った食生活も貧血の大きな要因になる。東京都予防医学協会が2012年度に都内の小学4年~短大・大学生約3万8千人を対象に検査した。
中学生、高校生とも女子の約10%はヘモグロビン濃度が基準値未満だった。

鉄の不足は離乳期の脳の発達に影響を与えると言われる。
思春期は集中力低下や学習障害、意欲低下などをもたらすこともあると指摘されている。

激しい運動も貧血を招くことがある。
しっかり練習しているのに記録が低下する場合は、スポーツ貧血かも知れない。

激しい運動で消化管への血流が低下し、鉄吸収率も悪くなる。
さらに、筋肉の収縮で毛細血管を通る赤血球が壊されたり、発汗で鉄分を喪失したりすることがスポーツ貧血の主因と考えられている。

こういった思春期の貧血は体は悲鳴を上げているのに、基礎体力があるうえ、貧血がゆっくりと進行しているため気付きにくい。
月経など体の変化を伴う女子は、貧血もその変化の一部と思うと発見が遅れる。

鉄欠乏は鉄剤の服用で改善する。
貧血の中には白血病など重篤な病気や緊急を要する病気もあり、気になる場合は早めの対処が重要だ。


まとめ もしかして、鉄欠乏性貧血?
顔色が悪く、何となく元気がない
離乳期だが、離乳食がなかなか進まない
食物アレルギーがあり、除去食が多い
好き嫌いが多い
ダイエットをしている
暑い日でもないのに、氷を食べることが多い
アスリートとして激しいスポーツをしている

① 貧血全般に言える特徴です。貧血がゆっくり進むと自覚症状のない場合が多く、低年齢の子どもは自ら訴えることができません。
② 離乳が遅いと、体や脳の発育に必要な鉄は十分摂取できません。
③ アレルギーとなる原因食物の除去は重要ですが、過度の食物制限が原因で鉄不足となる可能性があります。

④、⑤ は極端な偏食は鉄不足になるおそれがあります。
⑥ は鉄欠乏性貧血に見られる特徴です。氷など栄養のない物をむやみに食べることがあります。
⑦ 激しい運動をすることで貧血になることもあります。


<関連サイト>
「よく分かる!おはなしシリーズ」(シスメックスのサイト)
http://www.sysmex.co.jp/
(鉄欠乏性貧血の原因や症状などが載っている)
 
スポーツ貧血(江崎グリコ健康科学研究所のサイト)
http://www.glico.co.jp/laboratory/health_science/sports/sports05_1.html

参考
朝日新聞・夕刊 2016.4.28