もの忘れ、工夫で失敗防げ

もの忘れ、工夫で失敗防げ

もの忘れ、工夫で失敗防げ

加齢とともにだれでも増える「もの忘れ」。
生活のちょっとした工夫で、トラブルは減らすことが可能だ。
一方、もの忘れの増加は認知症の始まりとは限らない。
別に原因が隠れていることもあり、専門家は早めの相談を勧める。

認知症? 相談早めに
年齢とともに、もの忘れが増え、失敗をすることはだれでもありうる。
ただ、認知症の始まりのこともあり、早めに専門家に相談することが大切だ。
脳の神経細胞が壊れたり働きが悪くなったりして、新しいことが覚えられなくなり社会的な役割が果たせなくなるのが認知症だ。

記憶の過程には、経験や情報を覚える「記銘」、貯蔵する「保持」、思い出す「再生」がある。
記銘のためには「注意力」と、短時間覚えておく「作業記憶」が必要で、高齢になると衰えやすい。
 
認知症の始まりは、記銘力の低下で気づかれることが多い。
例えば、約束を忘れるのは注意力の問題かもしれないが、約束を忘れ、指摘されても思い出せないのは記銘力の問題だ。
知っているのに名前が出てこないだけなら「再生」の問題と考えられる。
 
病院の「物忘れ外来」では通常、問診や認知機能検査、脳の画像検査で認知症を判定する。
画像検査にはMRIや脳の血流を調べるSPECT(スペクト)検査がある。
 
もの忘れが多いが、日常生活に支障がない状態は「軽度認知障害」(MCI)と呼ばれ、1割が1年後に認知症に進むという報告もある。
ただ、記憶の衰えを正確に診断することは難しく、MCIに厳密な診断基準があるわけではない。
MCIと診断されても、その後良くなる人や何年たっても進行しない人もいるので落ち込む必要はない。

見て書いて予定確認
もの忘れによるトラブルを減らすには生活のちょっとした工夫が効果的だ。
覚える時は、単に読むだけはなく、書いたり、声に出したりなどして五感を使い、繰り返すのがいい。
 
例えば、夫婦で1日の予定を話し合う「1分ミーティング」を開き、大きめのカレンダーに予定を書く。
目で予定を確認するとともに手帳にも書く。
メモだと紙をなくす恐れがあるので、決まった手帳に毎日書くのがいい。
小さめの手帳なら首からホルダーでぶらさげることができる。重要な約束の前には、携帯電話のアラームなどを利用する。
 
認知症の予防のために食事や栄養補給、訓練法、サプリメントなどを試す人がいる。
しかし、日本神経学会のガイドラインによると認知症の予防法は確立していない。
生活習慣病うつ病にきちんと対応して、望ましいライフスタイルを続けることが重要だ。
米国立保健研究所では、認知症予防に有望とみられる生活習慣に「運動の習慣」や「糖尿病のコントロール」を挙げる。
 
習い事、歌、旅行、なんでもいいが、積極的に楽しむ姿勢が大切だ。
もの忘れで失敗をしたときに周囲が叱ると逆効果。
穏やかに受け止めると、本人の気持ちも安定して、能力の発揮につながる。

薬の影響・貧血…別の原因も
一方、もの忘れの増加は認知症の始まりとは限らない。
別に原因があることもあるので注意したい。

高齢者に多いもの忘れの原因の一つが薬の影響だ。
たとえば、長時間効くタイプの睡眠導入剤を使っている人は、普通に行動しているようにみえても注意力が低下して、ものを覚えられなくなることがある。
 
抗精神病薬や市販の風邪薬にも注意したい。
利尿薬やうつ病の薬で血液の塩分に異常が起こると、ぼうっとすることがある。
血液の塩分の異常は、嘔吐や下痢が続いても起こりうる。
認知症と診断された人が、薬をやめたら良くなったという例はいくらでもある。
 
栄養不足による貧血などにも注意が必要だ。
胃がんで胃の摘出手術を受けてから何年もたった後、ビタミンB12の欠乏で貧血が起こり、認知症のような症状が出ることもある。
胃がないと、胃が分泌するビタミンB12の吸収に必要な物質が不足するからだ。
 
頭蓋骨の下にある硬膜と脳の間に血がたまって脳を圧迫する「慢性硬膜下血腫」のため、ぼんやりしたり、異常行動が出たりする人もいる。
頭をぶつけるなど、覚えていないような軽い外傷でも、細い静脈が切れて、ごく小さい血のかたまりができ、1、2カ月後に症状が出ることがある。
検査で見つかれば、手術でほとんど治せるという。


もの忘れの傾向チェックリスト
⬜︎ 今何をしようとしていたか簡単に思い出せない
⬜︎ 同じことを何度も言ったり尋ねたりする
⬜︎ 人と会う約束を忘れることがある
⬜︎ 探しものが増えている
⬜︎ 何かやろうとしても「まあいいか」と思ってしまう
⬜︎ 長年の趣味を楽しめなくなってきた
⬜︎ 外出することが減った
⬜︎ 段取りが下手になった      
⬜︎ レジで会計するときに小銭が使えない
⬜︎ 今日の日付が言えない

3個以上当てはまるようなら・・・軽度認知障害(MCI)の可能性あり

認知症の予防に有望と考えられる生活習慣病
・ 糖尿病のコントロール
・ 高血圧と高脂血症の改善
・ 望ましい体重の維持
・ 社会交流と知的な活動
・ 運動の習慣
・ 果実と野菜の多い健康的な食生活
・ 禁煙      
        (米国立保健研究所の資料)

参考
朝日新聞・朝刊 2016.10.5



1分でわかる「物忘れ」度チェック&もの忘れ対策おまとめサイト
http://www.check-monowasure.net
(「物忘れ度チェック」ができます)

物忘れと認知症の違いは? | 認知症ねっと
https://info.ninchisho.net/mci/k20
・記憶力は20代をピークに加齢とともに減退するが、記憶力以外の能力は様々な経験や体験から学ぶことで20代以降も成長し、知能全体では50歳ごろまで伸び続けるといわれている。
・多くの人は60歳頃になると記憶力に加えて判断力・適応力などに衰えがみられるようになり、知能の老化が始まる。
「記憶力の老化」が進行し物忘れが次第に多くなるのもこの時期だが、この物忘れは加齢に伴う自然なもので、認知症の症状ではない。
・健康な人の物忘れの場合、「自分が忘れている」こと自体は覚えている。
認知症の症状による物忘れは、体験自体を喪失しているので、認知症の患者は理由が分からずと怒ることがある。



<関連サイト>
物忘れが激しい5大原因!30の認知症チェック
http://zutsu-raku.com/monowasure-hageshii-2872.html

最近物忘れが多い…もしかしたら若年性健忘症かもしれません
http://matome.naver.jp/odai/2139575732529908301


認知症による物忘れと健康な人の物忘れの違いは
https://www.dcnet.gr.jp/about/screening01.html


この物忘れってうつ病認知症?若年性認知症を鑑別する4つのポイント
http://seseragi-mentalclinic.com/youngdementia/

急に忘れっぽいと感じたら?物忘れがひどいのは危険な病気の症状かも
http://health-to-you.jp/forgetfulness/monowasurewookosubyouki2039/