冬は痔の大敵

冬は痔の大敵 苦しまないための予防と治療法 血行に注意、切らずに注射も

寒い冬は血流が滞り、痔が悪化しやすいとされる。
痛みがないタイプもあり、放置しがちだ。
治療が遅れれば、腫れたり出血したりして生活に支障が出る。
ただ、生活の工夫で予防しやすく、治療でも切除手術をしなくて済む方法が普及してきた。

痔は日本人の3人に1人が患う身近な病気だ。
3タイプに大別でき、全体の6割強を占めるのがいぼ痔(痔核)。
肛門の皮膚や粘膜の支持組織、周囲の血管が緩んでできる。
いぼ痔には直腸側の粘膜にできる内痔核と、肛門側の皮膚にできる外痔核がある。

このうち悪化しやすいのが内痔核。
肛門近くの血管が鬱血して直腸の粘膜を押し上げ、いぼ状に膨らむ。
大きくなると排便時に肛門の外へ出る。
排便後には肛門の中に戻るが、症状が進むと外に出たままになる。
直腸の粘膜には痛みを感じる神経が無く痛みを覚えないが、痔が腫れたり出血したりする。
内痔核の予防法について、正しい排便習慣と肛門を清潔に保つことが大切だ。

トイレで長時間息むと肛門近くの血管が鬱血し、痔が悪くなる。
反対にスムーズに排便すれば鬱血を防げる。
排便時に力を入れるのは1回当たり5~10秒がメド。
頻度は2日に1回から1日2回程度が適切だ。
便秘や下痢が続くと良くない。
食生活や睡眠のリズムを整えることも大事だ。

便の中には皮膚や粘膜を刺激する物質が含まれ、紙でふくだけでは悪化する恐れがある。
朝食後に排便したら、温水洗浄便座やシャワーで肛門を洗うといい。
次の排便まで比較的長い時間、肛門を清潔に保てる。

そのほか寒い冬には血流が悪くなり、肛門の近くで鬱血が起きやすくなる。
冷たい床にそのまま座らないなどの注意が必要だ。
長時間座っていたり立っていたりすると鬱血するため、時々軽い体操をすると良い。
入浴時に湯船につかると血行がよくなり鬱血しない。

痔になってしまったらどう治療するか。
排便時に肛門から痔が出ても自然に戻るようなら、座薬や軟こうで対処する。
重症になったら本格的に治療する。
これまでは痔の切除手術が一般的だったが、最近は痔に薬剤を注射して血流を遮り、固めて小さくする「ジオン注射療法」と呼ぶ治療法が普及してきた。

切除手術に比べて再発率がやや高いが、再発しても繰り返し注射できる。
局所麻酔で治療でき、治療中や治療後の痛みも軽い。
入院期間も2~3日と手術の3分の1程度で済む。
日帰りで治療する医師もいる。
同じいぼ痔でも肛門側の皮膚にできる外痔核は出血も少なく、気にならなければ放置してもいい。

いぼ痔以外には肛門の皮膚が裂ける切れ痔(裂肛)と、肛門の周囲が化膿して腫れる痔瘻があり、全体の3割を占める。
男性は痔瘻が多く、女性は切れ痔が多い傾向がある。

切れ痔は便が硬く太い場合や下痢の時に肛門が傷んでできる。
便秘では傷が治らないうちに再び傷つく。
繰り返すうちに組織が硬くなり傷が治りにくくなる。
傷が深くなると肛門周辺の括約筋に達することもある。

切れ痔の予防は、食生活のバランスや睡眠のリズムが重要だ。
体調を整えて便を適度な固さにする。
軟こうや座薬での治療が多いが、慢性化すると肛門周辺の皮膚が硬くなり肛門が狭くなるため、括約筋の一部や硬くなった皮膚を切り肛門を広げる手術をすることもある。

痔瘻は肛門近くにある「肛門腺」に腸内の大腸菌が入り込み、感染して起きる。
絶えずうみが出て慢性化し、肛門の周りが腫れて激しい痛みを伴う。
手術で取り除くのが一般的だ。
昔は肛門の周りの括約筋をすべて切り開いていたが、現在は肛門腺を切り開いて肛門につなげるなどの部分的な手術だけで済み、括約筋の機能も保てる。

便の中の大腸菌が原因のため予防が難しいが、大腸菌による感染は常に起きており、免疫力で感染拡大を防いでいるとの見方もある。
食生活や睡眠に気を配り、免疫力を高める工夫が求められそうだ。

ぜんそくや肝硬変の患者には痔を患う人が多い。
肝硬変の患者は肛門周辺の静脈から肝臓へ戻る血の流れが悪く、
鬱血を起こす。ぜんそくでせきをすると静脈が圧迫され、やはり鬱血して痔の発症につながる。

肛門に負担がかかりやすい生活習慣を見直してみたい。

 
イメージ 1
 

参考
日経新聞・夕刊 2014.1.17



<関連サイト>
痔にならないためには
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/39828532.html