笑う門には健康来る

笑う門には健康来る 脳卒中・糖尿病、罹患の割合低く ストレス解消 有酸素運動の効果も

「笑う門には福来る」と昔から言われるが、その真相は?
医学的に「笑い」を研究しようとの試みもなされ、様々な健康効果が期待できると分かってきた。

1日に何回くらい声を出して笑っているだろう。
笑いの効用に詳しい専門家は「笑う頻度は性差と年齢で異なる」と話す。
大阪府内にある企業従業員1600人を調べたところ、男性より女性の方がよく笑い、年齢が上がるにつれ男女とも笑いが減る傾向が明らかになった。
一方、40代以上の男性の5人に1人が週に1回も声を出して笑っていなかった。

動脈硬化軽減か
最近あまり笑っていないという人は多少無理してでも笑った方がいい。
なぜなら笑いにはいろいろな健康効果があり、よく笑う人ほど健康度が高いといえるからだ。
 
が全国の65歳以上の男女約2万人を対象にした調査では、普段ほとんど笑わない高齢者は、毎日よく笑う高齢者より、1.54倍「健康状態がよくない」と感じていた。
健康に対する自己評価が低い人ほど、寝たきりになる割合や死亡率が高いことがわかっている。
 
この調査では心臓病や脳卒中といった命にかかわる病気と笑いとの関係も明らかになった。
ほとんど笑わない人は、ほぼ毎日笑う人に比べ、脳卒中を有する割合が1.6倍、心筋梗塞などの心臓病は1.21倍高かった。
これらの病気には血管の弾力性が失われる動脈硬化が関わっている。
一方で、笑いには動脈硬化を軽減するとの報告もある。
 
糖尿病との関係も明らかになっている。
秋田県大阪府の住民4780人を対象に笑う頻度と糖尿病との関係を調べた。
毎日声を出して笑っている人に比べると、週に1~5日程度しか笑っていない人は1.26倍、ほとんど笑っていない人は1.51倍も糖尿病を患っている比率が高かった。
漫才で大笑いした後は、食後の血糖値の上昇が抑えられたという別の研究結果もある。

私的コメント
明らかに大阪府の住民の方が「笑いの文化」が発達していると思われます。
理屈としては糖尿病が大阪の方の方が少ないと考えられますが、大阪には「食い倒れ」の食文化が、一方秋田県には飲酒の文化がありそうで一筋縄にはいきません。

では、なぜ笑いが効くのか。
一つは「ストレス解消効果」だ。
笑うと緊張をほぐす副交感神経が優位になってリラックスし、コルチゾールというストレスホルモンが減少。
ブドウ糖を取り込むホルモンのインスリンの効きもよくなる」。
 
もう一つは運動効果。
声を出して笑うときは腹筋など多くの筋肉を使う。
消費カロリーが安静時より10~20%増加。
10~15分の笑いで1日のエネルギー消費を10~40キロカロリー増やせるとの報告もある。
笑うこと自体が有酸素運動になる。
 
笑いの健康効果は他に痛みの緩和や免疫を担うナチュラルキラー細胞の活性化、呼吸機能改善、抗鬱作用、認知機能の維持などの報告がある。

笑うから幸せに
「笑う門には福来る」が本当かどうかを調べた研究もある。
笑いの頻度と幸福度との関係を見ており、毎日声を出して笑う人はほぼ全員幸せと感じていたが、幸せと思っている人が必ずしもみな笑っているわけではなかった。

「幸せだから笑うのではない。笑うから幸せなのだ」とはアランのペンネームで活躍したフランスの哲学者の言葉。

このように、笑うこと自体が幸福につながる可能性がある。
普通、私たちは面白いことやうれしいことがあると笑うが、反対に笑うことで福を呼び込むこともあるわけだ。

それを実践するのが「笑いヨガ」だ。
インドで生まれ日本でも各地の健康教室などで活用されている。
笑いを体操と捉え、気分に関係なく笑う動作をする。
笑っていると体と心が変化し、楽しくなる。
作り笑いでも脳血流量が増えるなど、本当に笑った時と同じような反応が起こるといわれる。
 
勧められるのが「メンタルフロス笑い」と「万歳三唱笑い」。
デンタルフロスで歯の汚れをかき出すイメージで、頭の中のモヤモヤを追い払い、幸福になりたいとの思いを込めて天を仰ぎ豪快に笑う。
役者になったつもりでやってみるといい。
笑いを毎日の習慣にしたい。

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誰かと一緒に笑う習慣持とう
同じ「笑う」行為でも、誰かと一緒に笑うのか、テレビなどを見て一人で笑うのかで、健康効果に差は出るのだろうか。
「自分は健康だ」と評価している人がより多かったのは、誰かと一緒に笑う習慣のある人だった。
 
人との交流が多く、社会参加の度合いが高いということがいえる。
社会的なつながりが少ない人は、多い人より死亡率が高いとの報告もある。
 
人が集まって楽しいおしゃべりが始まれば、必ず笑いが生まれる。
職場や家庭、地域で笑える環境をつくりたい。
人と集まる機会が楽しくなるような、笑わせるネタを用意しておくのもよい。

 
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参考
日経新聞・朝刊 2017.1.7