子宮体がん

子宮体がん どんな病気か

子宮の太くなった部分(子宮体部)の内部は粘膜(子宮内膜)で裏打ちされた空洞になっています。
子宮体部の粘膜から発生するがんのことを子宮体がんといいます。
子宮内膜がんと呼ぶこともあります。
子宮内膜に発生したがんは次第に子宮の筋肉に浸潤します。
さらに子宮頸部や卵管・卵巣に及んだり、骨盤内や大動脈周囲のリンパ節に転移したりします。
さらに進行すると、腹膜・腸・肺・肝臓・骨などに転移します。
 
子宮体がんは、50、60代に最も多く発見されますが、5%は40歳未満で発見されます。

原因は何か
子宮体がんの発生には、エストロゲン(卵胞ホルモン)による子宮内膜の刺激作用が関与しています。
 
子宮内膜は卵巣から分泌されるエストロゲンの作用によって増殖します。
卵巣から排卵したあとには黄体が形成されますが、
そこから分泌されるプロゲステロン(黄体ホルモン)の作用が加わることによって子宮内膜は分泌期内膜に分化します。
黄体は2週間ほどで消退して、エストロゲンプロゲステロンの分泌も減少しますが、それに反応して子宮内膜が剥離します(月経)。
正常なホルモン環境では子宮内膜は増殖・分化・剥離のサイクルを繰り返します。
 
しかし、排卵の障害などのために子宮内膜がプロゲステロンの作用を受けないままエストロゲンに刺激され続けると、子宮内膜が過剰に増殖し(子宮内膜増殖症)、子宮体がんの発生母地になります。
 
肥満・未産・遅い閉経年齢(53歳以上)が子宮体がんの危険因子です。
また糖尿病や高血圧症も危険因子とされています。
 
乳がん、大腸がんの既往のある人は子宮体がんになる危険が一般より高く、逆に子宮体がんの既往のある人は乳がん、大腸がんになる危険性が高いことが知られています。
 
逆に、経口避妊薬の使用により子宮体がんの発生率が下がります。

症状の現れ方
ほとんどの子宮体がんで不正性器出血(月経以外の出血)がみられます。
しかし、がん病巣からの出血を「不順な月経」と誤解していることもあり、注意が必要です。
そのほか、漿液性帯下(水っぽいおりもの)、血性帯下(血液の混じったおりもの)や下腹部痛がみられることもあります。

検査と診断
不正性器出血がある場合は、まず妊娠の可能性を否定します。
次に経腟超音波検査で子宮内膜厚の測定を行います。
診断確定のためには、子宮のなかに細い器具を入れて子宮内膜の細胞診・組織診を行います。
診断が困難な場合は、子宮鏡検査や子宮内膜全面掻爬術を行います。
 
子宮体がんの診断が確定したら胸部X線検査、経静脈性尿路造影、膀胱鏡・直腸鏡検査、腹部超音波検査、CT、MRIなどにより病変の広がりを調べます。

治療の方法
原則として開腹手術を行います。
基本術式は腹式単純子宮全摘と両側付属器(卵巣・卵管)切除です。
病変の進行度に応じて骨盤リンパ節・傍大動脈リンパ節の生検(一部をとる)あるいは郭清(すべてとり除く)を追加します。
 
子宮外(卵巣、腹膜、リンパ節など)にがんが進展していた場合は術後に放射線療法や化学療法を行うことが多いのですが、どのような場合にどのような追加治療を行うべきかは世界的に統一されていません。
 
若年女性のごく早期の子宮体がんに対しては、妊娠の可能性を残す目的で、ホルモン療法が試みられています。

病気に気づいたらどうする
不正性器出血、とくに閉経後に出血がみられた場合は婦人科を受診してください。
また極端な月経不順も子宮体がんの発生母地になる場合があるので、ホルモン剤を用いて定期的に月経を起こすのがよいでしょう。


<私的コメント>
全国の地方自治体で行っている「子宮がん検診」は、あくまで「子宮『頸』がん検診」です。
「子宮『体』がん」はノーマークであることに注意してください。
「子宮頸がん」は20~30歳代、一方で「子宮体がん」は50代~60代に特に多く見られ、発生のピークは50代となっています。
近年発症年齢層が若年化しつつあり、40歳代の子宮体がん発生率も年々増加傾向にあります。
一定の年齢以上の方は、「子宮頸がん」のみの検診では「子宮体がん」は見落とされるのが当然です。
受診者に誤解を与えやすい「子宮がん検診」は、是非とも「子宮頸がん」と改めて欲しいものです。
産婦人科学会が、そういった働きかけを厚労省にしないことが不思議で仕方ありません。