逆子を外回転術で戻す

逆子、外回転術で直す 緊急対応できる施設で実施

お母さんのおなかにいる赤ちゃんのお尻が下になる逆子(骨盤位)は出産時に危険が高まる。
安全にお産を進めるため、おなかにメスを入れて赤ちゃんを取り出す「帝王切開」による出産が一般的だ。一方、自然分娩を望む場合、おなかのなかの赤ちゃんを外から力を加えて回転させる「外回転術」という方法もある。
万が一の場合に備えて態勢が整った施設でやる必要がある。

東京都内のAさん(38歳)は妊娠後期に入った28週に逆子だとわかった。
30週の健診で通院していた産科の担当医に「34週の時点で直っていなければ帝王切開を考えましょう」と言われた。
 
逆子になる理由はよくわかっていない。
妊娠中期(16~27週)では半数程度にみられるが、自然に直ることも多い。
出産予定日を3週間後に控えた37週以降では4%ほどとされる。
 
逆子だと出産時に、へその緒が赤ちゃんの体と産道の間で圧迫されて酸素の供給が絶たれ、健康に悪影響が出るおそれがある。
また、赤ちゃんの首に負担がかかり、骨折や首の神経が傷つくこともある。
国内では帝王切開による出産になる。
ただ、1回帝王切開になると、次の出産も帝王切開になるのが一般的だ。
 
女性はできれば自然分娩で産みたいと思った。
医師に「外回転術」という方法があると言われ、試してみた。
外回転術は、母親のおなかの上から赤ちゃんの頭と尻を押して回転させ、逆子を直す方法だ。
 
紹介された国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)の専門外来を受診した。
外回転術は部分麻酔をしたうえで、5~10分で終了した。
1泊入院し、翌朝まで、赤ちゃんの心拍に異常がないかなどを確認した。
公的医療保険がきき、診察と入院代などを含め自己負担は約3万2千円。
その後、自然分娩で第1子を産んだ。
 
外回転術の成功率は初めての出産だと7割、2回目以上だと9割ほどという。
羊水の量が多いほうが回転しやすいなど個人差がある。
 
同センターでは2012年4月から15年3月までに300例行われた。
このうち、子宮内で胎盤がはがれる胎盤早期剥離が2例あった。
赤ちゃんの心拍数異常は135例でみられたが、9割以上は5分以内におさまった。
何かあればすぐに帝王切開に切り替えられる態勢をとっているという。
 
日本産科婦人科学会などの診療指針では外回転術をやる場合は36週以降とし、
・緊急帝王切開が可能な態勢をとる
・前の出産が帝王切開でない
・赤ちゃんが成熟している
ことを確認するよう求めている。
 
逆子を直す方法として、鍼灸や「逆子体操」などをすすめられることもある。
だが医学的に根拠があるのは今のところ外回転術のみだ。
米産科婦人科学会は、37週で逆子の場合は妊婦に対し、外回転術の情報を提供するよう推奨している。
 
外回転術は必ず医師がすべきだ。
希望する場合は合併症のリスクと対応について説明を受け、態勢が整った病院でやる必要がある。

帝王切開に至る例も
逆子が直らなければ、帝王切開になる。
逆子が直っても、出産の際にお産が長引くなど母子の健康状態に問題が出そうな場合は、医師が判断して帝王切開に切り替えることもある。
 
東京都内の30代の女性は、別の病院で外回転術を受けた。
子宮筋腫があり、将来切除する可能性を考えると、何度も子宮にメスを入れるのは避けたかったという。
外回転術は成功したが、出産時に妊娠高血圧症候群が問題となり、帝王切開で出産した。
 
逆子のほかにも、胎盤が子宮口を塞ぐ前置胎盤や双子以上の多胎妊娠などは、事前に出産する日取りを決める「予定帝王切開」になることが多い。
 
厚生労働省によると、帝王切開の割合は増えている。
病院(20床以上)では02年は18%だったのが、14年には25%を占めた。
 
妊婦の高齢化でリスクの高い出産が増えていることや、帝王切開の手術の安全性が高まったことなどが背景にある。
とはいえ、出血量が多くなるなど帝王切開にも一定のリスクはある。
 
何よりも安全に赤ちゃんが生まれてくること、そして母子の安全が一番大切だから、医師と妊婦が話し合って納得して決めることが必要となる。

参考・引用
朝日新聞・朝刊 2018.3.28