糖尿病、喫煙で発症リスク高く

糖尿病、喫煙で発症リスク高く 禁煙後は運動を

喫煙が様々な病気の危険性を高めることはよく知られている。
がんや慢性閉塞性肺疾患COPD)などの原因になるほか、心臓にも悪影響を及ぼす。
では喫煙と糖尿病との関係はどうなのだろうか。
 
私たちが発表した日本の地域住民調査を含む多くの研究により、喫煙が中高年に多い2型糖尿病の発症リスクであることはほぼ確立している。
実際、私たちの研究ではたばこを1日20本以上吸う人や喫煙習慣があった人は、糖尿病の発症が増えることが示されている。
過去の喫煙があると発症が多いという点から、糖尿病に関しては禁煙すべきなのかということになる。
 
この疑問に答えるため、私たちは禁煙してからの年数と糖尿病発症との関係を男性で調べてみた。
すると、禁煙後5年未満では糖尿病の発症率が高かった。
一方、禁煙後5~10年や10年以上では全く吸わない人と同じだった。
この点については米国でも同様に、禁煙後5年間は糖尿病発症が増えるという研究結果が示されている。
 
なぜ5年未満では糖尿病の発症が増えるのだろうか。
禁煙が体重増を招く例が多いのは以前から知られている。
私たちは、そのことが関係しているのではないかと考えた。
 
そこで最初の5年間に禁煙した人について、その前後の体重の変化と糖尿病発症との関係をさらに5年間追跡調査してみたが、明らかな関連は見つからなかった。
糖尿病を発症する人はもともと体質的に太れないケースが多く、禁煙による体重増加が起きなかった可能性が考えられる。
また私は、体重がいったん増えた後に未診断のまま減少した場合もあると考えている。
 
この調査では、新たに禁煙した人でもそれまで吸っていた本数が多いほど、また喫煙年数が長い場合に糖尿病の発症が増える傾向にあることも判明した。
 
喫煙の健康影響を考えればもちろん禁煙が勧められるが、禁煙後少なくとも5年間は糖尿病の発症に注意したい。
具体的には、会社などの健康診断を欠かさず受診し、運動などを心がけ、体重の増減などをチェックしてほしい。
 
禁煙するといろいろな病気による死亡のリスクが、最終的には全く吸わない人とほぼ同じになることが、多くの研究で分かっぞいる。

参考・引用
日経新聞・朝刊 2013.7.21
(執筆 国立国際医療研究センター・糖尿病研究部長 野田光彦先生)


関連サイト
糖尿病―タバコが糖尿病を加速させます
https://sugu-kinen.jp/harm/disease/diabetes.html
・タバコを吸うことで、ブドウ糖をコントロールする役目のインスリンが十分に働かなくなり、糖尿病の発症のリスクを高める。
さらに、糖尿病の合併症である糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害の進行を速める。
糖尿病を予防するには、あるいは糖尿病になっても進行を防ぐには、血糖コントロールに加えて禁煙が大切だ。
・1日20本のタバコを25年間吸い続けると、糖尿病になるリスクは1.6倍になる。
ところが、1年間タバコをやめると、糖尿病になるリスクは吸わない人と同程度にまで低下する。
・糖尿病でタバコを吸っている方が心筋梗塞によって死亡するリスク(2型糖尿病の米国人女性における心筋梗塞による死亡のリスク 1日の喫煙本数が15~34本の場合)は、糖尿病でタバコを吸わない方の2.6倍に高まる。
しかし、禁煙を続ければ、リスクは糖尿病でタバコを吸わない方と同程度に戻る。

喫煙と糖尿病
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-03-004.html
・たばこを吸うとは交感神経を刺激して血糖を上昇させるだけでなく、体内のインスリンの働きを妨げる作用がある。
そのため糖尿病にかかりやすくなる。
また糖尿病にかかった人がたばこを吸い続けると、治療の妨げとなるほか、脳梗塞心筋梗塞・糖尿病性腎症などの合併症のリスクが高まることがわかっている。
・喫煙すると糖尿病になりやすいのは、喫煙が「交感神経を刺激して血糖を上昇させる」ことと「体内のインスリンの働きを妨げる」という2つの作用が関係していると考えられている。

糖尿病の治療も予防も 禁煙が大切です
http://www.osaka-ganjun.jp/effort/cvd/training/teaching-materials/pdf/tou_kinen_01.pdf
(PDFでみやすいサイトです)