がん 罹患・死亡、男女差は縮小

罹患・死亡、男女差は縮小

がんの罹患や死亡に関するデータの集計には数年の時間がかかるが、数学的な手法を使い直近の数字を予測する試みも行われている。
国立がん研究センターが2017年に公表した17年時点の短期予測で、がん罹患者は年101万4千人、死亡者は年37万8千人だった。

センターはがんの罹患数と死亡数について、39年までの将来予測も公表している。
現時点で利用できるデータをフル活用して得られた「がんの未来予想図」だ。
 
現段階(15~19年)の年間死亡は男性22万人、女性は15万人程度です。男性にがん死亡が多いのは、喫煙などの生活習慣の男女差が主因と考えられる。
20年後(35~39年)の死亡数は、男性は約21万人で5%減ると見込まれるが、女性は約17万人と11%も増えると予想されている。
 
がん罹患は現在、年平均で男性57万人、女性は41万人程度だ。
これが20年後には男性で64万人、女性は53万人と推計されます。罹患数は男性で13%、女性はなんと3割も増えると見込まれている。
 
これまで、がんは死亡数でも罹患数でも「男性優位」といえる病気だったが、今後は男女の格差が埋まると予想されている。
 
男女のがん格差が縮小する大きな理由は、喫煙率の長期トレンドにあると思われる。
昨年の成人男性の喫煙率は28.2%だった。
1966年の83.7%から50年で55ポイント以上も低下したことになる。
一方、女性の喫煙率は10%弱で横ばいのままだ。
 
なお、がんは細胞の老化といってよい病気だから、高齢化が最大の増加要因だ。
このため、現在・過去・未来をフェアに比べるには、人口構成の影響を取り除く「年齢調整」作業が必要となる。
年齢調整がん死亡率は男女とも減少の一途だ。
治療後の5年生存率が65%に達するなど、がん治療の進歩も寄与していると思われる。
 
他方、年齢調整がん罹患率は男女とも上昇傾向が続いている。
肉食や運動不足といった欧米型のライフスタイルのほか、一部の「過剰診断」の影響もあると思われる。
また、妊娠や授乳は乳がんのリスクを低下させるから、少子化乳がんを増やす。
がんの「欧米化」はこれからも続きそうだ。

参考・引用
執筆 東大・准教授 中川恵一先生
日経新聞・夕刊 2018.7.4