画像診断 相次ぐ「見落とし」防ぐには

相次ぐ「見落とし」防ぐには

がんのコンピューター断層撮影装置(CT)検査に関連する医療ミスが続出している。
6月だけでも、千葉大学病院、兵庫県立がんセンター、横浜市立大学の2病院の計4カ所で発覚した。
 
胸部レントゲン撮影などの基本的な画像検査は各科の主治医が自分で読影することがほとんどだが、CTや磁気共鳴画像装置(MRI)などの高度な検査では画像診断の専門医(放射線診断医)が読影を行い、報告書を作成する。
今回のミスの多くが、報告書の記載を主治医が見落としたことによるものだった。
 
千葉大病院の場合、がん患者9人で見落としがあったが、そのうち死亡した2人について、同病院は「最初の検査後に治療していれば、死亡しなかった可能性がある」と認めている。
 
亡くなった2人のうち60代の女性は2013年6月、腸の病気の経過観察のためCT検査を受けた。
放射線診断医は報告書で腎臓がんの可能性を指摘したが、主治医は十分に確認しなかった。
昨年10月に進行した腎臓がんが見つかったが手遅れで、同12月に死亡した。
70代男性は16年1月のCT検査で肺がんが指摘されたが、担当医は報告書を見落とし、17年4月に肺がんと診断されて同6月に死亡している。
 
患者9人のうち、死亡した2人を含む5人では、報告書の記載が見落とされていた。
また、2人については担当医が放射線診断医に読影を依頼していなかった。
そのほか、報告書の作成が遅れたり、報告書が作成されていなかったりしたケースが1例ずつあった。
 
日本医療機能評価機構によると、15年1月~17年9月に見落としなど画像診断報告書の確認不足が32件あったというから、今回の件も氷山の一角といえるだろう。
 
見落としを防ぐためには、血液検査と同様に、患者が画像診断報告書を受け取ることが大事だと思う。
報告書は日本語で書かれることがほとんどだが、分からない点は主治医に確認するとよい。
画像診断に限らず、患者が自分のデータを医療者と共有することが医療ミスの減少につながる。
医療データはすべて患者のものだら、遠慮など無用だ。

執筆
東京大学病院・中川恵一 准教授

参考・一部引用
日経新聞・夕刊 2018.7.18


<私的コメント>
「担当医が放射線診断医に読影を依頼していなかった」・・・千葉大のこのケースはかなり問題があります。
大学病院を含め大病院には放射線科診断医がいます。
当院は一定の大病院にCTやMRIの画像診断を依頼して専門医のレポートをFAX、郵送の両方でいただいています。
そして必ずご本人にコピーを手渡ししています。
もちろん画像データが入った CDROMも。
意外と大病院ではデータを患者さんに渡さないことも多いようです。
たったこれだけでミスが防げるのです。

そして一番の問題は電子カルテではないでしょうか。
私は今でも紙カルテにこだわっています。
返書はペタペタとカルテに貼り付けています。
電子辞書と辞書とどちらが便利か。
ちょっと想像しただけで明らかです。

最後に一言。
この記事を読んで思い出したことがあります。
それは甲状腺MRIを依頼して放射線科専門医に、肺尖部の肺がんを指摘していただいたことがあるのです。
よく無床診療所でCTやMRIを導入されている先生がおみえになります。
機器自体もすぐに最先端というわけではなくなり、性能も十分ではないはずです。
何よりも読影力がどれだけかが問題となります。
当院では資金力がないのはもちろんですが、そういった考え方で大病院に検査依頼をして複数の医師(放射線科専門医と私)との二重読影を心がけています。