便秘の薬に新薬続々

便秘の薬に新薬続々、脱「江戸時代」 患者の事情に対応

日本人の6人に1人ほどが悩むともいわれる便秘。
治療薬は江戸時代からあまり変化がなく、患者の満足度は決して高くはなかった。
そんな中、ここ数年、新しい薬が登場し、選択肢が広がっている。
腎機能の落ちがちな高齢者や、子どもなど、一人ひとりの事情に合わせた使い分けが可能になりつつある。

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東京都の男性(78)が便秘に悩むようになったのは、68歳で仕事を引退してからだ。
以前は毎朝「判をついたように」排便があったのに、3日たっても便意を催してこなくなった。
便秘治療に詳しいクリニックを受診すると、慢性便秘症と診断された。
 
慢性便秘症は、排便が週に3回未満か、4回に1回を超す頻度で排便が困難な症状(残便感、強くいきむ、肛門の閉塞感など)があり、それが何カ月も続いた状態だ。
食事や睡眠といった生活習慣の変化が影響しやすく、加齢とともに増える傾向がある。
 
大腸を刺激するタイプの薬と漢方薬を処方してもらっていたが、今年4月にぎっくり腰を経験。
いきみづらいためか、再び便の回数が減り始めた。
そこで、保険適用になったばかりの便秘薬エロビキシバット(商品名グーフィス)を提案された。
 
便秘の治療には古くから、センナなどの大腸刺激性下剤や、酸化マグネシウムに代表される浸透圧性下剤が使われてきた。
だが、酸化マグネシウムは、腎機能の悪い人が使うと意識低下などを起こす「高マグネシウム血症」になる恐れがある。
男性も腎機能が悪く、使えなかった。
 
一方、エロビキシバットは、小腸の粘膜にあるたんぱく質に働きかけて、胆汁酸という胆汁の成分が吸収されるのを防ぐ「上皮機能変容薬」だ。
大腸の水分を増やして便を柔らかくするほか、大腸の動き自体を促す効果もある。
 
男性は1~3日に1回便が出るようになり、漢方薬を卒業した。
「便がスッキリ出ると、酒もご飯もおいしいよ」と話す。

放置 命に関わるリスクも
便秘治療は長く、患者や医療者から軽く見られがちだった。
医療機関にかかっても「快便」にならずに受診をやめたり、市販薬を漫然と使い続けたりする例も後を絶たなかった。
 
だが近年、便秘を放置すると命に関わるリスクを高めることもわかってきた。
 
東北大学のチームは、宮城県内の約4万5千人を対象にしたデータを解析。
約13年間に循環器系の病気で亡くなった約2千人を調べると、便秘の人が便秘でない人に比べて、リスクが高いことがわかった。
脳梗塞のリスクは2倍近かった。
 
こうした事情を背景に、全国どこでも標準的な治療を受けられるよう、2017年に慢性便秘症の診療ガイドラインが完成した。
横浜市立大学の中島淳教授(肝胆膵消化器病学)は「日本の便秘治療は非常に後れをとっていた。ガラパゴスもいいところ。やっと海外なみになる」と話す。
 
新薬も2012年以降続々と登場し、選択肢も広がっている。
エロビキシバットなどの上皮機能変容薬が3種類、今年にかけて保険適用になった。
浸透圧性の新しい薬も2種類、年内の保険適用に向けて準備を進めている。
その一つ、ポリエチレングリコール(商品名モビコール)は海外で子どもの便秘に広く使われている。
 
新薬にも、吐き気が出やすい、効き過ぎると下痢になるなど課題はある。
だが中島教授によると「高齢の方や特殊な便秘の方のニーズを、ある程度満たせるようになるだろう」という。
 
一方、便秘の予防には、生活習慣の見直しも大切だ。
1日3回バランスのよい食事を取ること、食事の時はご飯やパンなどの主食も欠かさずに取ることが大切だ。排便の姿勢も大切で、背中を伸ばして前かがみに座り、小柄な人なら足台を置くなどして、太ももと胴体の角度を90度未満にすると便が出しやすくなる。
 
受診の目安として、3~4日出なければ薬の使用を考え、1週間出なかったら医療機関を受診したい。

参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2018.11.14



 
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   2018.11.14 撮影