大腸がん検診

大腸がん検診、未受診は割高に

厚生労働省が推奨するがん検診は胃がん、大腸がん、肺がん、子宮頸がん、乳がんに対するものです。
特に大腸がん検診は便を2日採取するだけの簡単なものですが、死亡率を4割以下まで下げる効果が認められています。

私的コメント;
ここでは「子宮頸がん」と書かれていますが、地方自治体が行うがん検診では「子宮がん」と表現しています。
受診者の中には子宮すべて、つまり「子宮頸がん」だけではなく「子宮体がん」もチェックしてもらっていると勘違いされている方もみえます。
最近、別の疾患で通院されている方で毎年「子宮がん検診」を受けてみえて、不正出血で産婦人科を受診したところ進行性の「子宮体がん」だった症例を経験しました。

ある会社の健康保険組合と共同で大腸がんに関するレセプト(診療報酬明細書)と検診データを分析する大規模調査を行った結果がある。
2014年度に大腸がん検診を受けた、その会社の健保加入者は約8万6千人、受診しなかったのは約3万4千人だった。
受診した人でその後に大腸がんと診断されたのは約140人で、そのうち診断時に別の臓器などへの遠隔転移があったのは2.9%だった。
未受診の人でその後に大腸がんと診断されたのは約60人。
診断時に遠隔転移があったのはそのうち約23%だった。
大腸がんと診断された後、17年度までの4年間に必要となった患者1人あたりの総医療費は受診群が約200万円、未受診群は約460万円と2倍以上の差が出た。
このように大腸がん検診を受けるメリットは明らかだ。
これを集団の医療コストという視点で見てみて、検診費用がかかるものの早く見つかったため医療費が安く済む集団と、検診費用はかからないが進行したがんが多く、医療費が高くなる集団ではトータルの費用にどのような差が生じるのだろうか。

前述のデータを用い、未受診群で大腸がんになった人には治療費を、受診群では治療費に検診費を加え、1人あたりのコストを計算した。
がん患者ではない人のデータも含めたものだ。
その結果、受診群は未受診群に比べて4年間のコストが3千円以上安くなった。
検診費用を加えても受診した方が安く済むという結果は、保険組合や政府にとっても示唆的ではないだろうか。
今後、進行した大腸がんに「オプジーボ」などを用いた超高額ながん免疫療法が行われるだろうから、この差はますます大きくなると思われる。
がん検診を受けて早期にがんを見つけることは患者個人の身体的、経済的負担を軽くするだけではない。
医療費の抑制につながり、社会全体にもプラスになる。

執筆 東京大学病院准教授・中川恵一先生
参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2018.11.14