がん免疫薬、投与の「やめどき」研究へ

がん免疫薬、投与の「やめどき」研究へ 全国40病院

オプジーボなど 過剰投与省く狙い
国立がん研究センターなど全国の約40病院は、肺がん患者にがん免疫薬「オプジーボ」を使うのをやめるタイミングを探る研究に乗り出す。
投薬の効果や副作用が続く期間を調べる日本初の臨床研究を2019年3月にも開始。
オプジーボは一部の患者に大きな効果をもたらすが、高額な費用が問題となっている。
集まったデータを基に過剰な投薬を省けば医療費を抑え、無駄な副作用も避けられるとみている。

高額な医療費抑える
オプジーボは体に備わる免疫の仕組みを利用した画期的な治療薬で、末期がん患者の一部にも効果が出る。今年のノーベル生理学・医学賞を受賞する京都大学本庶佑特別教授の研究から生まれ、14年に小野薬品工業が発売した。

最初は皮膚がん向けに発売し、その後、患者が多い肺がんや腎臓がんに適用を拡大。
17年度は、小野薬品のオプジーボの売上高とロイヤルティー収入を合わせると約1300億円にのぼった。

一方、薬代が年間1千万円を超え、患者の負担増とともに医療財政への影響が懸念される。
投薬期間の明確な基準がなく、効果や患者の要望に応じて医師が判断している。
薬が効いていると判断するとそのまま投薬を続けることが多い。
また健康な臓器が傷む副作用が起きることもある。

国立がんセンター静岡県立静岡がんセンター、和歌山県立医科大学などの約40病院が、がん免疫薬の投与を最短1年でやめる臨床研究を始める計画だ。
オプジーボのほか、米メルクの「キイトルーダ」、スイスのロシュの「テセントリク」が対象。
投薬で肺がんの悪化を防いでいる患者約200人を調べる。

投薬を中止する患者と継続する2つのグループに分け、治療効果や副作用がどのくらい続くのかを調べる。
最長で3年間、観察を続ける。
中止後にがんが悪化した患者は、投薬を再開する。
中止後も効果が長く続くことが分かれば、科学的なデータを基に、今よりも投薬期間を短くして医療費を抑えられる。
副作用が続く期間が分かれば、他の薬で副作用に対処できる。
今後、肺がん以外でも同様の研究が始まる可能性がある。

参考・引用一部改変
日経新聞・朝刊 2018.11.20

私的コメント;
こういった高価な薬剤使用抑制を通じて医療費を抑制するという経済的観点はたしかに大切です。
しかし、そういった観点から離れても、医療側は投薬や治療の中止のタイミングを常に意識する必要があります。
たとえば多くの降圧剤は中止が困難です。
それは、血圧は一生上昇し続けるという事実があるからです。
しかし、高血圧、糖尿病、高脂血症などの治療は、高齢者には中止できるかどうかは別として治療の目標つまりハードルを下げた方がいいケースが多々あります。
骨粗鬆症の治療も骨粗鬆症自体が一生かけて進行することからダラダラと治療を継続することが多いようです。
しかし、5年の継続後に一度休薬して骨塩の減少率の様子をみる動きもあります。
また認知症治療薬も効果の判定が不明のまま、漫然と使い続けることが実際には多いようです。
要するに、「治療から撤退する勇気」が医療側にないのです。
何事も「引き際が大切と」いうことなのでしょうか。