鉄分の不足と過剰

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葛西四雄  小雨の銀座裏通り 油彩30号
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貧血は日常的に存在する疾患です。
それだけにかえって見逃されやすいともいえます。
ゆっくり貧血が進行すれば、ひどい貧血があっても本人は気づかないことさえあります。
きょうは、この貧血を新聞記事からとりあげてみました。


貧血防ぐが、多いと細胞に傷

鉄分は私たちの体になくてはならない元素です。
不足すると貧血を招くので食べ物から摂取する必要があります。
でも取りすぎは良くありません。
とくに肝炎の患者さんは注意が要ります。
食品に含まれる鉄分について調べてみました。
    
   ■ □ ■
 
「女性に貧血の方が目立ちますが、鉄分が欠乏している人が多いですね」と、香川県赤十字血液
センター所長で、貧血に詳しい内田立身さんは話す。

厚生労働省の国民健康・栄養調査(2004年)によると、血液1デシリットル中のヘ
モグロビン値が12グラム未満で貧血とみられる人は、40代の女性の25%。つまり、
4人に1人が貧血状態という計算になる。

鉄分が足りなくなると・・・・。
赤血球に含まれるヘモグロビンを十分に作ることができなくなる。
ヘモグロビンは全身に酸素を送る役目がある。
足りなくなると体が酸素不足になり、疲れやすくなったたり、動悸や息切れが起きたりする。

鉄分が不足するのは、体から失われる量が多いか、摂取する量が足りないか、だ。

失われる原因の一つが月経。
20代から30代の女性では貧血が多いが、閉経後の50代以降では貧血の人の割合が
ぐっと下がる。
胃腸からの出血も貧血を招く。

厚労省は「日本人の食事摂取基準」(2005年版)で鉄分の推奨量を定めている。
18~69歳の男性は日に7.5ミリグラムで、同年
齢で月経のある女性は曰に10.5ミリグラム。
三重大病院の管理栄養士、岩田加壽子さんは「普通に食べると日に8~9ミリグラム程度。
鉄分の多い食品を意識して食べないと10ミリグラムを超えません」と話す。

鉄分を多く含む食品の代表例は、肉や魚の赤身や内臓。
シジミやアサリなどの小さな貝類や、煮干しをはじめ小魚も、食べる時は内臓も一緒なので
鉄分を多く含む。
これらは「ヘム鉄」と呼ばれ、腸から吸収されやすい。大豆など豆類やホウレンソウ、小松菜
などにも鉄が多く含まれる。
これら植物の鉄は「非ヘム鉄」と呼ばれ、吸収率は低いが、ビタミンCや動物性たんぱく質
一緒に食べると吸収されやすくなる。
    
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「でも最近、鉄の不足とともに過剰も問題になってきています」と岩田さん。
C型慢性肝炎患者では、鉄摂取を制限した方が
いいことが分かってきたからだ。

肝臓専門医で、みえ消化器内科(津市)の垣内雅彦院長は「鉄のとりすぎが肝臓をさび
させます」と話す。

腸で吸収された鉄分は肝臓に運ばれて蓄積される。健康なら十分たまるとブレーキが働き、
それ以上たまらない。
C型慢性肝炎では満足にブレーキが働かなくなる。
過剰な鉄分が反応性の高いフリーラジカルを作り、細胞やDNAを傷つけるという。

岩田さんと垣内さんは鉄制限食のレシピ集を作った。鉄摂取を日に6ミリグラム以下に減らす。
赤色の濃い肉は避け、魚は白身、肉は鶏肉を食べる。
鉄制限食で肝臓の状態が改善するという。

「鉄制限をするときは医師の指導を受けて下さい」と垣内さん。
専門知識と鉄の貯蔵量を示す血清フェリチンの検査などが欠かせない。

<プラスアルファ>
鉄欠乏性貧血になったらどうしたらいいか。
内田さんによると、ヘモグロビン値が10以下なら、
医師の診断や治療を受けた方がいいという。
男性では消化管出血のせいで貧血になっている場合が多く、原因の病気を確かめることが
重要になる。

治療法は、食物からの鉄だけでは足りないので多くの場合、鉄の錠剤を飲む。貧血が改善
しても体が貯蔵している鉄の量が十分に回復するまで数カ月飲む必要がある。

鉄を含む食品の例
ヘム鉄(吸収がよい)
レバー、赤身の肉
赤身の魚
小魚
小さな貝類

非ヘム鉄(吸収が悪い)
豆類
ホウレンソウなど

  朝日新聞・朝刊 2007.11.18より
版権 朝日新聞社

<コメント>
C型慢性肝炎の方でウコンやシジミをとっている患者さんがみえます。
これは鉄分摂取をしていることになるため肝臓にはかえってよくないことに
なります。



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