背中の痛み

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軽視は禁物、早めに専門医に

手足のしびれ 要注意
長い時間同じ姿勢を続けていると背中が痛くなるときがある。
多いのは筋肉痛だが、中には重大な疾患もある。
慶応大学医学部の戸山芳昭教授(整形外科)は「背中の痛みがあったら、軽視をせずに
早めに脊椎(せきつい)脊髄(せきずい)の専門医に相談すべきだ」と呼びかける。

■ 長時間、パソコンを使うと肩こりなど背中の痛みに見舞われます。
「背中の痛みを訴えてこられる患者さんの中で最も多いのが、筋肉性の痛みです。
中でも僧帽筋を傷めることが多い。僧帽筋は首の付け根から肩の背中側にかけてある
筋肉で、いわゆる肩こりにもかかわっているとされています」

「筋肉性の痛みは筋肉に疲労がたまるために起きるのです。僧帽筋は首や腕といった
動きが激しいものを支えているだけに、それだけ疲労しやすいと考えられます。
加温やマッサージなど患部をほぐす治療や運動療法などが効果的です」
「次いで多いのが変形性頚椎(けいつい)症です。加齢とともに起きる疾患です。
頚椎にかかる負荷が大きくなり、神経根や脊髄を圧迫するために手指のしびれなどを
もたらします」

■ 炎症性の疾患によるものもありますね。
「加齢や骨粗鬆症などによって、脊柱の中を通っている神経が圧迫され、痛みが走る
こともあります。年をとると背中が丸くなったり、背が縮んだりしますが、そうなると
どうしても神経が圧迫されがちになります。猫背の人も気をつけた方がよいでしょう。
骨粗鬆症による背骨の圧迫骨折も背中が痛くなる大きな原因です」

「感染性脊椎炎も重要です。細菌、主に黄色ブドウ球菌が椎体に入り込む化膿(かのう)
性脊椎炎と、結核菌が感染する(脊椎)カリエスがあります。化膿性脊椎炎は発熱や
痛みなどの症状が強い傾向があります。また、脊椎や脊髄の腫瘍(しゅよう)も痛みを
もたらす主因になります」

■ 素人判断で、静かにしていれば治るものと決めつけてはいけませんね。
「帯状庖疹の痛みや肋間(ろっかん)神経痛などもありますから、痛みの原因を
調べることが大切です。胸部の解離性大動脈瘤(りゅう)も背中の痛みをもたらします。
内臓の異常もシグナルとして痛みをもたらします。例えば、肝臓に異変があると背中の
痛みが表れますし、肺や心臓などの疾患も無視できません」
 
「筋肉痛など命にかかわることが少ないものもありますが、単なる背中の痛みと軽視
せずに、脊椎脊髄の専門医に診てもらいましょう。場合によっては、圧迫された神経を
切除したり、切除せずに神経の逃げ道を作ってやる浮上術などの手術をしますが、
専門医であれば手術の技能は保証されています」

■ よく聞く脊柱管狭窄(さく)症とはどのような疾患ですか。
「脊髄が通っている脊柱管が狭くなる病気です。これ自体は症状を示すことが少ないの
ですが、頸椎や腰椎で神経が圧迫されると、症状が出現します。日本では急速な高齢化
のため、とくに腰部脊柱管狭窄症が増えています。症状としては足のしびれがあり、少し
の距離を歩き続けられずに休むといった間歇破行(かんけつはこう)などがみられます」


腰痛・肩こり男女とも多い

厚生労働省国民生活基礎調査(2004年)によると日本人の有訴者(自覚症状がある人)
は男性では「腰痛」(人口1000人あたり82人)「肩こり」(同58.1人)が1位と
2位で、女性では「肩こり」(同123人)「腰痛」(107.9人)「手足の関節が痛む」
(同72.7人)の順番だった。
脊椎脊髄の病に悩んでいる人は多い。
世界保健機関(WHO)は2000年、「運動器の10年」世界運動を始めた。
これに対応する日本委員会も学会、スポーツ団体などが参加して発足している。

日経新聞・夕刊 2008.4.1
版権 日経新聞

<コメント>
背部痛がある場合、患者さんは内臓の痛みを心配されて受診されることが多いようです。
これは当院が内科というためかも知れません。
文中に専門医受診をすすめる内容が書かれています。
しかし実際は何科を受診すればいいのかわからない方も多いのではないでしょうか。
内科にかかれば最初に膵(すい)臓や胃や胆のうの病気、さらには呼吸器の病気が疑われて
検査が計画されるかも知れません。
一方、整形外科にかかれば胸椎・腰椎の病気が真っ先に疑われるでしょう。
いずれにしろ、広い視野で考えていただける医者選びが一番大切です。

数日前、片側の下腿の痛みがあり整形外科を受診して腰椎すべり症と診断された方が来院
されました。
整形外科でマッサージ(もちろん有効とも思えないのですが)に通院していて一向によく
ならないので整体の先生に通院先を換えたそうです。
そこで水疱が見つかり、帯状疱疹と診断されその足で当院に来院されました。

背部痛とは関係ない話ですが、どの科の医者も我田引水の診断をしがちです。
素人判断はしないで、最初から専門科にかかるのではなく、何科か迷ったら一般内科
(最近は総合内科ともいいます)を受診されるのがよいのかも知れません。
これも我田引水ですが・・・・。

<医療関連ニュースより>
後期高齢者制度」の呼称を「長寿医療制度」に・厚労省
厚生労働省は1日、75歳以上の高齢者を対象にした「後期高齢者医療制度」について、
呼び名を「長寿医療制度」とすることを決めた。
高齢者から「年齢で区別するのは納得できない」「早く死ねといわんばかりだ」などの
批判が出ていた。
厚労省は目的や内容の理解を深めてもらうため対策本部を設置した。

同制度は膨張する医療費を高齢者にも応分に負担してもらうのが狙い。
1人当たりの医療費の多い都道府県に住む高齢者や高所得者に高めの保険料を負担して
もらうのが特徴だ。
ただ、民主党など野党は「財政負担の削減ありきで高齢者の負担が増す」などと反発し
制度の廃止を求めている。

福田康夫首相は同日午前の閣僚懇談会で「名称を含めて工夫し、意義ある制度であることを
国と自治体が連携してPRしてほしい」と指示していた。
http://health.nikkei.co.jp/news/top/index.cfm?i=2008040110008h1
<コメント>
名称を変更して目先を変えようという魂胆がみえみえです。
後期高齢者制度」となっても中身は何も変わらないわけです。
無神経な名前を平気でつける(いつものことですが結局誰がつけたかもわからず責任の所在
も不明)ところを見るだけでも国民目線でないことが明々白々です。

医療専門のブログは別にあります。
井蛙内科開業医/診療録 
http://wellfrog.exblog.jp/
(内科専門医向けのブログです)
葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
(循環器専門医向けのブログです)