鉄分

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最近、体がフラフラするという中年女性の患者さんが来院されました。
顔色が悪く、性器出血が続くということで本人も貧血が原因だという
ことはわかっていての受診です。
早速検査をしてみると血色素量5.2g/dl(ヘモグロビンともいいます。
血液の赤さをみる検査で成人での正常は12g/dl以上)。
医療側としては輸血を避けて鉄剤を投与することが大切です。
このように治療を急ぐ場合は内服では間に合わないので、早速鉄剤の入った
点滴を行い翌日も来院するようにお話しました。
翌日の来院の際に検査を再度行いました。
5.0g/dlという数字で進行しています。
すぐに大病院に紹介し重症貧血ということで入院治療となりました。

このように入院にいたるような貧血もあるのです。

きょうは新聞の健康欄より貧血に関係する”鉄分”をとりあげました。


貧血防ぐが、多いと細胞に傷

鉄分は私たちの体になくてはならない元素です。
不足すると貧血を招くので食べ物から摂取する必要があります。
でも取りすぎは良くありません。
とくに肝炎の患者さんは注意が要ります。
食品に含まれる鉄分ついて調べてみました。
   
  ■ □ ■
 
「女性に貧血の方が目立ちますが、鉄分が欠乏している人が多いですね」と、
香川県赤十字血液センター所長で、貧血に詳しい内田立身さんは話す
 
厚生労働萱の国民健康・栄養調査(2004年)によると、血液1デシリットル中
のヘモンロビン値が12グラム未満で貧血とみられる人は、40代の女性の25%。
つまり、4人に1人が貧血状態という計算になる。
 
鉄分が足りなくなると・・・。
 
赤血球に含まれるヘモグロビンを十分に作ることができなくなる。
ヘモグロビンは全身に酸素を送る役目がある。
足りなくなると体が酸素不足になり、疲れやすくなったり、動悸や息切れが起き
たりする。
 
鉄分が不足するのは、体から失われる量が多いか、摂取する量が足りないか、だ。
 
失われる原因の一つが月経。
20代から40代の女性で貧血が多いが、閉経後の50代以降では貧血の人の割合が
ぐっと下がる。
胃腸からの出血も貧血を招く。

厚労省は「日本人の食事摂取基準」(2005年版)で鉄分の推奨量を定めている。
18~69歳の男性は日に7.5ミリグラムで、同年齢で月経のある女性は曰に
10.5ミリグラム。
三重大病院の管理栄義士、岩田加壽子さんは「普通に食べると日に8~9ミリグラム
程度。
鉄分の多い食品を意識して食べないと、10ミリグラムを超えません」と話す。
 
鉄分を多く含む食品の代表例は、肉や魚の赤身や内臓シジミやアサリなどの小さな
貝類や、煮干しをはじめ小魚も、食べる時は内臓も一緒なので鉄分を多く含む。
これらは「ヘム鉄」と呼ばれ、腸から吸収されやすい。
大豆など豆類やホウレンソウ、小松菜などにも鉄が多く含まれる。
これら植物の鉄は「非ヘム鉄」と呼ばれ、吸収率は低いが、ビタミンCや動物性
たんぱく質ど一緒に食べるど吸収されやすくなる。
    
  ■ □ ■
 
「でも最近、鉄の不足とともに過剰も問題になってきています」と岩田さん。
C型慢性肝炎患者では、鉄摂取を制限した方がいいことが分かってきたからだ。
 
肝臓専門医で、みえ消化器内科(津市)の垣内雅彦院長は「鉄のとりすぎが肝臓を
さびさせます」と話す。
 
腸で吸収された鉄分は肝臓に運ばれて蓄積される。
健康なら十分たまるとブレーキが働き、それ以上たまらない。
C型慢性肝炎では満足にブレーキが効かなくなる。
過剰な鉄分が反応性の高いフリーラジカルを作り、細胞やDNAを傷つけるという。
 
岩田さんと垣内さんは鉄制限食のレシピ集を作った。
鉄摂取を曰に6ミリグラム以下に減らす。
赤色の濃い肉は避け、魚は白身、肉は鶏肉を食べる。
鉄制限食で肝臓の状態が改善するという。
 
「鉄制限をするときは医師の指導を受けて下さい」と垣内さん。
専門知識と鉄の貯蔵量を示す血清フェリチンの検査などが欠かせない。
           

鉄欠乏性貧血になったらどうしたらいいか。
内田さんによると、ヘモグロビン値が10以下なら、医師の診断や治療を受け
た方がいいという。
男性では消化管出血のせいで貧血になっている場合が多く、原因の病気を確か
めることが重要になる。
 
治療法は、食物からの鉄だけでは足りないので多くの場合、鉄の錠剤を
飲む。
貧血が改善しても体が貯蔵している鉄の量が十分に回復するまで数カ月飲む
必要がある。


出典 朝日新聞・朝刊 2007.11.18
版権 朝日新聞社

<コメント>
鉄分が不足すると、顔色が悪くなる、神経過敏、貧血による動悸や息切れ、
感染症にかかりやすくなる、便秘や下痢、冷え性などの全身症状があらわ
れます。
このタイプの貧血(鉄欠乏性貧血または低色素性貧血)は貧血の70%を
占めるといわれています。
しかし自分で勝手に診断していては影に潜む重大な病気を見落とす可能性
があります。
是非、医療機関を一度は受診して下さい。

<参考サイト>
知っていますか?鉄分不足による貧血
http://www.nippon-zoki.co.jp/theme/hinketu1.html
鉄は食品から摂取しても、体内に吸収されるのはほんのわずか。
鉄の吸収は男性で1日約1mg、女性で1日約1~2mgです。
効率よく鉄を吸収するには・・・


鉄分を含んだ食事で貧血対策
http://kodawari.lin.go.jp/ryori/atama/ek013.htm


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