擦り傷・切り傷

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傷の治し方については以前に、このブログで取り上げました。


ごく最近同じテーマで新聞に掲載されていましたが、内容も同じではないので
参考になるかと思って再度とりあげました。
外科の臨床現場では実際どのようになっているのでしょうか。
内科開業医の私にはよくわかりません。
どなたかコメントをいただけると有難いのですが。

軽いときは適度に潤いを

軽い擦り傷や切り傷ができたとき、どうしていますか。
消毒して乾かして……。
実は、消毒せずに適度に潤いを保つ方が痛みも少なく、治りも早い。
近年、そんな考えが広がってきました。湿潤療法(モイストウンドヒーリング)と呼ばれ
ています。
    
   ■ □ ■
 
国立成育医療センターの金子剛医長(形成外科)はもう5年ほど、手術前の消毒以外には
消毒薬は手にしていない。
「傷の手当てだけではありません。手術後も消毒薬は使わず、汚れがあれば生理食塩水で
皮膚をきれいにしています」
 
理由は「そもそも健常じゃない状態なのに、かえって皮膚組織を傷つけてしまい、痛むし、
治りが遅くなる」。
 
傷は乾燥させた方が細菌感染も少なく、治りが早い・・・・昔はこう思われていた。
傷口を毎日消毒してガーゼを取り換えるのが当たり前だった。
しかし、結果的に毎日、傷つけることになってしまっていた。

金子さんは言う。
「どうして傷ができたのかを把握し、傷の場所や深さをみてほしい。出血しているなら
押さえて止血し、砂が入ったり出血がひどかったりする場合はすぐ医療機関へ」

傷口が深かったり、ギザギザになっていたりするほか、ガラスや木くずが刺さっている場合
も病院に行った方がいい。
破傷風にも注意がいる。
 
「とにかく落ち着いて。早く措置しないと治りが悪いと言われましたが、傷は24時間
以内に対処すれば大丈夫ですから」

NPO法人創傷治癒センター理事長の塩谷信幸・北里大名誉教授(形成外科)は「そもそも
傷を治すのは体に備わった自然の治癒能力なのです。私たち医師はそれを手助けするだけ
なのです」と話す。

   ■ □ ■

皮膚は、細菌などの病原体や化学物質から私たちを守る防御壁であるとともに、体液が
漏れるのを防ぎ、体内環境を維持する役目をもっている。
その大切な壁が破れると、修復するための様々な仕組みが働く。

傷ができると体液がしみ出してくる(滲出液)。
この液の中に細胞の成長を促し皮膚を修復するためのいろいろな成分
が含まれている。
かさぶたができるとその分、働きが落ちる。
この液をふき取ると、治るのを妨げていることになってしまう。

逆に液体の状態が保たれると思う存分に能力が出る。
これが湿潤療法の考えで、そための「モダンドレッシング」という、傷にはるものが開発
された。
家庭用のものも販売されている。
やけどのときにできる水ぶくれは、いわば自然の湿潤療法だ。

塩谷さんによると、この考えは、1962年に英国の動物学者により、動物実験のデータを
基に発表された。
それから半世紀近く。
ようやく広がってきた、という。
 
「傷をふさぐと、かえってうみやすくなるのでは」という心配も根強い。
湿潤療法の普及を遅らせた一因だが、実際には感染率は低いと報告されている。
体液中の白血球などが活発に活動するので細菌が抑えられると考えられている。
 
そもそも皮膚にはたくさんの常在菌がいる。
それをぬぐい去ろうと薬に頼っても無理があるのかも知れない。 

出典 朝日新聞・朝刊 2008.4.20
版権 朝日新聞社

<参考ブログ>
NPO法人創傷治癒センター
http://www.woundhealing-center.jp/
(傷の手当ての10ヵ条や床ずれなどの情報を提供しています。このホーム
ページの中に「塩谷理事長のブログ」に目がとまりました。以前にも書いた
ことがありますが、医学生の時代に塩谷先生の講義を聴いたことがあります。
随分昔のことです。どうやら75才を過ぎてみえるようですが、毎日ブログを
更新されておられとてもお元気そうです。写真の風貌も昔と何ら変わっていません。
まさしく驚異のアンチエイジングです。)

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