医療の難解語 その1(1/2)

専門用語、業界用語。
それはどの分野にもあります。
医療界も同様です。
医療側で常識的な言葉が受療側には難解だったり誤解される場合も実際にあるという
内容の記事の紹介です。

政界、法曹界、経済界。さらには官僚言葉。
一番むなしいのは景気短観の際に使われる言葉。
全くの言葉の遊びでいつも他人事の響きがあり腹立たしくもあります。
そういった意味では、英語やドイツ語を日本語に訳したり、日本語にまだ訳されていない
医学用語。
すべてを万人にわかるようにという動きには少し違和感があります。

  ■ ◇ ■

国立国語研究所(東京都立川市)の「病院の言葉」委員会が21日、難しい医療用語を
患者に分かりやすく説明するための手引の中間報告をまとめた。
医療従事者だけでなく、患者団体の代表や言語の専門家らが参加して作った。
手引が必要となる背景には、切実な患者のニーズがある。
 
委員会は8月、医療従事者でない4280人を対象にインターネット上で尋ねた。
半分以上の人が知らなかった「寛解」「予後」などは、原則として「日常用語に言い
換えるべきだ」というAグループにした。

日常的に使われる言葉ばかりで、委員の医師らに抵抗があった。
例えば「重篤」。
「命に危険のある時には重篤、そうでない時は重症と使いわけている」といった意見が
出た。
医師以外の委員が「使い分け方は人によって異なるのでわかりにくい」と反論し、結局、
Aになった。
 
「合併症」をめぐる議論も難航し、「知られているが、きちんと理解されていない」という
Bグループに分類された。

委員会では、「患者が心理的な負担を感じる言葉がある」という声も上がった。
「悪性腫瘍」のような重大な病気を告げられた時や、「抗がん剤」「ステロイド」など、
痛みや危険性を想像してしまう治療法を説明された時に感じる心理的な負担が、言葉の理解
を妨げている、との指摘だった。
 
委員の一人、矢吹クリニック(宇都宮市)の矢吹清人院長が「私たち医師はまったく想像
していなかったので勉強になりました」と振り返る。

患者の心理的な負担を和らげるためのポイントが中間報告に盛り込まれた。

「完全に治ることだと思っていた」。
「日常語に言い換えるべき言葉」とされた「寛解について、広島県の60代の男性は言う。
約10年前に肝臓がんになり、手術や抗がん剤の投与を受けてきた。医師から言われたこと
はないが、病院で自然に耳にする言葉だった。
病気や治療を勉強し、正しい意味を知った。

「緩和ケア」も誤解していた。
「末期の患者に対して、痛みをとるだけの治療かと思っていた」。

中間報告によれば、がんの初期治療の段階から採り入れられることが増えてきている。
男性は昨年、緩和ケアをテーマにしたシンポジウムに出て驚いた。
「時期に関係なくやるんですね。精神的なケアが入っていることも初めて知った」
 
リンパ瞳の患者、家族でつくるNPO法人グループ・ネクサス(事務局・東京)の副理事長、
片山環さん(57)は「寛解という言葉を聞き、パソコンに打ち込んでも変換されない。
そんな言葉を当たり前に使われるのはおかしい」。
 
「副作用」という言葉を使われ、必要以上に怖がってしまう患者もいる。
「いきなり専門用語で説明するのは、泳げないのに海に飛び込まされ、さあ泳ぎましょうと
言うようなもの」
 
患者側にも専門用語を理解しようとする姿勢が必要だと感じる。
「質問を重ねることで理解が深まる。そのなかでギャップが埋まっていけばいいですね」
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出典 朝日新聞・朝刊 2008.10.23
版権 朝日新聞社

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