新型インフルエンザ 2009.8.28

<その1>
簡易検査、信頼性が不十分 新型インフルで米調査
■インフルエンザの感染の有無を見極めるために広く用いられている簡易検査は、H1N1型の新型インフルエンザ患者を見落とす可能性が高いとの調査報告を米疾病対策センターCDC)が6日、まとめた。

CDCは、簡易検査で陰性でも、感染していないと確認されたわけではないとしており、より精度の高い検査法の開発が課題となりそうだ。

CDCは4-5月に集めた新型や季節性のインフルエンザ患者ののどの粘膜など65の検体を用いて、米国で使われている3種類の簡易検査キットの有効性を調査。実際には新型に感染していてもキットで陽性と判定される可能性は40-69%と低いことが分かった。
季節性インフルエンザの場合は、80%以上と高い割合で陽性と判定された。

新型インフルエンザの確定診断には通常、詳細(PCR)検査をする必要がある。
だが、可能な施設が少ない上、検査に時間がかかるため、感染の疑いを早期に見極めるのに、簡易検査キットが使われる。
http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/8/7/105482/
出典 共同通信社 2009.87


<その2>
予防接種法改正でワクチン接種の補償を充実」と舛添厚労相
今そこにある危機に対応する」ため時限立法も視野に、有識者との意見交換会
感染症の専門家、日本産科婦人科学会と日本小児科学会の代表者などが集まり、「新型インフルエンザに関する厚生労働大臣有識者等との意見交換会」が8月26日開催された。
意見交換会では、ワクチンの輸入問題や接種の優先順位、任意接種か否か、さらには接種の費用負担などについても意見が出た。

■ワクチン輸入そのものに反対する意見はなかったが、薬事法の特例承認で治験を実施せずに接種を進めることについては反対意見が相次いだ。
「予想しなかった副反応は必ず出る。輸入ワクチンについては、製薬企業の企業秘密でもあり、アジュバンドなどに関する情報がない。短期間でもいいので、有効性と安全性について治験を行うべき。日本小児科学会を挙げて協力する」(日本小児科学会会長の横田俊平氏)。
■優先接種については、乳幼児およびその親、妊婦、基礎疾患を有する人、医療従事者など、これまで出ていた基本的な考え方に異論はなかった。
ただ、個人が罹患した際の重症化・死亡を阻止する「個人防護」だけでなく、社会全体の感染拡大を軽減する「集団免疫」の観点からの議論も求める声が出された。
■「集団免疫については議論されていない。集団接種を全面的に推奨しているわけではないが、患者数の増加で医療機関がパンクするのを少しでも防ぐ意味がある。議論を尽くした上で集団免疫目的での接種を捨てるのはいいが、行政はいったん方針を決めると変えにくい。10人など小規模ではなく、50人、100人といった規模で議論を尽くすべき。結論は可能な限り、遅い方がよく、米国や英国など日本よりも先にワクチン接種を行う国々から出てくる副反応などのデータをギリギリまで集めるべき」(東北大学大学院医学研究科内科病態学講座感染防御・検査診断学講師の森兼啓太氏。
神戸大学大学院医学系研究科微生物感染症学講座感染治療学分野教授の岩田健太郎氏も、「集団感染を防ぐのか、個々人を守るのか、この両者はオーバーラップするので完全に分断できるものでもない。現時点では科学的データに欠けているので、明確な科学的な正解を模索するのではなく、より納得しやすいコンセンサスを得ていく以外にない」とコメント。
■またワクチン接種には、予防接種法に基づく定期接種(1類、2類)と臨時接種のほか、法に基づかない任意接種がある。
現在の65歳以上の高齢者のインフルエンザワクチン接種と同様、定期接種2類、もしくは臨時接種」を求めたのが、横田氏。
一方、「予防接種の対象になった人はリスクを背負うので、(高齢者以外のインフルエンザワクチンと同様に)任意接種にすべき」としたのが、岩田氏。
■「情報提供は自己決定、自己責任の大前提。どのくらい有効なのか、何が分かっていて何が分からないのか、副反応の懸念はどのくらいなのか、などを十分に情報提供すべき」(岩田氏)。

■この日の意見交換会では、幾つか重要なデータが示された。
一つは、横田氏が提示した、日本小児科学会によるワクチン接種の対象児の数。
同学会は、
(1)基礎疾患を有する小児(全年齢):約100万人分、
(2)1歳から6歳までの乳児:約350万人分(約700万人だが、接種量は成人の半量)、
(3)1歳未満の乳児を持つ母親:約200万人分、で合計約650万人分のワクチンが必要だとした。

(1)の中でも特に、薬剤により免疫不全状態にある小児、神経疾患、先天性心疾患、重症気管支喘息、未熟児などへの優先接種が必要だとした。
(2)については、この年代がインフルエンザ脳症やARDSに罹患しやすいことを根拠に挙げた。
インフルエンザ脳症は0歳から5歳の低年齢児で約85%を占める。
(3)については、0歳児はワクチン接種の効果が期待できないため、保護者への接種が重要だとした。CDC(米疾病対策センター)も保護者への接種を推奨している。

もう一つは、妊婦へのワクチン接種に関するデータ。
日本産科婦人科学会ガイドライン―産科編委員会委員長の水上尚典氏は、「1917年のスペイン風邪、1956年のアジア風邪などでは、妊婦がそれ以外の人に比べて死亡しやすかった。今回の新型インフルエンザでも、罹患した妊婦の約3人に一人は入院、30数人に一人は死亡しているといった報告もある」と妊婦への優先接種の必要性を指摘。

季節性インフルエンザワクチンは、日本ではほとんど接種されず、胎児への安全性などが懸念点。
しかし、「妊婦へのワクチン接種により、妊婦の発熱性疾患への罹患が約3分の2になり、生後6カ月までの乳児のインフルエンザ罹患も約6割減らすと報告されている。米国では2005年以降、毎年約60万人、既に300万人以上、季節性インフルエンザワクチンの接種を受けているが、大きな副反応はなく、かなり安全であることが示されている。」



<その3>
感染している母親が授乳することは可能か
「感染している母親が授乳することは可能でしょうか」といった質問に対しては、「母乳を介した新型インフルエンザ感染の可能性は現在のところ知られていない。
したがって、母乳は安全と考えられる」としている。
しかし、母親が直接授乳や児のケアを行うためには、
(1)タミフルあるいはリレンザを2日間以上服用していること
(2)熱が下がって平熱となっていること
(3)咳や、鼻水が殆どないこと
-の3条件を満たす必要がある、と回答している


妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応Q&A (一般の方対象)  平成21 年8 月25 日  社団法人 日本産科婦人科学会
http://www.m3.com/tools/Document/WIC/pdf/200908_5/1133_3_1.pdf
(最新情報が詳しく出ています)

<その4>
新型インフル患者が死亡 長野の30代男性
長野市は27日、新型インフルエンザに感染し、重症になっていた同市近郊の無職の30代男性が死亡したことを明らかにした。
長野市によると、男性は慢性心不全や糖尿病などの基礎疾患があった。
同市保健所が死亡の原因となった疾患が何か、調べている。
男性は23日に37・9度の熱を出し、かかりつけの医療機関を受診。症状がよくならないことから25日に別の医療機関で受診し、慢性心不全と肺炎で入院した。
26日に状態が悪化したため、集中治療室(ICU)で人工呼吸器を装着して治療していた。
<コメント>
4例目が名古屋で確認されていますから、新型インフルエンザによる死亡は国内5例目ということでしょうか。
人工呼吸器も無効というのもショックです。
1例目から今回までの貴重な症例について、迅速な詳しい医学的情報公開が必須ですが情報が入って来ません。
糖尿病をはじめ腎臓病、心疾患、呼吸器疾患などの持病がある人は、新型インフルエンザに感染すると重症化しやすい「ハイリスク」とされています。
心疾患、呼吸器疾患がハイリスクとなるのはわかるのですが、糖尿病や腎臓病がどうしてハイリスクなのかが今ひとつわかりません。
最終的に多臓器不全(MOF)に陥るということなんでしょうが、基礎疾患がどの程度の場合に危険なのかが公表されないと、こういった患者さんはただただ怯えるばかりです。

感染予防対策はもちろん大切ですが、感染後の死亡を防ぐための対策はどの程度進んでいるのでしょうか。
官主導ではなく、専門医師による学会主導で是非早急にお願いしたいところです。
日本小児科学会会長の熱意には敬服しますが、日本内科学会、日本感染症学会、日本医師会は何をやっているのでしょうか。
何かと風当たりの強い日本医師会
名誉挽回の絶好の機会ではありませんか。
きっと国民はこれを機会に味方になってくれますよ。

<参考>
日本内科学会
http://www.naika.or.jp/
<コメント>
新型インフルエンザの記載はまったくありません。

日本感染症学会
http://www.kansensho.or.jp/
<コメント>
スピード感がありません。

日本医師会
新型インフルエンザ関連情報
http://www.med.or.jp/kansen/swine/
<コメント>
3つの中では一番充実しています。


<その5>
新型インフル拡大 来春までに3割感染も
http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/8/27/106517/
■東京大医科学研究所の河岡義裕教授(ウイルス学)は「この冬、必ず日本で大流行する」とし、季節性の3倍以上の規模となり、来春までに国民の約30%、約3600万人が感染すると予測する。
浦島准教授は最大約5000万人の感染可能性を指摘。押谷仁・東北大教授(ウイルス学)は「11年春までに軽症者も含めると約8000万人が感染し、典型的な患者は5000万人に達するのではないか」と警鐘を鳴らす。
世界保健機関(WHO)は8月、世界的大流行が終わるまでに世界の人口の約3割、約20億人が感染するとの予測を公表した。


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http://mitaka.jpn.org/ticket/090418g/