ニュートリゲノミクス

ある日の新聞にニュートリゲノミクス(栄養遺伝学)という耳慣れない記事が出ていました。

「日本薬学会」の「薬学用語解説」
http://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?ニュートリゲノミクス
には
「遺伝子中のタンパク質・代謝物などを解析して、食品が体に与える影響を研究する手法。遺伝子関連ビジネスのなかでも、食品と健康とのかかわりの深い分野として注目されている。過去数年間は、研究試薬や機器、研究受託サービスなど、食品メーカーをターゲットにした研究支援ビジネスが中心であったが、米国では、個人向けの「遺伝子検査と栄養アドバイス提供」サービスも始まっている。」
と解説されていました。


イメージ 1


出典 日経新聞・朝刊 2009.10.17
版権 日経新聞


<きょうの一曲>
ザ・ルック・オブ・ラヴ / ダイアナ・クラール
http://www.youtube.com/watch?v=nMD__Q_VraM


<関連サイト>
シンポジウム「遺伝子時代の「医食同源」~ニュートリゲノミクス」開かれる
http://www.life-bio.or.jp/topics/topics177.html
■機能性食品は1993年NATURE誌に日本の文部省研究班が世界に発信した。
今や欧米では本家の日本を凌ぐ勢いとなっている。
広い意味での健康食品には効く理由が分からないものがある。
機能性食品はその理由が分かっているもので、欧米ではヒトゲノム解読完了後そのゲノムを利用してなぜ効くのか研究する「ニュートリゲノミクス」と言うゲノム科学が盛んである。日本はこれを激しく追いかけている。
生活習慣病などのリスクを低減するのが機能性食品で、厚生労働省が審査し許可している特定保健用食品がこれに当たる。
■機能性食品の基礎研究は生理機能効果の解明であり更に安全性の事前予測、標的機能・生体応答マーカーの解明、機能性食品の開発(スクリーニング)である。この研究に手法として注目されるのがニュートリゲノミクスである。
Nutrition(栄養)+Genomics(遺伝学)である
■具体的成果
大豆タンパク:
対照にカゼインタンパクでネズミに8週投与すると中性脂肪(トリグリセライド)、コレステロールがを下がり、げた。遺伝子解析で証明された。
ココア:
中性脂肪(トリグリセライド)が下がった。遺伝子解析では直接に中性脂肪を下げるのではなく中性脂肪の蓄積を抑えると予測している。従って、抗肥満となる。
ラクトオリゴ:
免疫賦活作用があった。腸内細菌叢の変化が腸内免疫系を活性化した。
低アレルゲン化小麦:
生体にとって不利な遺伝子の上昇がなかった。
■野菜の副成分を1955年と2000年を比較すると、ニンジンのビタミンAは100→7、セロリのビタミンCは100→23と減っている。
他にもタマネギ、アスパラもそれぞれカルシウム、ビタミンB2が減っている。
(コメント;これって栽培法の変化により野菜本来の滋養分が減っているということでしょうか。検証が必要です。)
■がん予防などには抗酸化ビタミンのEとCの協同作用が大切であり、ニンニク、ホウレン草などを摂る必要がある。



第21回談話会「食と健康のニュートリミクス」レポート
http://www.life-bio.or.jp/topics/topics215.html
■食品の成分間の相互作用(相殺効果、相乗効果、予期せぬ効果など)の研究はまだほとんど行われておらず、網羅的評価を行うにはゲノミクスが必要である。
例えば、ダイズイソフラボンオリゴ糖には相乗作用があって、骨鬆症を予防する。
βカロテンにはアレルギーをおさえる効果がある、
複合カロテノイドの方が単独のカロテノイドを複数とるよりも、肝臓がン発生の予防に効果がある、など。
■ダイズたんぱく質を長期摂取すると、コレステロールが下がる、セサミンにはアルコール代謝促進作用がある(セサミンはアルコール脱水酵素でなく、アセトアルデヒト脱水素酵素の働きを助けるので、悪酔いを軽減できる)、ココアのポリフェノールの抗肥満効果(ポリフェノールは肝臓での脂肪酸生合成や脂肪酸の輸送系を抑制する)、フラクオリゴ糖が腸内の菌に変化を起こし、腸管免疫系を改善する(免疫増強、アレルギー低減化)。
質疑応答から
■個人差はサプリと薬の相互作用にも現れるのか→
遺伝子の差は生まれながらにあるものと、後天的に出てくる(環境影響)ものがある。サプリと薬の組合せの研究は難しい。脳血栓の溶解剤を飲んでいる人は納豆を食べないように指導されるのは、薬と食べ物の組み合わせの問題。
(サイトの中のその他の質疑応答も参考になります)

ニュートリゲノミックス-新時代の栄養学の幕開け
http://www.yobou.com/contents/rensai/report/r15_55.html


イメージ 2

「旗で飾った船(レガッタの祝祭)」
1946年 油彩・カンヴァス
http://www.g-call.com/about_point/cp/raouldufy/



読んでいただいて有難うございます。
コメントをお待ちしています。
井蛙内科開業医/診療録(3)
http://wellfrog3.exblog.jp/
(H20.12.11~)
井蛙内科開業医/診療録(2)
http://wellfrog2.exblog.jp/
(~H20.12.10)
井蛙内科開業医/診療録 
http://wellfrog.exblog.jp/
(~H20.5.21)
(いずれも内科専門医向けのブログです)
葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
(循環器専門医向けのブログです)