減塩 その1

ただでさえ日本より塩分摂取量の少ない米国で、真剣に減塩運動に取り組んでいるようです。
これはむしろ日本で先に取り組むべき課題のはずです。

NY市が減塩運動を開始 5年で25%カットが目標
ニューヨーク市当局は14日までに、店頭やレストランの食品に含まれる塩分を今後5年間で平均25%減らすよう関係業界に呼び掛ける「全国減塩運動」をスタートさせた。

塩分の摂取過多を遠因とする早期死亡を防ぐのが狙い。
運動は各種健康団体や他州市計42組織の支持を得ており、全国規模に拡大発展させていきたい意向だ。

同市保健局の発表によると、25%カットはあくまでも任意で罰則などは伴わないが、目標が達成されれば米国民の塩分摂取量は20%減り、何千人もが早死にから免れるという。

発表によると、米国民は毎日、必要量の倍の塩分を摂取。
これが高血圧の原因となり、ひいては心臓発作や脳卒中のリスクにつながっている。

保健局は食品業界とも協議の上で、店頭の食品61種、レストランの食品25種についてそれぞれ減塩の目安を設けた。
http://www.47news.jp/CN/201001/CN2010011501000235.html

出典 共同通信 2010.1.15
版権 共同通信社


米食品メーカー、塩分ひかえめの流れ
■塩分摂取量について米政府からの圧力や消費者の間で懸念が高まるなか、食品メーカーは長年におよぶ減塩・低塩食品の販売促進で新たな取り組みを始めている。
大半の人が手をつけない「塩分ひかえめ」と銘打った食品を販売する代わりに、各メーカーは一部の人気商品から段階的に塩分を減らす手法を取っている。
が、ラベル上の表示にはこだわらない方針だ。

■来年夏までに、食品大手コンアグラ・フーズの缶詰パスタ料理「シェフ・ボイアーディー」のナトリウム量(塩分量に相当)は、パッケージ上では一言も触れずに、5年間で35%カットされることになる。キャンベル・スープの「V8」100%野菜ジュースも表示こそしなかったものの、8年越しで塩分量を32%減らした。

■何十年もの間、減塩表示に関する政府の規制に見合うよう、塩分ひかえめ製品は従来のものに比べ少なくとも25%まで塩分を削減した。それらの製品は往々にして味が変わり、売り上げも大抵伸びなかった。

■そこで食品メーカー各社はここ数年、消費者が気付かぬよう塩分量を徐々に減らす作戦に打って出た。

■米政府の保健専門家は長年、塩分摂取量を減らすよう国民に助言してきた。
そして現在、食品メーカーに対する規制強化の圧力が高まってきている。

■食品科学の分野において、塩分削減は非常に厄介な問題の1つだ。
塩分は、甘味を増し苦味を抑える効果がある安価な材料だ。
加工食品の鮮度を長持ちさせ、缶詰野菜やパック入りのホットドッグの形を整えるのに役立つ。
さらに、塩分の削減は、卸売り製品の材料変更などコストが高くつく可能性もある。

■コンアグラは長年、電子レンジ用ポップコーン「オービル・レデンバッカー」ブランドのコーンから塩分をいかに減らすかに取り組んで来た。
数年前、塩を従来より60%小さい粒子にすり減らす新たな手法を開発した。
幅は人の髪の毛の10分の1ほどで、小さければ小さいほど、多くの粒子がより多く舌に触れることになり、塩分が少なくても塩味を作り出す結果になった。


原文
Food Makers Quietly Cut Down on Salt
http://jp.wsj.com/Business-Companies/node_21396/(language)/eng-US

<コメント>
アメリカの食品メーカーの涙ぐましい減塩対策が窺われます。
日本でも日本高血圧学会という高血圧専門医の学会から「高血圧治療ガイドライン2009」というものが発表されています。
それによると減塩目標は食塩6g/日未満となっています。
実際の日本人の塩分摂取量は年々少なくなっているとはいえ、10g/日といわれています。

皆さんのすでにご存知のように日本人は欧米人と比較して塩分摂取の多い民族です。
欧米の学会での理想的な塩分摂取量は3.8gということでまだまだ大きな開きがあります。

日本では学会主導で医療側からのアプローチであり、今回の記事でわかるように米国では政府主導で食品メーカーを通じて消費者に直接的に減塩効果を期待する。
どちらがより有効かは考えるまでもありません。

最初にこれらの記事をみたときには排ガス規制の話を思い起こしました。
何事も合理的なことな合目的なことならやるべきこは合理的にやる。
アングロサクソン的な発想ではあります。
このことがすべてよいかどうかはわかりません。
かつての禁酒法もこんな発想から出発したかもわからないからです。

大江健三郎がかつてノーベル賞受賞式で講演した「あいまいな(ambiguous)日本人」。
これはこれでありかも知れません。

現政権も「あいまい」ですね。


イメージ 1

出典 朝日新聞・朝刊 2010.1.16
版権 朝日新聞社



イメージ 2

出典 朝日新聞・朝刊 2010.1.17
版権 朝日新聞社



読んでいただいて有難うございます。
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