タミフルが河川汚染?

きわめてショッキングなニュースがバレンタインデーにプレゼントされました。

##タミフルが河川汚染? 耐性ウイルス懸念、影響調査へ
新型の豚インフルエンザで使用が急増した抗インフルエンザウイルス薬「タミフル」が生活河川を通じて環境に与える影響を探るため、日本薬剤師会(児玉孝会長)が全国調査を始めた。
すでに国内の河川では、下水などから入ったとみられるタミフル代謝産物が微量ながら確認されている。
日本は世界中のタミフルの7割を消費するという推計も過去にあり、環境影響の把握が求められている。

代謝産物とはタミフルが患者の体内でウイルスを抑えるための形に変化したもの。

タミフルなど医薬品が河川に入り込む経路ははっきりしていないが、尿などの排泄(はいせつ)物や、のみ残した薬をトイレに流す場合などが考えられる。
水鳥などがこれを飲んで体内でウイルスと接するうちに、突然変異で薬が効かず感染力が強いウイルスが生まれないかと懸念される。

環境への医薬品の残留はタミフルだけの問題ではなく、同会はこれまでも鎮痛剤や向精神薬などによる環境影響の調査に取り組んできた。
今回もその一環で、タミフルを追加。新型の流行した昨秋から水道水の水源や下水処理場近くの河川計約50地点で水を採取、分析している。
藤垣哲彦常務理事は「5月ごろまでにまとめたい」と話す。

2008~09年の季節性インフル流行時に、京都大学大学院・流域圏総合環境質研究センターの田中宏明教授らが京都で行った調査では、下水処理後の水域でもタミフル代謝産物が検出された。

濃度は感染の流行が広がる時期ほど高く、ピークには1リットルあたり約300ナノ(ナノは10億分の1)グラムだった。
ただし、今すぐ人体や生態系に何らかの影響を与えるほどではないという。

販売元の中外製薬によれば、今シーズンのタミフルの供給量は前シーズンの約3倍。
国立感染症研究所の調査では、今シーズンは、8~9割の患者に抗ウイルス薬が使われているとみられる。

冬の渡り鳥は、下水処理場からの温かい水を好む傾向があり、「海外では、代謝産物が残留した水を渡り鳥がくり返し飲んだ場合、薬が効きにくい耐性ウイルスが出現するのではないかと指摘されている」と田中教授はいう。

国立感染症研究所の岡部信彦感染症情報センター長は「まだ仮説に過ぎず、ただちに影響があるわけではないが、長期的に研究すべき課題だ」と指摘している。




実は同じような研究が昨年6月に同じ研究グループからされていました。
今回の発表はその一連のものだったのです。

##淀川水系に医薬品残留物 京大教授ら検出 藻類実験で毒性も
大阪、京都、滋賀の3府県にかかる淀川水系で、解熱剤や抗生物質など医薬品類の残留物質が77種検出され、 藻類を使った実験で一部の物質に強い毒性が観察されたことが21日、京都大の田中宏明教授(環境工学)らの 研究グループの調査で分かった。
医薬品物質の水環境への混入は厚生労働省などの調査で判明しているが、 生物への実験結果が明らかになるのは初めて。
食物連鎖による生物濃縮で人体への影響も予想されるため、 田中教授らは早急な対策を訴えている。

調査は、淀川水系本川、支川、下水処理場付近の計33地点で採水し、京大付属流域圏総合環境質研究センター (大津市)で分析した。
河川水からは、強心剤や高脂血症剤、抗不整脈剤、胃酸抑制剤など77種の物質が検出され、
調査地点でほぼまんべんなく医薬品物質が出たという。

さらに、生態系への影響を調べるため、藻類のミカヅキモを使い、淀川水系で検出されたものと同じ医薬品物質を与えて、 それぞれ成長のスピードを調査。
その結果、解熱鎮痛剤や抗生物質など5物質が、藻類の成長を阻害する強い毒性を持っていることが判明した。

中でも薬用せっけんなどに含まれる物質「トリクロサン」が、除草剤と変わらないほど強い毒性がみられたという。

現段階では、ミカヅキモのみの生態調査しか実施していないため、他の水生生物への影響は不明。

田中教授によると、病院や家庭で日常的に使用される医薬品は、主に屎尿(しにょう)として下水に排出。
従来の下水処理技術ではほとんど除去できず、河川にそのまま流入する。
畜産業や水産業でも、感染症防止や肉質向上などの目的で多くの医薬品が使用されており、
処理されず直接環境中に放出されている可能性があるという。

#“見えない汚染”対策後手 食物連鎖 人体に影響も
医薬品物質の水環境への混入は、欧米では“見えない汚染”として実態調査や対策が進んでいるが、
日本国内ではまったく対策が取られていない。
医薬品の副作用など、人体への直接的な影響にばかり目が向けられ、
体外へ排出されたときの影響については見過ごされてきた。

英国では1990年代後半、下水処理場下流域で魚の奇形化やメス化する現象が問題となった。
水質調査の結果、女性が使用する「避妊薬」が下水処理場で除去しきれずに河川に流入した可能性が強いことが判明。
このため、欧州連合では2006年、新薬の開発で環境への影響評価を行うことを指針で定めた。

一方、日本では水道の浄水場で医薬品物質はほとんど除去できており、飲み水には問題はない。

しかし、下水処理技術が未整備のため、食物連鎖による生物濃縮の結果、 医薬品に汚染された生物を人が食べ続けることへの危険をはらむ。

例えば、抗がん剤はがん細胞の増殖を食い止めるために細胞分裂を抑制する作用がある。
胎児の場合、母体内で細胞分裂を繰り返すため、母親が医薬品に汚染された生物を摂取すれば、胎児への影響も考えられる。

また、新型インフルエンザの流行で治療薬「タミフル」の効果が注目されているが、タミフルが人間の体内で 分解されるのはわずか5%でしかない。
その大半はそのまま環境中に放出されるため、水鳥がタミフルの 混入した河川の水を飲み、体内にある鳥インフルエンザウイルスが、タミフルに抵抗力を持つウイルスに変異する危険性もある。

環境省によると、医薬品物質は水溶性が高いことから、分離が難しく従来の機器では検出されなかった。
分析技術の進歩により微量物質が測定できるようになったことで、ここ数年急速に研究が進んでいるという。

しかし、河川については国土交通省、飲み水については厚生労働省、環境評価については環境省が管轄するなど、
縦割り行政の弊害があって対策は進まない。現状でも「特に指針を策定するなどの検討の動きはない」(環境省環境管理技術室)という。
出典 産経関西 2009.6.22
版権 産経新聞

<コメント>
うろおぼえで恐縮ですが、水道水の影響について思い出したことがあります。
たしか、京都だったと思いますが、上水道にフッ素を入れて虫歯を劇的に減らしたということがありました。
現在はどうなっているのでしょうか。
ニューヨークに数十年滞在していた知人が帰国して歯科医にチェックしてもらったら「10代の歯ですよ」といえあれたそうです。
彼の地では上水道にフッ素が入っていて、ニューヨーカーには虫歯の人は少ないとのことでした。
まさに「歯医者泣かせ」ですね。




<きょうの一曲>
キースジャレット ケルンコンサート
http://video.fc2.com/content/キースジャレット%E3%80%80ケルンコンサート/20090903aRDU96Zy/



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