診療報酬来月変更 患者負担どうなる?

いよいよ明日から4月です。

医療界では明日からの薬価改定(診療報酬変更)に向けて準備に慌ただしい毎日です。

物事が変わることを、「改正」「改悪」「改訂」「改定」「改変」とかいいます。
同じことが、立場が変われば、「改正」であったり「改悪」であったりします。

「変更」という表現は客観的で一歩引いた冷めた感じで意外といいですね。

以下は、新聞記事の紹介です。



#診療報酬来月変更 患者負担どうなる? 歯科、初診・再診とも上げ  薬局、後発薬の有無カギ
新年度から医療の価格や制度が変わる。
疲弊しているとされる病院の救急や産科、小児科、外科などの分野で価格を上げ、医療機関の収入を増やして立て直しを図るのが見直しの柱だ。
このほかにも様々な変化がある。
これによって患者にどのような影響が出るのか。


医療機関で公的な医療保険を使って受ける医療行為には一つ一つの項目ごとに「診療報酬」と呼ぶ公定価格が定まっている。
この診療報酬は経済状況などを考慮して、2年に1度見直されるが、今回は10年ぶりに全体で引き上げられた。


引き上げ幅は0.19%とわずか。
だが、病院の人手不足で患者のたらい回しや診療科の閉鎖が相次いだことへの対策として、個別には報酬が大きく変わった部分もあり、患者によっては影響が出るケースもある。
図Aに主な診療報酬の変更点を挙げた。
具体的なケースで患者負担がどうなるのかをみてみよう。

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#入院短縮図る
【病院・診療所】 大病院に入院し、難しい手術を受けたときの医療費が大幅にアップする。
事例(1)は58歳の男性が脳ドックを受診したところ、脳動脈に小さなこぶが見つかったケース。
放置するとこぶが破裂し、脳内出血につながる恐れがあるため、8日間入院して、頭を開き、こぶの部分をクリップで留める手術を大きな病院で受けた。

これまで難しい手術の報酬が安すぎたと判断されたため、今回の改定で主に難易度が高く、人員が多く必要な手術は報酬が大幅に引き上げられた。
また、忙しい医師を助けるために事務作業を補助する職員や看護師を補助する職員を置いた病院への報酬も上がる。

このケースでの医療費は3月までより40万円以上増えて約150万円に膨らむ。
現役世代の患者が病院の窓口で負担するのはこの3割。
ただし、公的な医療保険には「高額療養費制度」(図B)と呼ぶ患者負担の上限制度があり、何十万円もの負担増にはならない。
それでも事例(1)のケースで一般的な所得水準の患者にとっては4000円強の負担増となる。

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救命救急センターに運ばれた場合やリスクの高いお産などで入院した場合は医療費が大きく変わる。
政府は入院治療の効率化を進めるため、初期に手厚い治療を実施して、なるべく早く退院してもらう方針で、入院の診療報酬も初期に厚く、長引くと引き下げるなどのメリハリを強めた。

医療費が高額になりそうな入院となったときは、患者側の防衛策として忘れないようにしたい手続きがある。
事前に自分が加入する健康保険などの事務所で「限度額適用認定証」を受け取り、病院に提出しておけば、3割の自己負担分が数十万円になったとしても高額療養費の上限額を払うだけで済む。
そうすれば、今回の診療報酬の改定に伴う負担増を強く意識することはなくなるだろう。


 
風邪を引いた程度の軽い治療の場合はどうだろうか。
事例(2)は50歳の男性が気管支炎にかかり診療所(開業医)を受診するケース。
インフルエンザの疑いがあったのでその検査も実施した。
病院診療の充実のための財源が足りないとして、診療所の再診料が20円下げられた影響を受け、患者負担は微減だ。

「検査機器が最新型かどうなどで診療報酬の増減はあるが、診療所での患者負担に大きな変化はない見通し」(東京保険医協会)。
ただ夜間や休日の治療では診療報酬が上がる部分があり、救急外来に行った場合の負担は増えることになりそう。
入院ベッド数が200未満の中小病院の再診料は90円上がることの影響もわずかだがありそうだ。

調剤料は増える
【薬局】 安い後発医薬品ジェネリック薬)を受け取る機会が増え、それによって負担が減る患者が目立つかもしれない。
診療所や病院を受診した場合、処方せんが発行され、患者は調剤薬局にこの処方せんを持ち込んで薬を受け取ることが多い。
この際の調剤料なども診療報酬の一つで、ここに後発薬の普及を進める仕組みが入るためだ。

後発薬は新薬の特許期間が終わるのを待って発売されるため価格の安さが特徴。
政府は医療費抑制のために普及させたいが、品質を不安視する声などがあり、思うように進んでいない。
そこで後発薬を処方する量が多くなるほど調剤料が増えて薬局の実入りが膨らむ方式を導入する。

調剤料が増えれば患者負担も増えるが、先発薬を後発薬に変えたことによる薬剤料の下げで薬局での患者負担は全体として減るケースが多くなると見られる。
事例(3)はそのような例だ。

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【歯科】 今回の診療報酬改定では、診療所の再診料が引き下げられたことが話題となったが、歯科診療所については初診料、再診料ともに上がった。

事例(4)は歯ぐきから血が出る歯周病の治療で通院し、スケーリングと呼ばれる歯石取りの治療などを受けた患者のケース。
初・再診料引き上げの影響で患者負担も少し増えている。
東京歯科保険医協会は「虫歯治療については歯周病よりさらに費用の変化は小さくて済む」とみる。

もっとも、歯科については金属製の義歯を入れるときにはその部分が全額自費になるなど費用については一般の診療所よりわかりにくいところも多い。

出典 日経新聞・朝刊 2010.3.14
版権 日経新聞