皮膚がめくれる(老人性皮膚萎縮)

高齢化社会です。
高齢者が増加する分、高齢の親の介護をする家族も増えました。
多くの方は、高齢者が何かにぶつけた覚えもないのに皮下出血をあちこちに起こすことを知っています。
しかし、それだけではありません。
簡単に皮膚がめくれてしまうこともあるのです。

きょうは、この「老人性皮膚萎縮」をとりあげました。
新聞記事の紹介です。



質問
74歳の父。数年前から、体中の皮膚がすぐにはがれ、めくれてしまいます。
特に、肩から手の甲にかけてがひどく、洋服の上から強くつかんだり、ぶつけたりするだけで、薄い皮が鉤(かぎ)裂きのようにはがれ、血がにじみ出てきます。
何かよい治療法はないでしょうか。

Q 何が原因でしょう。
A 加齢に伴って生じる皮膚の萎縮(いしゅく)(老人性皮膚萎縮)や内出血斑(はん)(老人性紫斑)が考えられます。

Q なぜ起こりますか。
A 皮膚は表皮、真皮、皮下脂肪組織の三層構造です。
真皮には血管やリンパ管、神経などがあり体内と連絡する支持組織の役割があります。
若いときは、真皮のコラーゲン線維や弾性線維といった肌の張りや弾力の源となる成分が豊富で、表皮と真皮の接合面もしっかりくっついています。
しかし、年齢を重ねると、成分が減って表皮と真皮の層が薄くなり、真皮内の血管周囲組織も弱くなるので、少しの力で皮膚がはがれたり、真皮にある血管が切れて内出血したりしやすくなります。

Q ほかに原因は。
A ステロイド薬の服用や外用治療を長期間続けていると、皮膚の萎縮や内出血斑がより発生しやすくなります。
脳や心臓の梗塞(こうそく)や血栓などの予防で血液を固まりにくくする薬を飲んでいる場合も同様の症状が起こりやすくなります。

Q 対処法はありますか。
A 血管を強化する作用のあるビタミンCを十分にとることで内出血斑の改善が期待できます。
まず食生活で多くとることを心掛けて。
あまり変化がみられないなら市販のサプリメントでの補充や、医療機関でビタミンC製剤などの治療を受けてみるのもよいと思います。
それでも改善しないなら、現在使っている薬剤や他の病気が原因ではないか、医師に相談して確かめたほうがよいでしょう。

Q 生活上の注意点を。
A 症状が出やすい腕は強くこすったりねじったり、圧迫するのは避けて。個人差はありますが腕時計やカバンを腕にかけて症状が出る人も。
皮膚の萎縮性変化は、老年性のドライスキン予防や治療である程度改善が期待できるので保湿クリームなどによるケアも大切です。

回答者
東京都健康長寿医療センター(東京都板橋区)皮膚科 種井良二副部長

出典 朝日新聞・朝刊 2010.5.13
版権 朝日新聞社


<関連サイト>
米大など、遺伝性の難病患者からiPS細胞
http://health.nikkei.co.jp/news/med/index.cfm?i=2010021710678hb
■米ハーバード大学などの研究チームは遺伝性難病の患者の細胞から新型万能細胞(iPS細胞)を作り、その特徴をもとに病気の仕組みの一端を解明した。
作ったiPS細胞ではもとの細胞に比べ、染色体の保護や細胞寿命に関係する「テロメア」と呼ばれる染色体末端部分をのばす物質が増えていた。この物質が病気の進行を左右する可能性があるという。
成果は18日、英科学誌「ネイチャー」(電子版)に発表する。
■同大のジョージ・デーリー准教授らは皮膚の難病「先天性角化異常症」の患者の皮膚細胞に4つの遺伝子を入れて、iPS細胞を作った。するともとの皮膚細胞に比べテロメアの伸長に必要な物質「TERC」の働きが活発になった。
出典 日経新聞・朝刊 2010.2.18
版権 日経新聞



iPS細胞:難病患者の皮膚から作成 テロメアを修復
http://hellobabies.info/wp/?p=707
核酸ニュース 2010.2.27
■染色体の両端部「テロメア」が異常に短くなる難病の患者の皮膚細胞から人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作り、長さを回復させることに、米ボストン小児病院などのチームが成功した。
テロメアは老化や細胞のがん化にかかわることが知られており、生命活動の営み解明やがん治療に役立つ可能性がある。17日付の英科学誌ネイチャー電子版で発表した。
■チームは、先天性角化異常症という遺伝性疾患に着目。テロメアを維持する酵素「テロメラーゼ」が不足してテロメアが短くなる難病で、老化が早まるほか貧血や皮膚の異常などが起こる。
患者3人の皮膚細胞を採取し、山中伸弥・京都大教授が開発した4種類の遺伝子を導入する方法でiPS細胞を作成した。
■その結果、患者の元の細胞では、テロメラーゼを構成する分子の一部が不足しているにもかかわらず、iPS細胞ではテロメラーゼが正常に働くようになることを突き止めた。
また、テロメアが修復され、正常の長さに戻ることも発見した。
テロメアは、細胞が分裂するたびに少しずつ短くなる。チームは「老化現象の解明にも役立てたい」としている。





<番外編>
#生命の起源に関与? オリオン大星雲の円偏光
http://sankei.jp.msn.com/science/science/100503/scn1005030755001-n1.htm
出典 産経ニュース 2010.5.3
版権 産経新聞
■地球上の生命はどこから来たのか? 
地球の生命を構成するアミノ酸はなぜ、左型なのか? 
国立天文台など日米英豪の国際研究チームは、オリオン大星雲中心部の広い領域で特殊な光を観測し、生命の起源とアミノ酸の謎への深いかかわりを示唆する研究成果を発表した。
原始太陽系が特殊な光にさらされた結果、生命の素になるアミノ酸に偏りが生じ、これが隕石とともに飛来して地球上に生命が誕生した-というシナリオだ。

鏡像異性体
タンパク質をつくるアミノ酸には、右手と左手のように構造が同じなのに重ね合わせることができない「鏡像(光学)異性体」がある。
普通の化学合成では左型と右型が半々に生成されるが、地球上の生物を構成するタンパク質は、ほとんど左型のアミノ酸から成る。
ホモキラリティーと呼ばれるアミノ酸の偏りは、生命の起源にもかかわる大きな謎だ。
 
一方、1969年にオーストラリアに落下したマーチソン隕石など、太陽系初期の状態が保存された古い隕石には、付着したアミノ酸に左型に偏ったものがあることが知られていた。
 
生命の起源については、落雷や隕石衝突時の衝撃によって地球上でアミノ酸が作られたとする説もある。
マーチソン隕石などの研究成果は「隕石とともに飛来したアミノ酸が、地球生命の起源になった」との地球外起源説を後押しする。
地球上で生成されたとする説に比べると、アミノ酸の偏りを無理なく説明できる。
 
アミノ酸の偏り
地球外起源説が正しいとすれば、宇宙空間にアミノ酸の偏りを引き起こす原因があるはずだ。
国際研究チームは、アミノ酸の左右の型を偏らせる性質がある「円偏光」と呼ばれる特殊な光に着目した。

■あらゆる方向の波が重なり合っている普通の光に対し、偏光は波の振動方向がそろっている。
円偏光は振動方向の軌跡が円を描く特殊な状態で、右回りと左回りがある。
右回りの円偏光は右型アミノ酸を、左回りは左型を選択的に壊す。
 
研究チームは南アフリカ天文台の1.4メートル望遠鏡に赤外線偏光観測装置を搭載し、地球から約1500光年離れたオリオン大星雲の中心部を観測。
その結果、太陽系の400倍に相当する領域で、右回りと左回りの円偏光が分かれて広がっているのを発見した。
円偏光は、太陽の約20倍の大質量星が形成されている領域を中心に広がっており、太陽と同程度の星の周囲では観測されなかった。

宇宙生物
かつて太陽系の近くに、大質量星の末路である超新星爆発が起こっていたことを示す研究報告がある。
 
国立天文台ハワイ観測所の福江翼研究員は「オリオン大星雲で観測された円偏光領域の広さを考えると、原始太陽系が近くの大質量星形成域から広がった円偏光にさらされたことが示唆される。
天文学と生命の起源が、円偏光という特殊な光の探査で結びついた」と話す。
 
初期の地球では「絨毯爆撃」のように多数の隕石が降り注いだ時期があったとされる。隕石が持ち込んだわずかなアミノ酸の偏りが増幅され、地球上の生物ではほぼ100%が左型になったという筋書きだ。原始太陽系を照らした円偏光が、私たちの体をつくるアミノ酸の「左右」を決定づけたのかもしれない。
 
近年、太陽系外で多数の惑星が発見され、地球外生命への関心が高まる中、研究チームは今回の研究を「宇宙生物学」という新しい学問の成果と位置づける。
今後は、オリオン大星雲以外の星形成領域で観測を進め、円偏光の普遍性を探る方針だ。

イメージ 1




span style="color:rgb(0,0,255);">他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 <a href="http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy"; target="_blank">http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy<;/a>
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく <a href="http://blog.m3.com/reed/"; target="_blank">http://blog.m3.com/reed/<;/a>
循環器科関係の専門的な内容)
井蛙内科/開業医診療録(3)<a href="http://wellfrog3.exblog.jp/"; target="_blank">http://wellfrog3.exblog.jp/<;/a>
井蛙内科/開業医診療録(2) <a href="http://wellfrog2.exblog.jp/"; target="_blank">http://wellfrog2.exblog.jp/<;/a>
井蛙内科開業医/診療録 <a href="http://wellfrog.exblog.jp/ " target="_blank">http://wellfrog.exblog.jp/ </a>
(内科関係の専門的な内容) </span>