腰痛、8割は原因不明

腰痛、8割は原因不明 体操やストレッチで改善

老若男女を問わず腰痛に悩む人は多い。
厚生労働省の調べでは体調不良を訴える症状のうち腰痛は男性で1位、女性で2位。
ただ8割以上のケースで痛みの原因はわからず、日常の心がけや簡単な体操で症状は改善できると専門家はいう。

都内在住のIさん(28)は、中学生のころからサッカーなどの激しい運動時に腰の痛みを感じていた。
社会人になってからは学生時代のように運動はしなくなったが、腰痛が続く。
普段から腰に軽い痛みや違和感がある。
ずっと同じ体勢でいられず、気になって物事に集中できない。
腰痛自体がストレスだという。

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85%が自然に回復
国民病とも言える腰痛だが、ぎっくり腰など約85%の腰痛は医療機関へ行かなくても自然によくなっていく。
痛みが出始めたらまず冷やし、その後温めるなどすれば3~4カ月で自然に回復するという。

長く続く慢性の腰痛には、体を柔らかくして筋肉を付け、正しい姿勢を保つことが重要。
無理のない範囲で普段からウオーキングやヨガ、ストレッチなどをする。
また、頻繁に体勢を変えるなどして長時間同じ格好をしないようにし、日ごろから無理のない姿勢をとるように心がけることも大切。

最近では、背骨の間でクッションの役割をする椎間板が注目されている。

椎間板は背骨をスムーズに動かしたりしっかりつなぎとめたりするのに働き、背骨とともに体を支える屋台骨の役割を担っている。
ただ血管がないため老化しやすく、20歳以上で水分が失われて背骨の連結がスムーズにいかなくなる。
連結部分がガタガタすると、周囲の関節も不安定になり筋肉が緊張してこりや痛みを感じるようになる。20歳以上では誰でも腰痛になる可能性がある。

椎間板に着目した運動療法も登場した。
体を反らしたり曲げたりする体操「マッケンジー法」だ。
姿勢が悪くなると椎間板の内部の髄核が本来の位置からずれ、腰痛につながる。
同法では体を反らすなどして、髄核を元に戻し、痛みをとる。

自分の痛みのタイプをチェックしたあと、腰を反らす動作か腰を曲げる動作を繰り返す。
痛みが治まれば、その動作をしばらく続ける。

川崎市在住のSさん(60)は2~3年前から長時間歩いたり前かがみで料理をしたりすると、腰に痛みを感じるようになった。
2010年12月に医師の指導を受け、腰を反らすなどの体操を毎日続けたところ、日常生活ではほとんど痛みを感じないまでに回復した。
「体操をやっているのが効いているようだ」と実感している。


ストレスも影響
腰痛といっても、体だけの問題ではなさそう。
多くの腰痛には仕事の悩みなどのストレスが大きくかかわっている。
最近では特に多い。
ストレス解消のためにも、楽しめる簡単な運動をするのはよい。

通常の腰痛は自然に治ったり自分で対処できたりするが、少しでも不安を感じたら医療機関へ行くとよい。
腰痛の仕組みや対処法を説明してもらえ、不安が解消される。
痛みをとる運動療法やストレッチの指導も受けることができ、鎮痛剤なども処方してもらえる。
腰痛の治療は患者が主役。
自分で積極的にストレッチなどの努力もいる。

強い痛みが長く続くようなら、深刻な病気の可能性もある。
腰痛の15%は感染症やがん、骨の病気が原因とされる。
痛みの強さが1カ月以上変わらなかったり、発熱やしびれがあったりする場合は、医療機関を受診しよう。
                                   (長倉克枝)
出典 日経新聞・朝刊 2011.2.13(一部改変)
版権 日経新聞