夜ごとに脂肪はため込まれる

今回の大震災に遭われた方に、心よりお見舞い申し上げます。

いつ、何を、どれだけ食べるのか――。
それに気をつけるだけで、太りにくく健康な体を手に入れることができるという新聞記事の紹介です。

あなたの体は夜ごとに脂肪をため込んでいる

■脂肪少なめの夕食を9時までに
朝食とともに重要なのが夕食の取り方と、その内容。
夕食では、脂肪分が少ない食事を、遅くとも夜9時までに済ませることが肝要です。
というのは、「時計遺伝子」と言われる遺伝子群の働きで、体の脂肪をため込む力が夜に高まるからです。

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図1 マウスの脂肪組織中のBMAL1(ビーマルワン)の量は1日の中で変動する。
グラフはBMAL1量が一番多いときを100%としたときの、時間ごとの変化を示したもの。
最もBMAL1が多い午前2時を100とすると、最も少ないのは午後2時だった(データ:榛葉繁紀日本大学教授)


この図は、時計遺伝子の一つが作るBMAL1(ビーマルワン)というたんぱく質の1日の変動を示したもの。
夜に増えているのが分かります。
実はBMAL1は、脂肪の合成を促すとともに、脂肪細胞の分化を促進して新たな脂肪細胞を作り出す働きがあるのです。

本来、夜は休息してエネルギーをためるべき時間帯。
一方、昼は十分活動するために、エネルギーを消費しやすくしなければなりません。

のために、BMAL1はこのような日内変動になると考えられます。
太りにくい体にするには、このBMAL1の動きを考え、遅くとも9時までには夕食を食べ終えるようにします。
実は、夕食を早めに食べることは、末梢時計をリセットするためにも重要。
朝食(breakfast)は、まさに断食(fast)を終える(break)もの。
末梢の体内時計は8~12時間の絶食後に初めて食べた食事でリセットされます。
夕食時間が遅いとリセット力が働きづらいのです。

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一方、最近、栄養学の分野で注目を集めるのが「食事誘発性体熱産生(DIT:Diet Induced Thermogenesis)」。
人が消費するエネルギーは、「基礎代謝」と「身体活動代謝」、そしてDITに分けられます。
DITは、食べ物の消化吸収や味、香りなどの知覚が働くことなどで消費されるエネルギーですが、遅い時間に食事をとる「夜型生活」をしていると、同じ食事内容でもDITが低下することもわかっています(図2)。

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図2 健康な女子大生33人に、1食当たり500キロカロリーのの食事を「7:00、13:00、19:00」にとる朝型生活と、「13:00、 19:00、1:00」にとる夜型生活をしてもらい、そのときの食事誘発性体熱産生(DIT)を見た。
その結果、夜型生活は朝型生活に比べてDITが低かった(データ:日本栄養・食糧学会誌、第63巻、第3号[2010])


この研究を行った神奈川県立保健福祉大学教授の中村丁次さんは、「DITは1日の消費エネルギーの10~15%を占め、太りやすい人は DITが低いことが分かっています。DITの高低には自律神経が深くかかわっているので、夜型生活では自律神経のバランスが崩れることで、DITが低下するのかもしれません」と分析します。
自律神経の働きを整えるためにも、朝型生活が望ましいということでしょう。

とはいえ、どうしても夕食時間が遅くなってしまうことはあるもの。
もしも昼食と夕食の間が7時間以上空いてしまう場合には、夕食の一部を前倒しして間食として“分食”するといいのです。
そのとき肝心なのは、夕食の量を軽くすることです。 
長時間の空腹後に夕食をとると血糖値の変動が激しくなり、脂肪をため込むホルモンであるインスリンの分泌量が増えてしまいます。
分食なら、これを避けることができます。

長時間の空腹後に夕食をとるとついついたくさん食べてしまいがち。
途中で間食しておけば、夜遅い時間にとる食事の量を、あまり苦労せずに減らすことができます。

肥満のもとと問題視される間食ですが、賢くとれば食べすぎを防ぐ効果もあるのです。


■「誰と食べるか」も大切
朝食、夕食に比べて自由に食べられるのが昼食です。
昼にはBMAL1も少なくなり、脂肪が合成されにくいので、脂質の多いものは昼食に食べるのがおすすめです。
食べすぎは厳禁ですが、昼食で好きなものを食べれば、ストレスもたまりにくいでしょう。

40代、50代からの食事には「いつ」「何を」食べるのかという、「時間栄養学」の観点が大切です。
一方、このほかにも健康のための食べ方のポイントがあります。
その一つが、よくかむこと。

「DITを見た研究で、同じものを食べても早食いではエネルギー消費量が低く、よくかむと高いことが分かりました」と中村さん。

また、中村さんの研究では「誰と」食べるのかも食事量や栄養バランスにかかわるといいます。
「バイキング方式で好きな物を好きなだけ食べられるようにすると、一人で食べるよりも、恋人など好きな人と食べたほうが食事量が抑えられ、しかも栄養バランスの良い食事内容になっていました」と中村さん。

これからは、誰とどのように食べるか、食環境も考えながら食事をするのが大切なのかもしれません。
(日経ヘルス プルミエ 村上富美、ライター 武田京子)
日経ヘルス プルミエ 2010年12月号より

出典 日経新聞 Web刊 2011.3.14
版権 日経新聞


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