食中毒を防ぐ肉料理の段取り

まな板分けて菌移さず

肉による食中毒を防ぐには、家の台所でも注意が必要だ。
食中毒を引き起こす腸管出血性大腸菌カンピロバクターサルモネラ菌などの細菌は熱に弱く、十分加熱すれば肉は安全に食べられる。
ただ、調理の手順によっては、ほかの食品に菌を移す可能性がある。

まな板と包丁の使い方が重要なポイントだ。
肉を切った後のまな板、包丁で、板わさ用にカマボコを切ったとすると? 
細菌がカマボコに移り、そのまま口に入ることになる。
金井教授は、できればまな板を2枚用意するよう提案する。1枚は野菜サラダ、ハム、ちくわ、チーズ、パンなどそのまま熱を加えずに食べる食材用。
もう1枚が過熱食材用。
1枚だけなら表裏で使い分ける。

薄い下敷きのようなまな板を生の肉、魚専用に準備し、本来のまな板の上において切ると、細菌が移りにくい。
切り開いて平らにした牛乳パックを使ってもいい。
包丁もまな板も、使うたびに洗剤で洗うのが基本。
生肉を触った菜箸やトングがサラダ用の生野菜に触れないようにすることも必要だ。

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盛り付けにも工夫を。
完成した肉料理を生野菜と一緒に長時間置くのは避けてる必要がある。
肉は過熱で細菌が死んでいるが、生野菜についた菌が肉へ移ることがあるからだ。
細菌はアミノ酸を利用して増殖する。野菜では増殖が抑えられていた細菌が、肉に移るとアミノ酸が豊富になるので急速に増える。
お弁当に生野菜を入れる場合も、肉のおかずとは別容器に。
または、ラップやホイルで仕切って直接触れないようにする。
サンドイッチはパン、トマトなど生野菜、具をあらかじめ挟(はさ)むのではなく別にし、食べる際にパンに乗せる方が安全。

後片付けでは、乾燥が大切だ。
スポンジは水分と汚れが残り雑菌が繁殖しやすい。
洗い物の最後に、湯沸かし器からの湯で丁寧にもみ洗いし、絞って乾燥させる。
数日に1回は熱湯で5分煮る煮沸消毒を習慣に。台ふきんも濡れたまま放置しがち。
におうようなら、雑菌が繁殖している証拠。
熱湯で煮て雑菌消滅を。汚れをふき取るたびにこまめに洗う。
ふきんかけにかけておくと乾きやすい。
水切りかごも、たまった水を捨て、洗う。
汚れがたまりやすい四隅は丁寧に。
次亜塩素酸ナトリウムを含む漂白剤が使える素材なら、2~3日に1回殺菌しよう。

出典 朝日新聞・朝刊 2011.5.28(一部改変)
版権 朝日新聞社

<私的コメント>
家庭での食中毒はそう多いものではありません。
多いのは、やはり「焼き肉屋」「焼き鳥屋」などのいわゆる「プロ」によるものです。
発症までに少し時間がかかるので食べた本人も気付かず、医療機関にかかっても「胃腸かぜ」で済まされてしまうことの方がむしろ多いのです。
食中毒がどうして営業停止にならないかというと、たとえ診断がついても時間が経っていて「サンプル」がなくなっていて立証が困難なことが多いからです。
それ以前に、医療機関で食中毒の診断がしっかり出来ない、保健所への連絡手続きが煩雑で医療機関が報告しないと言った深刻な問題が隠れています。
さて、欧州で病原性大腸菌「O-104」による食中毒が広がっているというニュースが飛び込んできましたね。

以下、ニュースより。
ドイツでは、今月に入ってから腸管出血性大腸菌「O-104」による感染が広がっていて、これまでに10人が死亡、約300人が激しい下痢の症状を訴えています。
ドイツ保健省によると、スペインから輸入されたキュウリ3本から「O-104」が見つかったことから、感染源とみてドイツ、スペイン両国で調査しています。
感染はスウェーデンデンマーク、イギリス、オランダなどでも報告されていて、EU欧州連合は各国に注意を呼びかけています。
(テレ朝news)
http://www.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/210530029.html



<番外編> コレステロール 2題
歯周病、善玉コレステロール激減し動脈硬化
歯周病動脈硬化症を悪化させるメカニズムを、新潟大学大学院医歯学総合研究科の山崎和久教授(歯周病学)らのグループが解明した。

歯周病の病原菌には、動脈硬化の原因の「悪玉コレステロール」を回収する力を持つ「善玉コレステロール」を減らす作用があることを突き止めた。
世界初の成果といい、米電子版科学誌「プロスワン」で20日発表する。

マウスを歯周病原細菌に感染させて、正常なマウスと比べたところ、歯周病のマウスは、血中の善玉コレステロールの量が半減した。
また、大動脈の悪玉コレステロール蓄積面積が、正常のマウスの2・25倍となり、動脈硬化症が著しく悪化することが分かった。

山崎教授は「歯周病の予防・治療が、動脈硬化症対策にも結びつく」としている。

出典 YOMIURI ONLINE 2011.5.20
版権 読売新聞社

<私的コメント>
動脈硬化症は血管の壁にコレステロールがたまることなどが原因となって起きます。。
脂質異常症や喫煙、高血圧、慢性炎症、肥満が動脈硬化症のリスク要因です。
歯周病原細菌も、こういったリスクの一つであることがこれまでの疫学調査でわかっていました。
山崎教授らはマウスを使った今回の実験で、この細菌が、善玉コレステロールをつくる際に働く遺伝子「Liver X receptor」の働きを鈍らせ、善玉コレステロールの値を下げることを突き止めました。
歯周病とこの遺伝子との関連を示したのは、世界で初めてということだそうです。


「超悪玉」コレステロール、分子の形に原因 英チーム
悪玉コレステロールよりも心筋梗塞を起こしやすい「超悪玉」として注目される新種のコレステロールが、悪さをする仕組みを英ウォリック大チームが突き止めた。
米糖尿病学会誌の最新号に論文を発表した。

超悪玉は、生活習慣病である2型糖尿病の患者や高齢者の血中に最近見つかった。
悪玉であるLDLコレステロールより、分子が小さく、比重がやや高いのが特徴だった。

詳しく調べたところ、LDLコレステロールに糖が結び付いて表面の形が変化すると「超悪玉」になり、血管の壁につきやすくなる性質を持つことがわかった。
血管が詰まると心筋梗塞などの原因となる。

<私的コメント>
血管がコレステロールで詰まるのを防ぐために、ポリフェノールなどの抗酸化物質を含む食べ物が勧められています。
今回の研究によると、悪玉が超悪玉になる仕組みに酸化反応は関係していなかったということです。

出典 asahi.com 2011.5.30
版権 朝日新聞社



<自遊時間>
その1
googleで 「管 有能」という検索をすると、googleのもしかして機能によって
 もしかして 「管 無能」ではないですか?
というアナウンスが出るということを遅ればせながら知りました。


“宰相不幸社会”と言う言葉が流行ってもいるようです。
しかし、誰が代わりにという人が浮かんで来ないことこそが“宰相不幸社会”です。

偏った情報を流すマスコミにも気をつける必要がありそうです。


その2
以下、新聞記事の抜粋。

■北海道占冠(しむかっぷ)村のJR石勝(せきしょう)線・第1ニニウトンネルで特急「スーパーおおぞら14号」(6両編成)が脱線炎上した事故で、JR北海道の社内マニュアルでは、車両火災として実際に乗務員が炎を目視して初めて、「火災」と覚知することになっていることが分かった。

■同社によると、乗務員マニュアルである「異常時運転取扱手順書」などで、「火災発生の確認」は、運転席の火災ランプが点灯しても、乗務員が実際に炎を目視することを求めている。
同時に、乗客の安全を確保し、避難誘導するよう定めている。

■今回の事故では、27日午後9時56分、列車がトンネル内で緊急停車。
その後、運転席の火災ランプが点灯した。
4両目(3号車)にいた車掌(60)は、車内の煙がひどいため、午後10時7分、「降りてトンネルから避難した方が良い」と指令センターに連絡したが、指令は「トンネル内なので乗降ドアを開けたとしても煙が入ってくる。ドアを開けるのは待つように」と指示した。

■車掌は、札幌側のトンネル出口までの距離を確認するために降車し、運転士(26)は火災を確認しに列車を降りたが、煙で炎は確認できなかった。
列車に乗り合わせていたJR社員が同10時30分頃、「煙が充満しているが、火災は発生していない」と、同社指令センターに報告。この頃、乗客は次々と自主的に避難を開始し、乗務員も誘導した。

出典 YOMIURI ONLINE 2011.5.30
版権 読売新聞社

「煙で炎は確認できなかった」の段は笑い話にもなりません。
このニュースで誰しもが思い浮かべることがあります。
それは現場の判断より本部の指令が優先されることです。
原発の注水中断の中止」「乗客の自主的避難」。
「本部の指令の無視(?)」が事故の重大化を防ぎました。
もっとも福島原発については「事故の重大化」を防げたかどうかはわかりませんが。



他に
井蛙内科開業医/診療録(4)
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があります。