快眠のコツ

「眠り製作所」のネムリエに聞く快眠の現状とコツ

「眠り製作所」ブランドで機能性寝具を企画開発しているプレジール(本社:群馬県)の木榑(こぐれ)浩之さんにお会いした。
同社はさまざまな寝具を扱っているが、中でも空気で高さを調節できる枕の「レ・ムール ソフト」と、アーチ型の形状で両肩や腕までリラックスさせられる枕の「アーチピロー」シリーズが2大ヒット商品となっている。
また木榑さんは社内で「ネムリエ(=眠りのソムリエ)」の肩書きで活動し、うまく眠るためのノウハウを研究しているという。
快眠に関していろいろ伺ってみた。


――日本睡眠学会によれば、日本における睡眠障害の経済損失は、医療費を含まずに計算しても3兆5000億円という巨額だとか。この例のように、最近では眠りの重要性がビジネス界にも広く注目されてきたのではと思いますが、御社ではどうお感じですか。

「昨年の夏が暑くて非常に寝苦しかったこともあり、やっと昨年あたりから眠りの重要性や枕の問題が注目されてきた感じがあります。それまでは通販番組に持ち込んでも、『枕は動かないから(絵的に)つまらない』と言われてあまり受けなかったんですが(笑)。今では枕や睡眠への注目は勿論、上手に眠るための『快眠ホテル』というのもあちこちに出来ています」


――そういえば東京でも何カ所か見たことがあります。

「私は仕事柄もあり、年間で50~60泊、そういうホテルを選んで泊まってるんです。でも行ってみると『快眠』と謳ってはいても、いわゆるブランド枕、大手メーカーの寝具が入っているだけだったりして、あまり感心しないこともあります。そもそも快眠がなぜ大事かというと、人は別に寝るために生きてるわけじゃなくて、より良く生きていくため、次の日の英気を養うために気持ちよく寝たいわけです。だから高級寝具でもって『寝ている時の状態』だけを豪華にしてもあまり意味がない。それらと違いがあるとすると、我々は快眠セラピストの話なども聞きながら、『枕で作る楽しい眠り』を合言葉に、翌日が楽しくなるような眠りをどう作れるか考えているということです」


――その辺の御社のノウハウを実際に導入されるホテルが各地に増えているとか。
我々がホテルに提案しているプランは『癒されNight♪』というんですが、まず枕は主力の『レ・ムール ソフト』。当然『抱かれ枕』のアーチピローも提案します。
他に調湿敷マット、香りで眠りをサポートするアロマ装置、心地よい眠りをもたらすハーブティー、癒しの絵本、音楽などをトータルで提案しています。
なので、『癒されNight♪』プランを採用しているホテルならかなり満足して眠って戴けると思いますよ。事実、群馬の『水上館』で実施した宿泊客のアンケートによれば、レ・ムールシリーズの満足度は95%以上でした。
先日、出雲にも『合歓の旅籠 縁し座(ねむのはたご えにしぐら)』というホテルがオープンしたのですが、こちらも全室にレ・ムール ソフトを始め快眠アイテムを導入しています」


――このレ・ムールシリーズの枕ですが、中はどうなっていてどう使うんですか。
「皆さんも枕にバスタオルを入れたりして、気持ちよく眠れるように高さ調整していますよね。この枕は首を支える部分にエアバッグが入っていて、寝ながらポンプを手で押すことで寝具や体形に合わせてその部分の高さを変えられるんです。空気が入り過ぎたらボタンを押すと弁から空気が抜ける。そうやって高さを合わせて首と頭でうまく支えることで、頭だけで支える時に比べ体にかかる負担が減るんです。手のしびれや肩こりの大半は寝具から来るという研究もあり、実際にこの枕で肩こりが軽減されたという声も戴いています。共同開発してくれた整形外科の専門医の先生に聞きますと、首で支える枕を使うと、寝ている時の姿勢が人間の脊柱の理想的なS字カーブに近づくんだそうです。

でも、このエアバッグの開発には苦労しまして。中に入ってるのは小さい水枕みたいなものなんですが、普通に作るとどうやっても時間が経つうちに空気が少しずつ抜けてしまう。そこで救命胴衣のメーカーに依頼して、重さ500kgまで耐え得る空気の抜けないものを開発しました。弁も自社で金型を起こして。両サイドや頭が乗っかる部分はウール100%で、イギリスの希少な羊毛なんですが、これは通気性があるのと、洗濯できるのが喜ばれています」

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――通販サイトも運営していらっしゃいますが、どんな方が買われているんですか。

「まずは眠りの質を重視する人や、睡眠に関して悩んでいる人。枕で1万円以上というと高いと思う人もいるでしょう。でも、枕は長く使えるものですから日割りで計算すれば案外割安になりますし、それにより充実した毎日が送れるなら全然高くない、とおっしゃる方もいます。どうしても体に合わない場合は『30日間返品交換保証』の制度もあります。ただ、返金に至るケースは少ないですね。

それから最近ではアスリートにも注目されています。日本人選手が海外で弱いのは時差があり、良い眠りが取れていないからだという説があり、今では『快眠がパフォーマンスに結びつく』と知られてきたようです。

アスリートといえば、最近、サッカー日本代表長谷部誠選手のベストセラー『心を整える』を読んで、非常に感動しました(こちらにも関連記事あり)。彼は『大一番で力を発揮するにはどうしたらいいか?』と聞かれた時、『平穏に夜を過ごし、睡眠をしっかり取ることだ』と答えているんです。いい睡眠を取るためには、普段から『寝る前の1時間』に徹底的にこだわっているとのことでした。具体的には部屋の電気を消し、好きな音楽を聴き、アロマを嗅ぎ、耳栓をする……などで、勿論時差ボケもないそうです」


――さて、ネムリエである木榑さんご自身はどんな睡眠スタイルで生活を?

「私は今48歳ですが、睡眠は6時間のショート・スリーパーです。毎朝5時半に起きてますが、これは前の晩に寝るのが1時になっても2時になっても5時半と決めています。土日もほぼ同じです。人間には寝だめはできませんから」


――5時半起床とはすごいですね。

「いえ、今は朝4時に起きてフィットネスに行く『4時ラー』なんかも居ますから、そういう人に比べればまだまだ(笑)。もともとは娘が起きることもあって6時頃に起きていたんですが、朝時間の重要性に気付いて少しずつ早くなっていったんです。というのは、早朝は電話も社員も来ないので邪魔されずに仕事に集中でき、すごく効率がいいんですよ。朝の2時間は昼の4時間といいますが、あれは全くその通り。今は6時半には会社に入っており、職場で朝日を見たりしてますが、気持ちのいいものですよ。だから今、節電の影響で夏時間の議論がありますが、私は夏時間『積極』肯定派ですね」


――そのように短時間で気持ちの良い眠りを得るコツは?

「眠れないという人の何割かは、やはり精神的なものが原因だと思うんです。私ですら、考え過ぎで眠れないことはありました。でもある時ふと『寝てる間にアレコレ悩んでも、起きた時の現実は何も変わってないや』と気付いた。それからすっきり眠れるようになりましたね。後は、生活する上でストレスを貯め込まないことです」




<私的コメント>
不眠対策グッズがビジネスになるぐらいに現代人に不眠症が蔓延しています。
寝具を含めた寝る環境が不眠症の原因の人には一定の効果が期待出来るかも知れません。

原発処理に当っている作業員の寝る環境は、少しは改善されたかも知れませんが極めて劣悪なはずです。
それでも、この人達はぐっすり熟睡出来ているのではないでしょうか。
疲労が最大の睡眠対策かも知れません。

先日、当院へ受診した高齢の方のお話です。
患者さん「先生、最近夜12時頃に目が覚めてしまってその後、眠れないんです」
(なんだかちょっと変です)
私「ところで何時に寝るんですか?」
患者さん「7時頃です」

本人は真剣です。
診察室は笑いの渦でした。

たしかに節電にはとてもいいことですよね。
ただし、夜12時に起きてから電気をつけないというのが条件ですが。



他に
井蛙内科開業医/診療録(4)
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があります。