オリーブ油は体にいい?

オリーブ油の摂取で脳卒中リスクが低減

食事にオリーブ油を取り入れることによって、脳卒中リスクが低減することが新しい研究で示された。
研究の筆頭著者であるフランス、ボルドー大学のCecilia Samieri氏によると、理由は明らかではないが、オリーブ油の使用により健康に害のある飽和脂肪(saturated fat)の摂取量が減ることによる代替効果の可能性があるという。
また、「オリーブ油には抗炎症作用のあることが確認されているほか、オレイン酸ポリフェノールを含むオリーブ油自体の特性による効果も考えられる」と同氏は述べている。

米国心臓協会(AHA)によると、脳卒中は米国で死因の第3位となっている。
脳卒中は脳血管の出血また閉塞によって生じるもので、肉やバターなどの飽和脂肪を含む食品が原因となることがわかっている。
この研究は、医学誌「Neurology(神経学)」オンライン版に6月15日掲載された。

今回の研究では、65歳以上のフランス人7,625人がどのくらいオリーブ油を使用しているかに着目し、全く使用しない人(23%)、料理やドレッシングに適度に使用する人(40%)、積極的に使用する人(37%)に分類した。被験者は主にエクストラバージン・オリーブ油を使用しており、高血圧、運動、喫煙、飲酒などの危険因子(リスクファクター)について調整を行った。
約6年後、148件の脳卒中が発生。
最もよくオリーブ油を使用する群では、全く使用しない群に比べ脳卒中リスクが41%低く、全体の脳卒中発生率はオリーブ油を使用する人で1.5%、使用しない人で2.6%であった。

1,245人の血液中のオレイン酸値を測定した第2の標本では、27件の脳卒中が発生し、オレイン酸値の高かった群は脳卒中リスクが73%低かった。
しかし、オレイン酸値の高い人は、バターやガチョウ脂・アヒル脂の摂取量も高いという矛盾した結果も認められている。

米レノックス・ヒル病院(ニューヨーク)のHeather Davis氏は、オリーブ油が高カロリーである点を指摘し、低脂肪食を維持しながらどれほどの予防効果を得られるかについて、さらに研究を重ねる必要があるとしている。
「血液中のオレイン酸値の上限を明らかにし、最善の範囲を確立すべきだ」と同氏は述べている。
この研究は、フランス政府および産学連携機関である「Lipids for Industry, Safety and Health」の支援により実施された。

出典 Health Day News 2011.6.15
版権 Health Day

<私的コメント>
脳卒中発症に一番関係するのは血圧です。
しかし、この論文では一切血圧については触れていません。
そして脳卒中といっても脳出血脳梗塞では異なります。
それについても触れられていません。
普通に考えれば、オリーブ油は脳卒中よりも心筋梗塞発症に関連するものと考えられます。
どうして「脳卒中」なのでしょうか。

ご存知かと思いますが最近、糖尿病の薬のピオグリタゾン(商品名アクトス)による膀胱がんの発生頻度増加が話題になっています。
発端はフランスの研究でした。
フランスでは早速使用禁止になりました。
しかし、ヨーロッパや米国では冷静な対応をしています。
それは論文自体に問題があること、英文にされていない(英文誌に投稿されていない)ことなどによります。
ピオグリタゾンは日本で開発された薬剤ですが、厚労省は諸外国の動きを注視しています(注視しているだけです。
この、「世界の情勢に従う」というのは厚労省だけではありませんが。

フランスは医学においても独自の世界を持っています。
これはドイツでも同様かも知れませんが、英文医学誌への投稿が多くなく、日本のようには英文医学誌への投稿姿勢はないようです。
これらの国の論文を読む時には、そのあたりも考える必要がありそうです。




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