夏の運動、熱中症を防ぐには…

夏場でも運動を楽しむ人は多いが、猛暑の日は十分な注意が必要だ。
体調や水分補給に気を配らないと、熱中症で倒れてしまうこともある。
気温が30度を超えるような日は、激しい運動は控えたほうがいいという。
専門家は「油断せず、頑張りすぎないことが大事」と話している。

「夏場に運動する際、気温だけに注意すればいいと誤解している人が案外多い」。
国立スポーツ科学センター(東京都北区)スポーツ医学研究部で副主任研究員を務める小松裕さんは指摘する。

湿度や風も影響
熱中症には気温以外にも湿度や風速、直射日光などが影響する。
これらを総合的に評価する指標が湿球黒球温度(WBGT)。
日本体育協会熱中症予防運動指針として、WBGTが28~31度の場合は厳重警戒(激しい運動は中止)、31度以上になると運動は原則中止と定めている。

WBGTの計測器もあるが、一般には環境省日本気象協会熱中症関連サイトを参考にするといいだろう。
環境省の「熱中症予防情報サイト」には、各地のWBGTの1時間ごとの数値や翌々日までの予測値が公開されている。運動前にチェックするといい。

日本体育協会熱中症予防運動指針で、通常の気温による目安も示しており、31度以上で激しい運動は中止、35度以上で運動は原則中止としている。
気象庁の最高気温予想が30度程度でも、グラウンドなどでは、さらに気温が高くなることが多いので十分な注意が必要だ。

気温が35度、WBGTが31度を下回っていても、運動する場合はこまめな水分補給が欠かせない。
国立スポーツ科学センターの小松さんは「まず運動前に最低でもコップ1杯の水分を補給する。運動中はのどが渇いてから水分を取るのではなく、時間を決めて飲むことが大事」と話す。
15~20分ごとに水分補給の休憩を取ることで、体温の上昇を抑えられるという。

発汗によって失われた水分と塩分はスポーツドリンクや経口補水液で手軽に補うことができる。
ただ、スポーツドリンクは比較的糖分が多いので、飲み過ぎると食欲が落ちることもある。
薄めたり、お茶と交互に飲むなどしたほうがいいという。

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ゴルフも要注意
体調が悪い状態で運動すると、熱中症にもなりやすい。

小松さんが「特に注意したほうがいい」と指摘するのがゴルフ。
前日に深酒し、朝食も取らずにゴルフ場を歩き回り、昼間はビールで水分を補給した気になる――。
熱中症になる要素がそろっていて、気分が悪くなったり、倒れる人も多い」(小松さん)という。

ゴルフのほかに注意したいのが、発汗量が多くなるランニングだ。
市民ランナーの指導を行う特定非営利活動法人NPO法人)、あっとランナー(横浜市)の鈴木彰代表理事は「夏場は朝早くか夕方以降に、できれば日陰が多いコースを走ったほうがいい」と話す。

早朝にランニングする人は多いが、就寝中に汗をかいているため必ず走る前に水分を取り、“ガス欠状態”にならないようにバナナやパンなどを少しでも食べたほうがいいという。
早朝や夕方でも熱中症になる恐れはある。油断することなく息切れしない程度のペースで走り、体の変調を感じたらすぐにやめることが重要だ。

人気が高まっているランニングだが、鈴木さんは「夏場から新たにやり始めるのはお勧めできない。仮にほとんど運動していなかった人がやるなら、ウオーキングから始めたほうがいい」という。
熱中症は暑さへの慣れも関係しており、最初は軽い負荷で短時間の運動にとどめたほうがいいためだ。

種目としてのランニングだけでなく、野球などほかのスポーツの練習でもランニング中の熱中症の発生が多い。
小松さんは「運動するような元気な人が命を落とすこともあるのが熱中症の怖さ。夏場の運動はとにかく無理をしないように」と話している。

子どもは一斉に水飲ませて
部活動などで夏場も運動する子どもの場合、特に水分補給に注意したい。
水分補給の休憩時間を取っても先輩に遠慮したり、用具の片付けなどに時間を取られ、十分な水分が取れていないケースがあるためだ。

国立スポーツ科学センターの小松さんは「各自で飲ませるのではなく、全員を集めて一斉に水分補給させたほうがいい」と勧める。また、朝から飲まず食わずだと脱水症状になりやすい。朝から練習する場合は、朝ご飯を食べているかチェックしたほうがいいという。

運動部の合宿も要注意。特に暑さと運動量に体が慣れていない合宿初日に熱中症になるケースが多い。
気分が悪い子どもがいれば、涼しい場所で衣服をゆるめて寝かせ、水分を補給させる。
体力差がある子どもの場合は指導者が十分に配慮することが重要だ。

出典 日経新聞 2011.8.6
版権 日経新聞


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