腰痛 あきらめない(3)

麻薬系鎮痛薬も選択肢

強い鎮痛効果を持ち、主にがん患者に使われてきた麻薬系の薬(オピオイド)が、治りにくい腰痛などの慢性的な痛みにも使われるようになってきた。

東京都練馬区のAさん(71)は2011年9月末、持病の脊柱管狭さく症による足のしびれが強くなった。
近くのクリニックで鎮痛薬を処方してもらったが、症状は全く改善しなかった。
歩くのも難しくなり、東京医大病院(東京・西新宿)整形外科に入院した。

脊柱管狭さく症は、老化で背骨が変形し、脊柱管と呼ばれる神経の通り道が狭くなる。
足に延びる神経の根元が圧迫されて足腰に痛みやしびれが出る。

Aさんは歩行が困難なほど症状が重く、画像検査で狭さくの場所が明らかなことから、1か月後に手術をすることになったが、それまでの間、オピオイドで痛みを抑えることにした。

主治医で同科講師の遠藤健司さんによると、日本では従来、痛みを抑えるのに、アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬が第一に使われてきたが、長く使うと胃潰瘍などを起こしやすい。

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オピオイドは鎮痛効果が高く、初期の吐き気や眠気などを除けば、長期的には副作用も少ない。
10年から11年にかけ、新たに腰痛治療に保険で使える薬の種類が増えてきた。

Aさんはまず、軽度から中等度の痛みに適した弱いタイプの飲み薬「トラムセット配合錠」を使ったが、十分に痛みが抑えられなかった。
そこで、中等度から高度の痛みに適した強いタイプの「デュロテップMTパッチ」に切り替えた。
貼り薬で、皮膚から成分を少しずつ吸収し、一度貼ると3日間効果が続く。

貼り薬を続けているうち、しびれや痛みが治まり、Aさんは1か月ほどで何とか歩けるまでになった。
遠藤さんと相談し、予定していた手術はひとまず見合わせて、半年間は薬やリハビリで様子を見ることになった。

遠藤さんは「日本は海外に比べて麻薬系の薬への抵抗感が強いが、今後は、慢性腰痛の治療には、オピオイドも選択肢に入れるべきだ」と話す。

副作用防止のため、まず弱い薬から始めるなど使用法が定められており、処方する医師に対し注意が求められている。

情報プラス
新薬のうちアセトアミノフェンとの合剤である「トラムセット配合錠」は、法律(麻薬取締法)上の医療用麻薬には該当しない扱いとされています。

出典 YOMIURI ONLINE yomi.Dr. 2011.11.15
版権 読売新聞社