驚異の回復!腰の痛み

「腰の痛み」は日本人の8割が一度は経験するといわれています。
実は、ここに「国民的大誤解」があることがわかってきました。
それはなんと「腰痛の85%が原因不明」という事実です。
さらに、主犯と考えられていた椎間板ヘルニアさえ、犯人じゃない!?

NHKが取材を続けると、そんなナゾ多き痛みに、今50年に1度という大発見がありました。
それはなんと「脳」と「腰痛」の意外な関係。

「犬」を飼ったら直った!という意外な治療法や、飛び出したヘルニアを、自分で治しちゃう驚きの方法も。

主犯 椎間板が無罪!?

腰痛を起こす主犯と言えば、あの「椎間板ヘルニア」。
腰骨の間にある「椎間板」が飛び出して、神経を圧迫し、痛みやしびれを起こす症状です。
町のみなさんに尋ねても、半分の人たちがこの椎間板に原因があって、ひどければ手術!と信じていました。

ところが、これが国民的大誤解!
例えば、ヘルニアを切除して、神経の圧迫が無くなったのに、痛みが消えない人。
さらに、ヘルニアがあるのに痛みがない人が続々とみつかりました。
つまり、
「ヘルニアがある=痛い」とは限らず、今までの「ヘルニア犯人説」は必ずしも当てはまらないことが、明らかになってきたんです。

さらに、ヘルニアは、白血球の一種「マクロファージ」が食べて、多くの場合消えてしまうことも判明。
「ヘルニア手術」をした場合と、「手術以外の治療」をした場合を比較しても、2~10年で患者の回復満足度に差がないことも明らかになってきました。

つまり、ヘルニアが起きると、痛みを引き起こし、消えないから、手術するべき、という常識がひっくり返ったのです。

ただし、すぐに手術が必要なケースもあり
しびれやマヒがひどくなってきている場合
転びやすくなった場合
排尿障害がある場合
は、整形外科受診をお勧めします。
<私的コメント>
実はこの「整形外科受診」にも、私は少し偏見(?)を持っています。
それは無床診療所で毎日のように患者さんを通院させて行っている理学療法です。
治りが悪い場合には患者さんは、お医者さんに「毎日きちんと通わないから治らないんだ」と怒られたりします。
しかし、この理学療法
疾患によっては効果が医学的に十分実証されていないものもあります。
理学療法を「きちんとやる」整形外科の開業医は繁盛(?)するというわけです。
勿論、理学療法が有効の場合もあります。
しかし、きちんとした診断をされないまま「マッサージコース」に回される患者さんも数多くいます。
私は1年通院してよくなるような座骨神経痛などが時間的経過(日にちグスリ)と考えています。

犯人は「腰」じゃなくて「ストレス」?

犯人の筆頭と考えられていた「椎間板ヘルニア」も、犯人でないとすると、その他85%の原因不明な痛みの正体は何なのか?

今、研究者が注目しているのが「脳」と「腰痛」の意外な関係です。

様々な論文で、ストレスが高まると「腰痛」が増えることが指摘されていましたが、その理由は解明されていませんでした。

そこで、福島県立医科大学が、原因不明の腰痛患者の脳血流量を調べたところ、なんと7割の腰痛患者が、健康な人に比べて血流量、つまり脳の働きが低下していたのです。

アメリカのノースウエスタン大学がさらに詳しく調べると、活動が特に低下しているのは「側坐核(そくざかく)」という部分であることが分かってきました。

側坐核」は、痛み信号が脳に届くと、鎮痛物質を働かせる命令を出すと考えられています。
これによって、脳は大きな痛みを自動的におさえていたのです。

ところが、慢性的なストレスを受けると、側坐核の働きが低下。鎮痛物質に命令がいかないので、痛みがおさえられず、激痛を感じてしまうのです。

ストレスが痛みの原因を作るのではなく小さい痛みを強めて激痛を生み出すことが分かってきました。

ストレスが引き起こす痛みの悪循環!

この「ストレス」と「腰痛」の関係に注目して治療に取り組んでいるのが福島県立医科大学です。
原因不明の腰痛患者に、整形外科医だけでなく、精神科医社会福祉士など、様々な専門家がチームで治療に当たっています。

整形外科の紺野教授は、治療の決め手は「痛みの悪循環」を絶つことにあると考えています。

腰が痛い → 活動低下 → 家族・医師の不理解 → もっと痛い

こうした腰痛患者が陥りやすい一つ一つの要素がそれぞれ患者に大きなストレスとなり、脳の鎮痛システムが働かなくなるので、痛みが増加しているというのです。
この連鎖を断ち切ることで、脳が正常にはたらき、痛みが治まるといいます。

では、どうすれば痛みの悪循環を絶つことができるのでしょうか?

脳の鎮痛システムを回復させるのは「犬」?

そのヒントを教えてくれる人が、福島県立医科大学に通っている患者のAさん(62才・女性)です。
腰骨にはなんの異常もないのに、寝たきりになるほどの腰痛がありました。

現在は家事ができるまで回復したAさん。
きっかけは夫が子犬を買ってきたこと!

子犬にエサを与えたり、世話をしたりする中で、痛みを考えることが減り、活動量が増えたことで、痛みの悪循環から抜け出し、脳の鎮痛システムが再び働きだしたと考えられています。

誰にでもできる対策は・・・
鎮痛を司るとされる「側坐核(そくざかく)」は、快楽と強く関連する場所なので、自分の好きな食べ物や音楽、においなどを積極的に取り入れることで、働きがよくなり、鎮痛作用が高まるとされています。

腰が痛いから、家に閉じこもって痛みに耐えるのではなく、できるかぎり自分の好きなことをしたり、考えたりすることが、腰痛の治療になるという新常識です。

また、ストレスと腰痛の関係についてや、家で安静にしているよりも、ふだん通りの活動を続けるように住民にメディアを通じて広報したオーストラリアのビクトリア州で、腰痛患者が減少した例も紹介しました。

今回のお役立ち情報

腰痛の原因について
85%が原因不明と言われており、椎間板ヘルニアは5%程度、その他画像で診断できる圧迫骨折などが、9%程度、およそ1%が腫瘍など病状が深刻なものと言われています。
筋肉の コリ などは、明確に原因として特定できないため、85%にふくまれています。

ヘルニアと診断されたらどうすれば良いのか
自然に消滅する可能性があること、また手術してもしなくても、中長期的な患者の満足度は大きく変わらない事を考えた上で、手術するべきかどうか、医師と相談するのが良いのではないでしょうか?

手術が必要なことが多い症状
足のしびれや麻痺が、ひどくなってきている。
転びやすくなった。
尿がしにくい、もれやすいなどの、排尿障害がある。

こうした症状は、ヘルニアが神経を圧迫することで、神経障害がでているので、痛みがひどくなくても、のちのち後遺症が残る場合がありますので、はやめに整形外科を受診してください。

ストレスが関連する腰痛への対応策
ストレスが関連する腰痛は、ストレスが脳の鎮痛システムを働きにくくすることによって「痛みの悪循環」が起きており、激痛を生んでいると考えられています。

痛みが心配(ストレス)→運動不足(ストレス)→周囲に理解されない(ストレス)→脳の鎮痛作用が低下→さらに痛い

これを「断ち切る」にはどうすればよいか?
自分の好きな食べ物、絵、音楽、においなどを積極的に生活にとりいれることで、ストレスによって機能が落ちてしまっていた脳(側坐核・そくざかく)が活性化し、鎮痛効果が高まるとされています。
家で痛みに悩んで寝込んでいるよりも、すこしがんばって自分の好きなことをしてみることが効果的と言われています。
また、適度な運動も効果があると言われています



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