糖尿病防ぐ食事療法

ご飯は最後に 糖尿病防ぐ食事療法 野菜や魚を先

糖尿病の食事療法では、摂取カロリーの制限や栄養バランスが重視されがち。
最近の研究や調査から、それだけでは不十分なことが分かってきた。
血糖値を急激に高めないためには、食べ物の種類とともに食べる順番やかむ回数などの食べ方も大切だという。
医療現場ではこうした視点を取り入れた食事指導が広がる兆しをみせている。

簡単で継続できる
「とにかく簡単に実行できます。要は、野菜のおかずを先に食べ、ご飯を最後にするだけです」

梶山内科クリニック(京都市)の糖尿病専門医、梶山静夫院長はこう強調する。
約10年前から来院患者に食べる順番を決める食事療法を指導してきた。
進捗状況を2010年2月、日本糖尿病学会の機関誌で紹介すると、全国の専門医から「採用してみたい」と問い合わせが相次いだ。

現在広く利用されている食事療法は、患者にとって面倒なことが多い。
身長や体重、血糖値の状態などから1日当たりに摂取できるカロリー量の目安を1200キロ~1800キロカロリーと決め、食材ごとに決まっているカロリーを計算しながら献立を考える。
栄養士の指導を受けながら最初は目安にかなった食事ができても、次第におっくうになり続かなくなる。再び血糖値が上昇して診察を受けに来る患者が絶えないなか、梶山院長は「継続できる方法が一番」と考えるようになった。

野菜を多めに取る食事指導をヒントに、食べる順番に着目した。
最初に野菜やきのこ、海藻などのおかずを5分ぐらいかけて食べ切る。
続いて肉や魚、大豆などたんぱく質のおかずに移り、最後にご飯やパン、麺類などの炭水化物をとる。
大阪府立大学の今井佐恵子教授と共同で、この食事療法が食後血糖値や血糖値調整ホルモンであるインスリンの分泌量にどんな効果をもたらすのかを調べてきた。

わかった利点は二つ。
一つは、カロリー量が同じでも野菜を先に食べるだけで、炭水化物を先に食べる場合より血糖値の上昇を抑えられ、インスリンの分泌量が少なくて済む点だ。
野菜に含まれる食物繊維が、炭水化物の分解を緩やかにし小腸からの糖の吸収を遅らせているとみている。

もう一つは、継続しやすく効果も持続する点だ。
カロリー制限中心の食事療法は、1年継続できる患者は約3割にとどまったが、食べる順番を変える療法では98%の患者が1年継続できた。
さらに94%の患者が2年継続し、その93%の人に血糖値の改善効果が確認できた。

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野菜の目標摂取量は1日当たり約400グラム。
今井教授は「朝昼晩に分けて食べれば決して難しくない」と話す。
糖尿病対策の思い切った方法で、他の医療施設でも同じような効果を出せるのか検証はいる。
梶山院長は「血糖値の変動を健康な人に近づける有望な療法になる」と展望する。


インスリン量減る
ライオン歯科衛生研究所の武井典子・研究部副主席は「よくかんで食べると、インスリンの分泌量を抑えるのにつながる」と唱える。

健康な男性9人に、1個100グラムのおにぎりを満腹になるまで食べてもらう実験をした。
メトロノームに合わせて一口50回かんで食べる場合と、いつも通りにかむ場合とで食後の血糖値とインスリンの分泌量を比べた。
食後の血糖値の変化は、2つの食べ方に違いはなかったが、インスリン分泌量はメトロノームに合わせて食べた方が少なくなった。

一口50回かむことで、食事時間が平均35分と通常より15分以上伸び、食事量も平均528グラムと165グラム減った。
「早く満腹感が得られ、糖の総摂取量が減った効果」(武井副主席)と分析している。

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回数を数えながらの食事は味気ない。
武井副主席は「よくかんで食べるための10カ条」を作り、「実行しやすいものを習慣付ければいい」と付け加える。

インスリンを作る膵臓のベータ細胞は、急激な分泌を繰り返す食生活によって機能が衰え、年齢と共に分泌量も減る。
糖尿病の発症を抑えるには血糖値を管理してベータ細胞の働きを維持する必要がある。

これまではカロリー摂取量に注目した食事制限が中心だったが、それだけでは効果が限定的との見方が専門家の間で増えている。
食べ方の重要性は重みを増しているが、まだ客観的に評価できる根拠あるデータが少ない。
継続的な調査と研究が望まれる。 (編集委員 永田好生)


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