身近な薬の重い副作用

6月15日朝、NHKの「あさイチ」で「身近な薬の重い副作用」というテーマで薬害がとりあげられました。
市販の風邪薬を服用して副作用が出現し、重い後遺症が残ったというケースが紹介されました。
こういった副作用はごく稀ですが「クスリはリスク」という考えは、処方する医師も服薬する患者さんも常に忘れてはなりません。

 * * *

かぜ薬などの身近な薬にも重い副作用があります。
スティーブンス・ジョンソン症候群、通称SJSという副作用です。
(発生頻度は100万人当たり年間1~6人ときわめて少ない)
薬に対して免疫が過剰に反応する事で、皮膚やのどがただれ、最悪の場合ごくまれにですが死に至る事もあります。
初期症状としては、
1.高熱が出る
2.体の粘膜(口やのど、肛門など)がはれる・ただれる、
3.皮膚の広い範囲が赤くなる、
といったものがあります。

どういった仕組みで発症し、どうすれば発症しないのか、といった詳しい事はまだよくわかっていませんが、発症時にいち早く対処すれば後遺症が残らないケースも多いと考えられています。
厚生労働省が作成したガイドライン患者会の活動をインターネット上で確認することもできます。

■SJSの対策について 
厚生労働省が作成した対応マニュアル>
ホームページ:http://www.info.pmda.go.jp/juutoku/file/jfm0611005_01.pdf

■副作用としてSJSを引き起こす医薬品の種類について
厚生労働省が出している対応マニュアルには以下のとおり記されています。

推定原因医薬品は、抗生物質、解熱消炎鎮痛薬、抗てんかん薬、痛風治療薬、サルファ剤、消化性潰瘍薬、催眠鎮静薬・抗不安薬、精神神経用薬、緑内障治療薬、筋弛緩薬、高血圧治療薬など広範囲にわたり、その他の医薬品によっても発生する事が報告されています。

市販されている医薬品については、発症の可能性がある場合、同梱されている「使用上の注意」に記されています。

出典
NHKあさイチ 2012.6.15放送 「身近な薬の重い副作用」
http://www.nhk.or.jp/asaichi/2012/06/15/01.html
版権 日本放送協会


以下は新聞記事からです。

風邪薬で副作用死:皮膚疾患が悪化 2年半で131人死亡
風邪薬などの副作用で起きる皮膚疾患「スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)」と、その症状が悪化した中毒性表皮壊死症で、今年1月までの2年半に全国で131人が死亡したことが厚生労働省のまとめで分かった。
SJSは10年以上前に問題化。
厚労省は10年9月、製薬業界に対し、一部医薬品の添付文書に副作用として追記するよう求めたが、発症メカニズムは未解明で依然として被害は深刻なままだ。
同省は「初期症状が疑われたら、早期に受診を」と改めて注意を呼び掛けている。

厚労省の集計によると、09年8月~今年1月、製薬会社などから報告があったSJSと中毒性表皮壊死症の副作用被害は1505人で、うち8.7%の131人が死亡。
前回集計(05年10月~09年7月分)では2370人中239人が死亡していた。

出典 毎日新聞 2012.5.28
版権 毎日新聞社


<関連サイト>
スティーブンス・ジョンソン症候群
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%B3%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4
■皮膚や粘膜の過敏症である多型紅斑の一種。
皮膚粘膜眼症候群ともいう。
生命に危険が及ぶ。
■原因はウイルスの感染、薬剤の副作用、悪性腫瘍、または原因不明な場合がある。
副作用の場合はペニシリン系・セフェム系抗生物質セフジニルやゾニサミド、カルバマゼピンフェノバルビタールといった抗てんかん薬または非ステロイド性抗炎症薬、その他原因となる薬物は1100種類以上あるという。
■紅斑、水疱、糜爛が皮膚や粘膜の大部分の部位に広く現われることに加え、高熱や悪心を伴う。
また、皮膚や粘膜だけではなく目にも症状が現れ、失明することもあり、治癒後も目に後遺症が残りうる。
致死率は患部が体表の10%未満の場合なら5%。






<きょうの一曲>
Andre Rieu - Wiener Blut 2002
http://www.youtube.com/watch?v=MeENyTf1mbc



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