ぎっくり腰

ぎっくり腰 腹筋・背筋を鍛えて少しでも予防

 先日、急に腰が痛くなり、動けなくなりました。立っても座っても痛みは変わらず、くしゃみをする度にさらに激痛が……。わたしの場合は、2週間で痛みが消えましたが、深刻な病気が潜んでいることはないのでしょうか。

 骨折や病気など、特別な原因がないのに、急に腰が痛くなるのが、ぎっくり腰。腰をひねったり反ったり、かがんだりする動作や、同じ姿勢で、長時間過ごすなどした後になりやすい。筋肉や筋膜、靱帯(じんたい)が、ねんざや筋違いを起こしている状態だ。

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 痛みの原因は、背骨を中心にした組織以外に背中側にある臓器の病気が関係することもある。日本医科大学付属病院整形外科の宮本雅史准教授は「1週間ほど安静にしても、痛みが減らなかったり悪化したりしたら、整形外科の専門医を受診した方がいい」と話す。

 急に腰が痛くなった時、ささいなきっかけだったとしても、取るに足らないものとは限らない。

 がんの治療やステロイド薬での治療を長く受けていたり、栄養不足だったりすると、骨がもろくなっていることがある。その場合、ふとんの上げ下ろしなどちょっとした動作でも骨折しやすい。以前にがんを経験していたら、腰椎(よう・つい)に転移している可能性もある。発熱があれば背骨が菌に感染し炎症を起こしていることも考えられる。

 下半身の感覚がなくなったり、歩けなくなったりした場合は、神経が通る管が圧迫されて狭くなる「脊柱(せきちゅう)管狭窄(きょうさく)症」や、椎間板(ついかんばん)ヘルニアなどの病気が考えられる。MRI検査を受けた方がいい。

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 ぎっくり腰の確実な予防法はない。だから、せめてぎっくり腰になりにくく、なっても痛みを長引かせないようにしたい。普段からできることはないだろうか。

 福島県立医科大の矢吹省司教授(整形外科)は「まず、ウオーキングをお勧めします」と言う。

 普段より少し大股で、腕を大きめに振り、汗ばむくらい歩く。涼しい時なら20分ほど、暑い日なら5分でもいい。

 ストレッチや腹筋と背筋の強化も有効だという。ストレッチは、仰向けに寝た状態でひざを抱え、背中を伸ばしたり、腹ばいになって上半身を起こし、おなかを伸ばしたりする。10~20回が目安だ。

 腹筋は、ひざを立てて仰向けになり、おへそを見るようにして、五つ数えよう。体は起こしきらなくていい。背筋は、おなかに座布団を挟んで腹ばいになり、あごを浮かす感じで軽く反らす。こちらは、5~10回ずつが目安だ。

 いすに座ったまま、背もたれに寄りかかる手前の姿勢で止めたり、背もたれを背中で押したりして、腹筋と背筋を鍛える方法も。主としてお年寄り向けではあるが、会議中にこっそりやるのもお勧めだ。(下司佳代子)

■相談ナビ

「腰痛、肩こり、手足のしびれ」(NHK出版)は、背骨がかかわる痛みの対処法や治療の仕方を解説。今秋には、日本整形外科学会と日本腰痛学会が共同で監修した「腰痛診療ガイドライン」が刊行される予定で、「患者にも参考になる内容になっている」(矢吹さん)という。

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出典 朝日新聞・apital 2012.8.9
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