がん治療の標的遺伝子スピード特定

転移や薬剤耐性などに関する遺伝子が分かれば創薬の糸口になる。
従来は遺伝子を1つずつ実験で調べて働きを解明するのが一般的だった。
このため膨大な時間がかかっていたが、スーパーコンピューターを使えばはるかに早く解析出来るという。
今回の記事では3カ月で計算出来た。
しかし、理化学研究所スパコン「京」を活用できれば、計算時間は1時間ですむという。


東大、がん治療の標的遺伝子スピード特定 治療薬開発効率化


東京大学医科学研究所の宮野悟教授らはスーパーコンピューターを使い、がん治療の標的となりそうな遺伝子を効率よく探し出す手法を開発した。
この手法を生かして3カ月で、がん転移にかかわるとみられる遺伝子を新たに10種類見つけた。
従来は数年かけて1種類の遺伝子を特定する例が多かった。
抗がん剤の開発スピード向上につながると期待している。

■経済学やマーケティングなどで使う因果関係を調べる統計手法を遺伝子解析に応用した。
遺伝子は影響しあっている。
ある遺伝子がつくったたんぱく質は、他の遺伝子がつくるたんぱく質の量を左右する。
たんぱく質量に関わる大量のデータから相互の関係をスパコンで予測し、がんの性質にかかわる遺伝子候補を短時間で見つける。

■実験では700種類のがん細胞で働く1万種類以上の遺伝子をスパコンで調べた。
がん転移にかかわるとみられる遺伝子が24種類特定できた。
このうち14個はすでに転移関連遺伝子だと知られており、新手法が有効だと確かめられた。


関連サイト
京 (スーパーコンピュータ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/京_(スーパーコンピュータ)

スーパーコンピュータ京|独立行政法人理化学研究所 計算科学研究所
http://www.aics.riken.jp/

国が、スパコン京を活用した新技術確立 東京五輪見据え国土強靱化に
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130929/biz13092911090002-n2.htm
■速道路やトンネル、橋梁(きょうりょう)などの耐用年数をスーパーコンピューター「京(けい)」(神戸市)を活用して正確に割り出す新技術を文部科学省国土交通省が中心となって官民学連携で開発する。
■今回確立を目指す新技術では、毎秒1京回(京は1兆の1万倍)以上という計算速度を誇る理化学研究所「京」を利用する。
■橋梁やトンネルなどを肉眼や通常のカメラでは見えない構造物の原子の「色」を撮れる赤外線カメラで撮影。
そのデータを京で処理すれば、金属素材の原子間の隙間の大きさなどが判明、金属疲労や腐食の程度を数値化することができ、それを基に耐用年数を算出するという。

出典 日経新聞・朝刊 2013.10.2
版権 日経新聞


参考
【京】 理化学研究所(神戸市)に設置されているスーパーコンピューターの愛称。
平成18年に国の主導で開発が始まり、24年9月から稼働。約100個の中央演算処理装置(CPU)を内蔵した冷蔵庫ほどの大きさの計算機864台をネットワークでつなぎ、複雑な計算を分担しながら並列処理する仕組みになっている。
現在、計算速度は国内1位で、世界では4位。
<私的コメント>
結局、日本に一台だけ神戸にあるということでしょうか?

動き出した世界最高級の頭脳~スパコン「京」の今
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK27018_X20C13A2000000/
■CPU同士を結びつける約20万本のケーブルを1本につなげれば、東京から博多までの距離(約1000キロメートル)に相当する。
■ 一般利用は全体の30%で、企業が京を活用できる産業利用枠は同5%。
割り当てはノード(CPUの数)×時間で計算する。
1ノード時間当たり12.68円を支払う「有償利用」と、無償だが成果の公開義務がある「一般利用」に分かれている。
■京は東大、京大や情報学研究所(東京・千代田)など国内研究機関をつなぐ超高速ネットワークでつながっており、企業は自社内からインターネット経由で京にアクセスできる。
また高度情報科学技術研究機構(東京・品川)と高度計算科学研究支援センター(神戸市)の2カ所に京のアクセスポイントを設置。

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