難易度高い食道がん手術

年間約2万人が罹患し、1万人以上が亡くなっている食道がん
食道は体の中心部にあり、肺や心臓、大動脈などに囲まれているため、外科手術の中でも難しい。日患者の負担が少ない手術法も増えているほか、抗がん剤放射線を組み合わせた効果的な治療法も広がっている。

■食道は喉と胃の間をつなぐ長さ25センチ、太さ2、3センチの管状の単純な臓器。
しかし上部は気管と背骨の間にあり、下部は心臓と大動脈、肺など主要な臓器に囲まれている。
発声や飲み込む機能に関係する神経なども集まる。
手術の際には他の臓器などを傷つけかねない恐怖感にさらされながら手術をしなければならない。

患者の体力考慮
■手術するかどうかは、がんの進行度と患者の体の状態で判断する。
食事の際に胸の辺りがしみたり、異物感を覚えるような早期がんの場合、食道の周囲を覆うリンパ節への転移がなく食道の粘膜内にとどまっていることが多く、口から内視鏡を入れて切除することができる。
胸のつかえ感や喉の通りの悪さを感じるなど、ある程度がんが大きな場合、食道の切除手術をし、胃をのどまで持ち上げるなどして食道を再建する方法をとる。
胸や腹部の広範囲を切開する手術の場合は「患者の体力が手術に耐えられるかということも条件の一つになる。

■術前のコンピューター断層撮影装置(CT)などによる画像診断では分からない小さながんをたたくだけでなく、がんを小さくしたり増殖を抑えたりすることができることから手術前に抗がん剤を投与することが多いのも特徴。
手術が難しいだけに、可能な治療法は全て取り入れることが求められる。
<私的コメント>
当院で見つかった食道の進行がんの方も術前の化学療法で腫瘍が見事に縮小し手術も成功した方がみえます。


転移、正確に診断
■食道は周囲をリンパ管で覆われているため、がんが転移することが多い。
術後の状態をよりよくするためには手術前の診断でがんがどこまで進行しているか、リンパ節への転移があるかなど正確な診断をすることに神経をつかうことが重要となる。

抗がん剤放射線を組み合わせた治療法は化学放射線療法と呼ばれる。
食道がんでは通常、放射線と2種類の抗がん剤を併用し、2カ月程度かけて治療する。
化学放射線療法は食道を温存しながらステージによっては手術に劣らない成績であり、選択する意義は大きいと専門医は言う。


患部を拡大視 患者負担軽く 胸腔・腹腔鏡手術 広がる
■胸や腹に5~6カ所の穴を開けて胸腔鏡や腹腔鏡を入れて電気メスなどで切除する手術が増えている。手術時間が長いことや高度な技術を必要とすることから、一部の医療機関でしか行われてこなかった。
しかし、手術方法の教育が進むなどしたため、全国の食道がん手術を行う施設のうち、半数程度にこの手術方法が広がっている。
胸腔鏡などを用いた手術は、開胸・開腹手術と比べて1~2時間ほど手術時間が長くかかる。
術後の痛みが少ないなど、翌日から歩行もできるなど患者の負担は軽いメリットがある。
胸腔鏡などを使うことで、これまで肉眼では見ることのできなかった食道付近の血管など細かな部分を拡大視できるというメリットもある。