まず、汗をかく能力が衰えていることがある。若い頃と比べて汗腺の数自体が減り、機能も落ちているという。また、筋肉が減り、発汗効率が悪い脂肪の割合が増えている。
加えて細胞内の水分量も減っている。このため若い人より脱水症状になりやすいという。
体の異常に気づきにくいということもある。気温の変化やのどの渇きを感じる感覚が鈍っており、体温調節や水分補給をするのも遅れがちになるのだ。
高橋さんは「『暑い』とか『のどが渇いた』とか、自分の感覚だけを頼りにしないことが大切です」と説く。天気予報をチェックし、温度計を見やすい所に置いておく。窓を開け、こまめに水分をとることを心がける。窓を開けても涼しくならない時は、我慢せずにクーラーを使うことも必要だ。
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梅雨時は湿度の高さがやっかいだ。かいた汗が蒸発せず、体温調節が難しくなるのだ。横浜国立大学の田中英登教授(環境生理学)は「7月は気温30度以上で熱中症が増え始めるが、6月は26~27度でも起きている」と指摘する。その程度の気温では起きないと思い込んでいることも対応を遅らせるという。
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だからと言って怖がってばかりいる必要はない。5、6月は夏本番に備えて体を慣らす絶好の時期でもある。暑さに体を慣らすことを「暑熱順化」と言う。うまく順化できれば血液量が増える。汗の量が増え、より低い体温で汗をかき始めるようになる。その結果、体温を調整する機能が改善されるという。
難しいことはない。それほど暑くない日や時間帯を選び、ウオーキングや軽いジョギングなど軽く汗ばむくらいの運動を30分程度続けてみる。体力がない人なら、半身浴などで汗をかくだけでも効果があるという。
田中教授は「暑さに慣れるのに、高齢者は2週間から1カ月かかるとみておくとよい。今なら猛暑の季節に間に合います」と話している。(立松真文)
<屋内でも> 熱中症は炎天下の屋外で起きるイメージが強いが、実際は屋内での発症も多い。東京消防庁の統計では、2013年6~9月に熱中症の救急要請があった場所は「住宅など居住場所」が全体の40%を占め、最も多かった。これに「道路・交通施設」24%、「公園・遊園地・運動場など」9%が続いた。
<暑さ指数> 熱中症の危険度を示す「暑さ指数」(WBGT)という目安がある。気温だけでなく、湿度、日射、建物や地面からの熱も考慮してはじき出した指数だ。環境省は「熱中症予防情報サイト」(http://www.wbgt.env.go.jp/)で5月から10月まで、全国840地点の1時間ごとの値を公表している。
◇「くらしの扉」は毎週月曜日に掲載します。次回は「台所の衛生管理」の予定です。ご意見、ご要望はseikatsu@asahi.comへ。