「骨の鉄筋」 コラーゲン

「骨の鉄筋」 コラーゲン守り、骨折を防ぐ

骨粗しょう症と聞くと、骨がスカスカになり骨折しやすくなる高齢女性の病気を想像する人が多いかもしれない。
ところが、「骨密度(骨量)」は高いのに骨折しやすい人がいることや、男性もなることが分かってきた。骨量に加えて大切なのが「骨質」だ。
若いうちから骨を強くする食事や運動を取り入れてほしい。

骨粗しょう症は、骨の強度が低下し、ちょっとした転倒でも骨折しやすくなる病気だ。
太ももの大腿骨が折れると痛くて歩くのも難しくなるが、実は気づかないうちに背骨がつぶれる圧迫骨折を起こすこともある。
若い頃より身長が2センチメートル以上縮んだ人の約半数に骨折が見つかると言われるが、痛みを感じず発見が遅れることも多い。

■要介護の原因に
国内の骨粗しょう症の患者数は約1280万人とみられる。
要介護になり、自立した生活をおくれる健康寿命を縮めるリスクが高まる。
それでも治療を受けていない人や継続しない人が多い。
 
骨は生まれてから生涯を通じて新陳代謝を繰り返すことが知られる。
破骨細胞と呼ぶ細胞が古い骨を壊し(骨吸収)、骨芽細胞が新しく作る(骨形成)のを繰り返す。
骨吸収が骨形成を上回ると、骨がスカスカになる。
 
骨の強さを決める要素は骨量と骨質の2つ。
鉄筋コンクリートの建物に例えるなら、骨量がコンクリートで骨質が鉄筋と言われる。
骨量は主にカルシウムの量で決まる。
保健所などで一定の年齢になると受ける骨密度検査はこの骨量を測る。

ただ、近年は骨質も注目されるようになってきた。
骨密度は低くないのに骨折しやすいケースがある。
これには骨質が影響している授。
 
骨質とは主にたんぱく質の一種のコラーゲンの質のことを言う。
コラーゲンは本来、柔軟性があるが「体内の酸化や糖化によって劣化すると硬くもろくなる。
加齢や睡眠不足、暴飲暴食など良くない生活習慣が続くと、細胞を傷つける活性酸素が増える。
さらに終末糖化産物と呼ぶ物質が増え、コラーゲンにべたべたつき、しなやかな構造を壊してしまう。

■しなやかさ保つ
強い骨にするには、骨量を増やしつつ、質を良くして、かたさとしなやかさとを備えた骨にする必要がある。
 
骨量を増やすには栄養素を考えた食事が先決。
カルシウムは大人で1日800~1000ミリグラム欲しい。
日本人の1日あたりの摂取量は500ミリグラム程度にとどまる。
吸収率が良い牛乳や乳製品などだととりやすい。
 
カルシウムの吸収に必須なのがビタミンD。
サケやイワシなど青魚に多い。
ビタミンDは、日光に当たると皮膚でも合成される。
地域や季節にもよるが、手のひら程度の面積を1日15分程度でも効果は期待できるという。
カルシウムが骨にたまるのを促すために納豆や海藻に多いビタミンKも欠かせない。

骨質を上げるには、生活習慣病の治療や改善、予防が肝心だ。
また抗酸化作用のあるビタミンC、骨のコラーゲンが劣化するのを防ぐビタミンB6やB12、葉酸などを積極的にとると良い。
 
運動も、骨量を高め、骨質をよくするのに欠かせない。
振動が骨細胞を刺激して骨が作られるよう促し、その過程で良質のコラーゲンも作られる。
特に骨に重みがかかり、筋力がつく運動がおすすめだという。
中高年にはウオーキングやヨガ、太極拳などが腰や膝を痛めにくく、骨にも負荷をかけられる。
 
骨は一生生まれ変わるが、骨量のピークは18~20歳と言われる。
10代に積極的に「骨貯金」をしてピーク値を高めておくといい。
過度のダイエットは論外で、栄養のある食事と運動が効果的だ。
ただし月経不順になるほどの激しい運動は避けたい。
女性ホルモンが減り、一気に量、質ともに悪化するためだ。
 
大腿骨は30歳ごろから、背骨は45歳ごろから骨量が減りだす。
50歳ごろ閉経で女性ホルモンが減ると加速し、転倒で手首を折る人も増える。
40歳からは自治体の検診を利用して骨密度を測ろう。
骨質は検診では測れないが、糖尿病など生活習慣病やその予備軍の人は、骨質の劣化が進んでいるかもしれないと自覚し、注意をした方がよい。

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骨粗しょう症、男性もご用心
骨粗しょう症と推定される患者数1280万人のうち、300万人は男性だ。
確かに高齢男性でも背中が丸まった人を見かけることがある。
女性の病気と侮らず、20%強は男性だということを認識してほしい。
男性は、女性に比べて受診率が低いのも課題だ。
 
男性は、不摂生な生活が影響して体内の酸化や糖化が進み、骨質が問題になることが多い。
糖尿病、CKD(慢性腎臓病)、COPD慢性閉塞性肺疾患)といった病気に関連して起きる。
多発性骨折など重症になりがちだという。
男性も骨を強くするよう意識しよう。

出典
日経新聞・朝刊 2015.4.25(一部改変)