「加工肉に発がん性」評価見極めて

日本人 摂取少なめ「極端な制限必要ない」

「ソーセージなどの加工肉は、人にとって発がん性がある」という評価を国際がん研究機関(IARC)が10月、発表した。
いつも口にする食べ物だけにショッキングに響きますが、その評価の中身をよく見る必要があります。
 
5段階分類、「リスクの高さ」と別
IARCは世界保健機関(WHO)の組織で、がんの原因となる物質や環境要因、生活習慣などを特定し、科学的根拠の強さを評価して5段階に分類している。
人々の暮らしに関係するさまざまな要因を扱っており、これまでアルコール飲料や喫煙、副流煙ディーゼルエンジンの排ガスなどを評価してきた。
 
今回対象にしたのは、ハムや、ソーセージ、コンビーフといった「加工肉」と、牛、豚、羊、ヤギなどの「赤肉」の二つ。
赤肉は脂肪分の少ない「赤身肉」のことではなく、哺乳類の肉を指す。
鶏肉や魚介類は対象外だ。
 
発表によると、加工肉は「人に対して発がん性があり、消費は大腸がんの原因になる」と結論づけ、根拠の強さで一番上の「グループ1」に分類した。
加工肉を毎日50グラム食べると、大腸がんになるリスクが18%増えると指摘した。
 
赤肉は「人に対して恐らく発がん性がある」として、根拠の強さが2番目の「グループ2A」に分類した。
主に大腸がんとの関連を認め、「膵臓がんと前立腺がんとの関連も見られる」とした。
 
今回、赤肉と加工肉を取り上げたのは、大量消費とがんになるリスク増加との関連を統計的に示唆する疫学調査の結果があることや、途上国で肉の消費量が増えているためという。世界の800件以上の研究をもとに評価した。
 
注意が必要なのは、この分類は「発がん性があると判断できる科学的な根拠の確からしさ」によるもので、「リスクの高さ」のランクづけではないということだ。
つまり、がんになる確率の高さを示しているわけではない。
 
加工肉が分類された「グループ1」には「喫煙」や「アスベスト」も入っているが、IARCは「加工肉が同じように危険なわけではない」と説明する。
がんによる死者数に関する研究機関の推計を引用し、加工肉が多い食事が原因と考えられるケースは世界で1年に3万4千人で、これに対し喫煙は100万人、アルコール消費は60万人を数えることも示している。
 
また、「肉を食べない方がよい」と言っているわけではない。
肉に栄養があることを認めつつ、WHOなどのガイドラインが、大腸がんや心臓血管系の疾患、肥満を防ぐために加工肉や肉の摂取を控えめにするよう推奨していることを紹介している。
 
調和とれた食事・節酒を
加工肉や赤肉と発がんの関連が指摘されたのはこれが初めてではない。
世界がん研究基金と米国がん研究機構の2007年の報告書では、大腸がんのリスクを上げることが「確定的」と判定された。
赤肉は調理後の重さで週500グラム以内、加工肉はできるだけ控えるように勧告している。
 
日本人では一般的に、食べる量はこれほど多くない。
13年の国民健康・栄養調査によると、赤肉は1日あたり約50グラム、加工肉は約13グラムだった。
国立がん研究センターによると、最も食べる量が少ない国の一つだという。
 
どんな生活習慣ががんのリスクを上げるのか。
日本人を対象にした研究をもとに、同センターの研究班が評価している。
 
がんの部位別に、リスクを上げることが「確実」「ほぼ確実」「可能性あり」「データ不十分」の4段階に分類した。
赤肉・加工肉と大腸がんの関連は「可能性あり」で、海外より弱い位置づけだ。
これは日本人の摂取量が少ないことが影響していると考えられる。
 
食関連では飲酒が「確実」の項目が多い。
食事要因でがんとの関わりがはっきりしているものは少なく、ほとんどが「データ不十分」とされている。
 
国立がん研究センターはこうした評価結果をもとに、いま推奨できる「日本人のためのがん予防法」を示している。
http://ganjoho.jp/public/pre_scr/prevention/evidence_based.html

食事はバランスよくとることと、酒を飲むなら節度のある飲酒をすること。
食塩の摂取を最小限にし、野菜や果物不足にならず、飲食物を熱い状態でとらないことを勧めている。
 
赤肉はたんぱく質やビタミンB、鉄など健康維持に有用な成分も多く含む。
同センターは「総合的にみてもIARCの評価を受けて極端に肉の量を制限する必要性はない。
まずは『日本人のためのがん予防法』で定められた健康習慣全般に気を配ることが大切」という見解を発表している。


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出典
朝日新聞・朝刊 2015.11.11



私的コメント
WHOは加工肉の具体例として「ホットドッグ(フランクフルト)、ハム、ソーセージ、コーンビーフビーフジャーキー」を挙げています。
この加工肉といえばソーセージ。
ソーセージがソウルフードのドイツ人に大腸がんの発生が多ければ納得のいく話ですが。調べた範囲では見つかりませんでした。
実は、大腸がん発生率世界一は隣国の韓国だそうです。
大腸がんは食文化と生活習慣が直接的に関連する代表的ながんです。
隣国から学ぶ(?)ことも必要に思われます。