ノロウイルス

ノロウイルス 遺伝子解析急ぐ  大流行を機に いずれはワクチンも

毎年、秋から冬にかけて多くの人がノロウイルスによる下痢や嘔吐に苦しむ。
その特徴はよく分かっていなかったが、近年の大流行を機に遺伝子(ゲノム)の解析が進んでいる。
将来、大流行を予測できたりワクチン開発が実現したりすると期待される。
 
東京都武蔵村山市にある国立感染症研究所の病原体ゲノム解析研究センター。
ここで、ノロウイルスの遺伝子解析が進む。

大々的な遺伝子解析は始まったばかりだが、いずれは大流行を予測できるようになると期待される。
流行しそうなウイルスの遺伝子タイプを予測できれば、事前にワクチンを作るなど予防に生かせる。

突然変異で強化
2006年末から2007年初めに大流行した際の患者の便を55例集めて解析したところ、ほぼすべて同じタイプであることが分かった。
2006年に欧米や香港で流行したタイプと遺伝子の99%以上が一致した。
2005年以前に流行していたタイプとは異なるため、突然変異した可能性がある。
 
遺伝子が変化していたのは、ウイルスの最も外側にあるたんぱく質に関連する部分。
ウイルスの外側の形状は人に感染する上で重要な働きをするため、感染力が増した公
算が大きい。
 
しかし、実際にウイルスを使って確かめることはできない。
人に感染するノロウイルスは動物には感染せず、実験できないためだ。
これがノロウイルス研究を難しくしている。
 
ノロウイルスは下痢や嘔吐を伴う感染性胃腸炎を引き起こす。
1968年に米オハイオ州ノーウオークの小学校で発生した集団食中毒で初めて報
告された。
 
10―100個で感染
ノロウイルスの感染力は高く、10~100個が口から入ると感染するとの研究もあるほどだ。
 
直径は38ナノ(ナノは10億分の1)と非常に小さく、感染者の排せつ物1ミリリットル中に10億個以上も含まれている。
感染者が嘔吐したり、排せつしたりするときに飛び散る目に見えない水滴が空気中に飛び散り、感染を広めていると考えられている。
 
遺伝子解析が進めば、いずれ予防のためのワクチンが登場するだろう。
ただ、まだしばらく時間がかかる。

感染防止のためには手洗いやうがいの励行に加えて、感染予防セットの準備をすすめる。
 
病院や学校などで汚物を処理するときには、マスク、ゴーグル、手袋を着用しペーパータオルでふき取る。
ふき取ったペーパータオルはビニール袋に入れて、消毒のために次亜塩素酸を振りかける。
最初はノロウイルスかどうか分からない。
日常的に予防セットを使うことが大切だ。


ノロウイルスの感染予防セット
・使い捨ての手袋
・マスク
・安全ゴーグル
・ペーパータオル
・次亜塩素酸(殺菌、消毒剤)
・消毒用アルコール
・ビニール袋

日経新聞・夕刊 2008.9.16