多発性硬化症

脳や脊髄の神経炎症でしびれ 多発性硬化症

妊婦に安全性高い薬登場
脳や脊髄の神経に炎症が起こる多発性硬化症は、手足のしびれやまひ、視力の急激な低下などをもたらす難病だ。
発症すると再発と症状の治まる時期を繰り返すため、再発をいかに抑えるかが重要になる。
最近は国内で使える薬の種類が増え、治療の戦略が立てられるようになってき

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多発性硬化症は脳や脊髄、視神経などに病巣ができる。手足の感覚が鈍くなる、視野が狭まる、脳の認知機能が低下する、などが主な症状だ。
男女比は1対3程度で、30歳前後で発症する例が多い。
欧米に多い病気だが、近年は国内でも患者が増えている。国内患者数は推計で約2万人だ。
 
この病気は病原体などから身を守る免疫が誤って自分自身を攻撃してしまう。
電気信号を伝える神経には電線に相当する軸索と、それを包む絶縁膜である髄鞘があり、素早く正確に情報を伝える。
免疫の作用で髄鞘が壊されると、情報がうまく伝達できなくなり発症する。
完治は難しいが、親から子に病気が遺伝することはない。
 
症状の経過により、大きく3タイプがある。
再発と症状の治まる時期を繰り返す「再発寛解型」が最も多い。
はじめから体の機能障害が進行・悪化する「一次進行型」、再発と症状が治まる時期を繰り返しながら途中から徐々に機能障害が進む「二次進行型」もある。
 
再発を繰り返すうちに神経自体が傷み、症状も悪化する。
長くつきあっていかなければならない病気で、早期の治療開始と治療の継続が重要だ。
 
発症しても初めは本人が気づきにくく、眼科や整形外科などの受診をきっかけに見つかる例も多い。
診断では眼球運動や磁気共鳴画像装置(MRI)などの検査を組み合わせて慎重に判断する。
かつて多発性硬化症と同じ病気とみなされていた視神経脊髄炎は、同じ治療法だと効果がなく悪化する例もあり注意が必要だ。

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多発性硬化症の治療は、急性期ではステロイド剤の点滴などで炎症を抑える。
症状の治まっている時期の再発予防が大切になるという。
患者数の多い欧米と比べて国内の再発予防薬の選択肢は少なかったが、近年は種類が増えてきた。
15年にはコパキソンが国内でも承認され、やっと薬が出そろってきた。
 
病態や妊娠の希望などに合わせた使い分けもできるようになってきた。
たとえば、免疫システムの調整のために分泌されるインターフェロンβを注射で補う方法がある。
安全性は高いが、定期的な注射は本人の負担が重い。
うつ傾向を引き起こす副作用もある。
医師の判断で、負担の少ない飲み薬フィンゴリモドを使う場合もある。
再発しやすい人には効き目の強い注射薬ナタリズマブが使われる。
 
治療中の女性では妊娠をためらう人もいる。
治療法の選択に気をつければ、安心して出産できる。
どの薬も妊娠が分かったら利用を控える必要があるが、妊娠中は体内の免疫の状態が変化し、再発しにくくなる。
 
ただ出産後は急激な体調変化や育児のストレスなどで再発のリスクが高まる。
再発しやすい人は出産後速やかに治療を再開するのが望ましい。
 
症状を和らげるには再発予防の治療とともに、リハビリが有効だ。
症状の出ていない時期に実施し、運動機能回復を目指す。
体温が上がりすぎると症状が出やすくなるため、過度な負荷は避けるのがポイントだ。
 
多発性硬化症の症状は外見から分かりにくく、無理をして再発する人もいる。
疲れやすくなる症状が「怠けている」と職場などで誤解を招く場合もある。
周囲に病気を説明して理解を得る環境づくりも大切だ。

出典
日経新聞・朝刊 2016.4.3


特定の細菌減少で発症か 多発性硬化症の腸内環境

神経細胞が傷つき、手足のしびれや視力の低下などが起きる難病「多発性硬化症(MS)」の患者は、特定の種類の腸内細菌が健康な人よりも少ないとする研究結果を、国立精神・神経医療研究センターなどのチームが発表した。
チームによると、MSが腸内細菌の異常と関係があることを示したのは世界初という。
 
MSは近年増加しており、食生活の欧米化で腸内細菌のバランスが崩れて発症する「生活習慣病」の可能性がある。
同センターでは「腸内細菌を使った治療法の開発につながるかもしれない」と話している。
 
患者20人からとった数百種類の腸内細菌数を遺伝子解析で分類した。
健常者40人と比べた結果、19種類の菌が明らかに少なく、そのほとんどがクロストリジウム属菌というグループの菌だった。
チームはこのグループの菌が炎症を抑える働きと関連している可能性があるとみている。
 
MSは脳や脊髄、視神経に繰り返し炎症が生じ、再発と回復を繰り返す慢性疾患。
何らかの原因で神経細胞の長い突起を覆うミエリンという組織が脱落して起こる。
日本ではこの30年で患者が10倍以上増え、2万人近いと推定される。
近年、働く若い女性の患者が目立つという。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG15H16_V10C15A9000000/


MSの急性増悪、ステロイド療法は経口でもOK
メチルプレドニゾロンの大量パルス療法は経口剤でも点滴投与に劣らぬ効果、COPOUSEP試験で判明
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/lancet/201507/543047.html

【適応追加】メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム
ソル・メドロールが多発性硬化症にも使用可能に
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/201209/526919.html

多発性硬化症】再発予防の経口薬が米国で初承認
長期フィンゴリモドの長期安全性の確立が課題
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t118/201101/517909.html





東大、神経難病が起こる仕組みを解明
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=402177&lindID=5

多発性硬化症情報サイト イムナビ
http://imu-navi.net