50代で増える不眠の悩み

50代で増える不眠の悩み 「早く寝よう」が悪循環招く

http://style.nikkei.com/article/DGXKZO98276720Q6A310C1W13001
夜、眠りたいのに眠れない。
夜中や早朝に目が覚めてしまう。
目覚めがすっきりしない・・・。
眠りの悩みはさまざまだ。
実は、悩みの中身は年齢層によってかなり違い、若い世代では有効な対策が、中高年には逆効果になることもある。
原因をきちんと理解することが、解決への第一歩だ。

厚生労働省の調査では、睡眠で休養がうまく取れていないと感じている人は約2割。
5人に1人が、睡眠に満足していないという結果だ。
 
どんな問題があるのだろう。
睡眠トラブルを年齢層別に見ると、世代ごとに特徴があるという。2014年に厚労省が公表した
「健康づくりのための睡眠指針」は、世代別に起きる問題と対策などを助言している。

若年は睡眠不足
悩みの中身が大きく変化するのは「勤労世代から熟年世代へ移行する50代前後」。

働き盛りの忙しい世代では「睡眠不足が大きな問題」。
20代なら週末に休めば何とかなるが、30、40代では疲れが残り仕事の能率が落ちる。
50代になると、さすがに無理をしなくなるので、睡眠不足は減っていく。
そのかわりに「不眠に悩む人が増える」という。
 
不眠には「寝つきが悪い」「夜中に目がさめる」「早朝に目覚める」「眠りが浅く、目覚めがすっきりしない」という4つの主症状がある。
人は年をとると自然に睡眠時間が短くなり、眠りも浅くなりやすい。
こういった症状は、加齢とともに誰にでも現れる。
それにもかかわらず、若いころと同様に、「睡眠不足対策」という発想で対応すると「むしろ不眠が悪化しやすい」。
例えば、眠りが浅くて目覚めが悪いと感じたとき、しっかり寝ようと思って早く床につくという対策だ。

眠気は、脳の中の「体内時計」が制御しており、毎日ほぼ同じ時刻になると強まる。
だから、いきなり早く寝ようと思っても無理なのだという。
 
この問題が表だって現れるのが、リタイアしたときだ。
時間もあるし、健康のためにも「これからはゆっくり休もうと考えて就寝時刻を早める人が多い」が、逆に寝つきが悪くなり、もんもんと時を過ごすことになりがち。
ここから慢性的な不眠に陥るケースも目立つ。

不眠に悩む人が早めに床に入るのは逆効果。
ベッド=眠れない場所と体が覚えてしまうと、ベッドに入るだけで「『また眠れないのでは』との不安が高まり、一層眠れなくなる。
 
ベッドに入って10分以上眠れないときは、無理に寝ようとせず、一旦寝室から出た方がいい。
自然に眠気が湧いたら改めてベッドに行く。
横になってすぐ眠りに入る感覚を取り戻すことだ。
 
いつまでも眠くならないのでは、と不安になるかもしれない。
でも、一晩ぐらい寝不足になっても命に別条はない。
むしろ『これで次の日は眠りやすくなる』と発想を切り替えることも必要だ。
夜更かしになっても翌朝起きる時間は一定にしよう。

昼寝に注意
体に必要な睡眠時間は年齢とともに短くなる。
個人差もあるが50代で6.5時間程度、60代以降は6時間で十分。
それ以上は快眠を妨げかねない。
8時間睡眠が理想と言われることも多いが8時間眠ってスッキリできるのは若者だけ。
中高年以降は『しっかり長く寝る』との発想はやめた方がいい。

昼寝も要注意だ。
睡眠不足で頭がボーッとしているようなとき、少し昼寝をするとすっきりする。
だがこの方法は、実は若い世代向きの対策だ。
中高年以降で不眠に悩んでいる人が昼寝をすると、夜、ますます眠りにくくなる。
昼寝は極力避けよう。

どうしても眠いなら、午後3時までのなるべく早い時間帯で20分以内にとどめると夜の睡眠への影響が少なくて済む。
日中の運動は睡眠の質を高めるのに有効とされる。
だが、不眠に悩む中高年の場合、疲労感から昼寝したくなり、深夜に目がさえることもある。
特に午前中の運動だとそうなりがちなので、散歩などは夕方が望ましい。
 
なお、睡眠の悩みの背後に、うつ病睡眠時無呼吸症候群といった病気が隠れているケースも多い。
あてはまるようなら医療機関を受診しよう。

◇  ◇

本当に困ったら、薬も助けに
睡眠薬を飲むのも手だ。
ただ、無いと眠れなくなるなどの「依存性が心配」という人もいるだろう。
依存性が問題になるのは大量に服用の場合で1日1錠程度なら余り心配する必要はない。
 
長期間飲むと認知症のリスクが高まるというニュースもあった。
国際的には、リスクが少し高まるとする研究と差はないという研究が半々だ。
一方、不眠がアルツハイマー病のリスクを上げるとの研究もある。
必要な時は飲み、不要になったらやめるのがよい。
 
薬代わりにアルコールを飲む人もいるが、眠りを浅くし、中途覚醒が増える。
代わりにはならないことを覚えておこう。

出典
日経新聞・朝刊 2016.3.12