「座り過ぎ」は寿命縮める?

「座り過ぎ」は寿命縮める? 心臓病や糖尿病のリスク上昇  こまめに立って解消を

オフィスや自宅で座っている時間が長いと、糖尿病や心臓病などになるリスクが高くなることが分かってきた。
このリスクは週末に適度な運動をするくらいでは減らせないという。
パソコンを立って操作するよう奨励する企業など、座り過ぎ解消に向けた動きも出てきた。

近年、座り過ぎが健康に悪影響を及ぼすとの疫学研究の結果が、国内外で次々に報告されている。

統計的に相関
2012年にオーストラリアのグループが、1日に座っている時間が11時間以上の成人は、4時間未満の成人と比べて総死亡のリスクが1.4倍高いと発表した。
15年にはカナダのグループが各国で実施された研究を統計的に統合し、心臓や血管の病気やがん、糖尿病などと、座り過ぎの習慣との間の関連が確認されたと結論づけた。
 
座り過ぎが問題だとしても、週末などにしっかり運動をすれば大丈夫ではないか。
多少運動をしても、座り過ぎによる健康リスクが簡単には下がらないのが問題だ、と専門家は指摘する。
 
16年にノルウェーなどのグループが健康リスクを減らすのに必要な運動量を検証した。
軽いジョギングやテニスの練習のような「中等度強度」の運動を1日60~75分すれば、座り過ぎによるリスクをほぼ相殺できるという。
 
だが実際にこれほどの運動をしている人は少数。
自分の健康管理に自信のある人ほど、座り過ぎの習慣に足をすくわれてしまう。
こうした人々は、英語で「アクティブ(活動的な)・カウチポテト」と呼ばれる。
自分では活動的なつもりでも、実際はカウチ(ソファ)に座ってポテトチップを食べる人々と大差ない。

筋収縮がカギか
座り過ぎはなぜ体に悪いのか。
はっきりとは分かっていないが、下肢の筋肉を長時間使わないこととの関係が有力視されている。
 
立ったり歩いたりすると、下肢の筋肉が収縮する。
これに伴って体内で糖を運ぶ糖輸送体が移動し、血液から細胞への糖の取り込みを促す。
また筋肉組織にある酵素を活性化させることで血液中からの中性脂肪の取り込みが促進されることが知られている。
 
座っているときは筋収縮がほとんど起きないため、糖輸送体や酵素の働きが弱くなり、血液中の糖や中性脂肪の濃度が高まると考えられている。
座り過ぎによって血管機能が低下する可能性も指摘されている。
 
座り過ぎを解消するには、立ち仕事ができるデスクを使うなど作業環境を変えるのが一つの方法。
長時間座らなければならない場合は30分に1回を目安に立ち上がり、連続して座らないようにするといいという。
最近の研究によれば単に立ち上がるだけでなく、少し歩いたり体を動かしたりすることが効果的だ。
 
1日に座っている時間は、世界的に見ても日本人はトップクラス。
総労働時間は短くなりつつあるが、1日当たりの労働の密度が高くなり、デスクワークが長くなりがち。
家でテレビを見たりスマートフォンを操作したりしているときも大抵は座っている。
知らず知らずのうちに座り過ぎの生活になっていないか、まずチェックすることから始めたい。

防止グッズも続々登場
座り過ぎによる健康リスクが注目される中で、立ち作業を容易にするオフィス家具や、座っている時間が長くなると警告を発してくれるスマートフォンのアプリなど「座り過ぎ防止グッズ」も多く出回るようになってきた。
 
作業用デスクでは台の位置を上下に変えることができる「スタンディングデスク」がよく使われる。
通常の机に載せてパソコンを載せる台だけを昇降させるタイプもある。
長時間立つと疲れる人には、背もたれに寄りかかった状態でも使える「立ち椅子」が便利。
 
座り過ぎの研究で有名なオーストラリアのベイカーIDI心臓・糖尿病研究所が作ったスマホアプリ「ライズ・アンド・リチャージ」は、座っている時聞か30分を超えると立ち上がるよう警告する。
スマートフォンにも立っている時間を記録できる機能がある。

 
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参考
日経新聞・夕刊 2017.1.12