マイナスイオン

マイナスイオン はっきりしない健康効果の根拠

旅番組を見ていたら、ステキな風景を前にタレントさんが「マイナスイオンいっぱ~い」みたいなことを叫んでいた。
マイナスイオンって昔、よく聞きましたけど、そもそも何なのだろうか?
 
滝の周りなどに多く、「体にいい」などと言われるマイナスイオン
2000年代、マイナスイオンを出すエアコンや空気清浄機などがはやった。
一方「ニセ科学」と指摘する科学者もいる。
 
マイナスイオンを売りにする観光地も散見される。
秋田県仙北市はホームページで乳頭温泉で測定された「マイナスイオン個数」を毎日公表中。
担当の観光課に電話してみた。
 
マイナスイオンとは?」
 
「よく分かりません。多い場所は空気がきれい、っていうイメージですかねぇ」
 
当事者にもあまり正体が知られていなさそうだが、測定器は普及していて、その測定法も06年にJIS規格になっている。
 
この規格化を国に申請した日本機能性イオン協会(大阪市)に取材してみた。
02年発足の協会で、最盛期には松下電器(現パナソニック)など100社以上の企業会員がいた。
 
同協会によると、マイナスイオンとは空気中にあるマイナスの電気を帯びた物質の総称。
マイナスイオンになる物質は、小さいものでは酸素や二酸化炭素などの分子から、大きいものでは微小な水滴やホコリもある。

水が滝などで砕かれて細かい水滴になる際に、水滴が帯電しマイナスイオンが出来るそうだ。
家電などでは、自然界と同様に霧吹きで作るものもあるが、放電によって空気中の物質を帯電させるものが主流だ。
 
さて、このマイナスイオン
何がどう「良い」のだろうか?
 
協会のパンフレットは安眠、細胞の活性化、精神安定、血液浄化など多彩な効果を紹介。
マイナスイオンには、人体に悪い酸化の逆の、還元化作用があるという。
 
一方、否定的な科学者もいる。
京都女子大の小波秀雄教授は00年ごろから化学者として、機能性イオン協会の資料などを読み込んできた。「根拠に乏しく、科学のレベルに達している報告はほぼ無い」と言い切る。
 
「理屈的に効果はありえない」とも言う。
家電が出すマイナスイオンは多くても空気1立方センチあたり数百万個。
これを青酸カリの致死量と比べたら、数百兆分の1程度の分子の数だ。
仮にマイナスイオンが青酸カリ並みの猛毒であっても、呼吸で致死量分を吸うには数万年かかる計算になる。
この濃度で生物に影響するというのは無理だろう」と小波さんは指摘する。
 
マイナスイオン商品に否定的な行政報告もある。
東京都は06年にマイナスイオン商品8種類に対し「うたわれている効果の根拠は無い」と発表した。
 
こんな懐疑論に対し、「効果を示す研究は多い」という反論もある。
だが医学誌に掲載されたレベルの研究はない。
 
ブームが去り、マイナスイオンのエアコンや空気清浄機の販売をやめたパナソニックも、ドライヤーはいまだ販売中。
髪をサラサラにする効果は確認しており、販売に問題はない。ただ、環境や個人で結果がばらつくのでデータは公表していない。
 
パナソニックが現在、力を入れる「ナノイー」も電気を帯びた水滴を放出する技術で、機能性イオン協会の考え方ではマイナスイオンの一種。
帯電した水滴が空気中の汚れを集め落とすという効果が主な主張で、健康効果については「言っていない」とのことだ。

参考・引用
朝日新聞・朝刊 2014.4.19




科学者にとってマイナスイオン・ブームの何が 問題だったのか
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/texts/ion.pdf