あなたがやせない“理由”教えます(上)

なぜ自分ばかりが太るのか?

ちょっと前、いや、ずいぶん前からお腹が出てきた。
健康診断の数値も少しずつ悪化している――。
気にはなっているけれど、仕事が忙しくて、ジムにも半年行っていない。
でも、待てよ。
そんなに食べているわけでもないし、毎日通勤で歩いている。
なのに、自分ばかりがなぜ太ってしまうのだろう? 


同窓会の通知が来たら、ぜひ参加しよう。
大丈夫、太ったのはあなただけじゃない。
ほら、見回せば、あっちにもこっちにも。
20人いた男子のうち6~7人は貫禄たっぷりのはずだ。

これまで、日本の男性の平均体重は右肩上がりに増えてきた。
当然、肥満者数も増加の一途だったのだが、近年、その数が減少したという喜ばしい報告があった。

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男性の世代別肥満者数の統計。
平成9年と10年後の平成19年を比べると、どの世代も肥満者数は増加しているが、平成20年には20歳以上の平均で減少した。
世代別では、20代と50代が減っているのに対し、30、40代は右肩上がりだ(平成20年度・厚生労働省『国民健康・栄養調査』による)。


30代、40代だけが太り続ける
しかし、安心するのはまだ早い。
よくデータをみると、30代、40代は依然として太り続けている。
そう、30代と40代、この世代が危ないのだ。

今や40代男性が集まれば、3人に1人が肥満なのだ。
良かったと安心している場合ではない。
体形が変わったように、筋肉が体の4割を占めていた10代のころとは「中身」が大きく違う。

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基礎代謝とは、体を動かさなくても呼吸や体温維持などで消費するエネル
ギー量。
30~40代男性の基礎代謝量の基準値は1520kcal。
15~17歳をピークに年齢とともに減少する(厚生労働省第6次改定 日本人の栄養所要量より)


【30代、40代になって変わった体の中身を把握しよう】

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(この記事のイラスト:まえかわひろし)

水分
体重の55~60%を占める。仮に体重70kgのうち60%とすると、42kgが水分で、それ以外が28kgということに。
血液やリンパ液以外にも水分はある。
骨は20~25%が、脂肪細胞は20~30%が、筋肉は75~70%が水分とされるが、水分の重さは減らせない。


骨の総重量は、体格で違うが、体重の15%程度。
体重70kgなら10.5kgだが、うち無機質(主にカルシウム量)が55~60%、コラーゲンなどが15~20%。カルシウムなどミネラル量の「骨密度」が重要だが、コラーゲンの質「骨質」にも注目を。
双方とも年齢とともに低下。

脂肪
体組成計にのって表れる体脂肪率が脂肪量の指標。
40代男性なら18~22%が標準範囲内で、70kgで体脂肪率が20%とすると、体脂肪は14kgということに。
脂肪細胞には水分やたんぱく質も含まれるので、これ自体が脂肪組織の全体の重さではない。
脂肪細胞は、血液中の中性脂肪をためこむと大きくなり、普通の細胞の数百倍の容積にまで膨らむという。
逆に、小さくすることも可能だ。

筋肉
体重から脂肪を引いた数値の約半分の重さが筋肉とされる。
筋肉は、心筋、平滑筋、骨格筋の三つに大別される。
心筋は文字通り心臓まわりの筋肉。
平滑筋は、血管、消化管などの臓器の筋肉。
そして骨格についているのが骨格筋といわれる筋肉。
この骨格筋によって体が動き、骨格筋を動かすことでエネルギーが消費される。
動かすほど、消費エネルギーが増え、鍛えれば筋肉は増える。


年ととともに骨も筋肉も減少し、脂肪が増えるとともに腹まわりは大きくなり、内側では内臓や血管の傷みが激しくなる。
脂肪細胞が肥大化すると、悪玉ホルモンが分泌される。

「脂肪は体にとって“毒”」と同志社大学健康スポーツ科学部の石井好二郎教授。
振り返れば、20年以上かけてせっせと毒をためこんできたことになる。
ためこむ理由は、体が消費するエネルギーよりも取りこむエネルギーの方が多いから。
その余剰分が蓄えられていくのだ。

男性の肥満者の数は減ったのに、30、40代では増え続けている。
大きな理由はストレスにある。

特にこの世代は、仕事も忙しく家庭もあり、ストレスが非常に多くなりがち。
ストレスを抱え続けると脳が疲弊し、太りやすくなる。

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                                (ライター 中能泉)
出典 日経ヘルス for MEN2010年秋号(一部改変)

<私的コメント>
今回の記事の中に
「2010年に入り、メタボ未満の腹囲でも血圧、血糖、血中脂質の検査値の異常が重なると、脳卒中心筋梗塞の発症が高まるという報告が発表された。腹囲が基準値内でも安心はできない。」
ということが書いてありました。
あまりにも当然の内容です。
最近、当院でも腹囲が正常範囲内(ただし84cmとぎりぎり)でも高トリグリセライド(中性脂肪)血症、低HDLコレステロール血症、高血圧、空腹時高血糖の方が特定健診でみつかりました。
腹囲増加は必要条件ですから、この方はメタボではないということになってしまいます。
この方は身長が160cm以下でした。
こういった矛盾は以前から指摘されて来ました。
問題は、身長を考慮せずに一律に男性85cm以上、女性90cm以上とした診断基準にあります。
180cmと160cmの男性のいずれの85cmが基準なのはどう考えてもおかしいのは明らかです。
以前、糖尿病学会の重鎮の某大学の教授の講演会で私はこの点について質問しました。
返って来た言葉は「問題なし」というがっかりさせるものでした。

諸外国ではウエスト・ヒップ比や身長の半分(たとえば身長180cmで腹囲90cm)が使用されています。
この方が簡単で合理的とは思いませんか?
身長190cmで腹囲85cmではまるでエンピツのような体型になってしまいます。


他に
井蛙内科開業医/診療録(4)
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(H21.10.16~)
井蛙内科開業医/診療録(3)
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があります。