牛乳の効用

牛乳はリラックス効果や生活リズムの改善、良質な睡眠の促進などの作用もあるといわれています。
最近では、認知症を抑えるのにも一定の効果があるとする研究報告も出されました。
飲むとおなかの調子が悪くなると敬遠する人も多いが、温めたり料理に加えたりといった工夫でうまく摂取できるようになります。

認知症抑える報告も 牛乳の効用、最新研究  和食に使い、上手に摂取

■カルシウム成分で骨が丈夫になる――。
学校などでは、長年こうした理由で牛乳摂取が推奨されてきた。
実際に、牛乳には心身の状態を改善する効果があるらしいことがわかってきた。

安眠もたらす成分
心身の状態を改善する効果は牛乳の成分でアミノ酸の一種、トリプトファンの働きが一因とみる研究者もいる。
このトリプトファン神経伝達物質の一つで、うつ病などと関係するとされるセロトニンのもとになる。さらにセロトニンからは安定した睡眠をもたらす効果が知られるメラトニンが合成される。
トリプトファンは「(他の物質と結合していない)フリーな状態で3グラム以上摂取すると入眠を改善するという報告がある。

■ただ、牛乳のトリプトファンはフリーな状態ではなくたんぱく質カゼインを構成するアミノ酸として存在し、量も少ない。
毎日飲むというように習慣的に一定期間摂取し続けると効果が出る可能性がある。

■福岡県久山町における、食事や運動と病気との関係を調べる大規模な疫学調査から牛乳・乳製品の効果を分析した。
浮かび上がってきたのは認知症との関連だ。
1988年に食事調査をした認知症のない60~80歳の1006人の健康状態を追跡し、食事パターンとその後の認知症発症との関係を調べた。
牛乳・乳製品(ヨーグルトとチーズ)、大豆・大豆製品、緑黄色野菜、海草類などを多くとる一方、米や酒は少なめという傾向がはっきりしている食事パターンほど発症リスクが低かった。

■60歳以上の1081人の調査で、牛乳・乳製品の摂取量の増加に伴い、アルツハイマー病の発症率が低下する傾向も明らかになった。
血管性認知症でも似た結果だった。
乳酸菌飲料にも短期の記憶力や集中力を改善する効果が認められたものがある。

■従来、「地中海料理(地中海食)」が、メタボリックシンドローム内臓脂肪症候群)やアルツハイマー病のリスクも低下させる健康な食事といわれてきた。
地中海料理では牛乳や脂肪分の多い乳製品は勧めないとされる。
日本人の牛乳・乳製品の摂取量がもともと少ない。
欧米の半分から3分の1程度なので積極的にとっても過剰にはならないとみられている。

温め、ゆっくり飲む
■牛乳を飲むと、おなかがすぐにゴロゴロいう人がいる。
原因として考えられるのは、乳糖の分解酵素が少ないか十分に働かない乳糖不耐症だ。
ただ、多少酵素の働きが弱くても腸内にいる細菌で分解されるので、それほど心配しなくてもよい。

■冷たいものを胃に流し込んだことが、不調の原因になる場合も多い。
温めてゆっくり飲めば、酵素の働きが温度低下で下がるのも防げる。

■牛乳を和食に上手に組み込んだ「乳和食」も注目されている。
味噌は健康によいとされるが、塩分を気にする人もいる。
例えばサバの味噌煮で味噌を減らし牛乳を加えると、魚の臭みは薄れ、うまみが引き立つ。
めんつゆを牛乳で薄めて食べるそうめんは塩分控えめで濃厚な味わいになる。
牛乳をだし汁のように使うと減塩が達成出来る。

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出典 日経新聞・朝刊 2014.4.20
版権 日経新聞


<関連サイト>
生産・販売者などの業界団体「一般社団法人Jミルク」のホームページ
https://www.j-milk.jp/index.html


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           2014.4.20 撮影