骨折リスク、避けるには

骨折リスク、避けるには 死亡率、高まる恐れも

骨折は寝たきりの原因になるなど、高齢者にとって恐ろしいけがだ。
国内に1300万人の患者がいるとされる骨粗鬆症は、骨折のリスクを高める。
近年、新しい治療薬が次々登場し、患者が使いやすくなってきた。
骨折を防ぐために、体操での体力づくりに取り組む自治体もある。

55~81歳で背骨や大腿骨(股とひざの間をつなぐ骨)が折れると、4年以内の死亡率が7~9倍に上がるという海外の研究がある。
80歳以上では、骨折から1年以内の死亡率が男性で5割、女性で3割にもなるという。

身長が1、2センチ減ったら、背骨が折れている疑いがある。

骨は体を支えるだけでなく、生きていくのに必要なカルシウムをためておく役割がある。
古くなった骨は「破骨細胞」に吸収され、カルシウムが血液などに溶け出す。
同時に、「骨芽細胞」によって新しい骨がつくられる。
この吸収と形成のサイクルが、約3カ月の周期で繰り返されている。

閉経した女性は、カルシウム量を増やし、骨吸収を抑える女性ホルモン「エストロゲン」の分泌が急激に減るため、骨の吸収と形成のバランスが崩れる。
その結果、骨密度が落ち、重さに耐える力が弱まるのが骨粗鬆症だ。女性より少ないものの、男性でも高齢化とともに増える。

骨粗鬆症は自覚症状がないため、骨折のリスクが高まっていることにも気付かない。
高齢者が転倒するなどして骨折すると、寝たきりにつながりかねない。

大腿骨骨折の発生率は、日本では1990年代から増加傾向にあり、新規の患者数は2007年が約15万件だった。
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版によると、部位にかかわらず、すでに骨折をしている場合、将来骨折するリスクが、骨折していないときに比べて約2倍になるという。

また、喫煙や一定量以上の飲酒でも骨折のリスクが高まる。
喫煙は骨密度を低下させ、女性ホルモンのバランスを乱していると考えられている。
アルコールは骨をつくる骨芽細胞の働きを抑えたり、体内のカルシウムなどを体外に出しやすくしたりしているという。


骨粗鬆症の新薬次々
骨粗鬆症の治療薬は主に二つのタイプがある。
「骨が溶けるのを防ぐ(吸収抑制)」と「骨の形成を促す」だ。

骨吸収抑制タイプの代表格が、骨を壊す破骨細胞の働きを妨げる飲み薬「ビスフォスフォネート製剤」。
1996年から使われている。

昨年には、破骨細胞にとって重要なたんぱく質を攻撃する「デノスマブ」という新薬が承認された。この新薬は半年に1回の注射ですむ。
外側の硬い骨と内側の網目状の骨の両方がバランスよく増え、大腿骨骨折を防ぐ効果が高いとされる。

ただし、このタイプは、骨から体内へのカルシウムの供給を減らすことになる。
効きすぎると、深刻なカルシウム不足を招く危険がある。

形成を促すタイプは、2010年に登場した。骨芽細胞に骨づくりを働きかけるホルモンを使った「テリパラチド」だ。
当初の製品は毎日、自分で皮下注射しなければならなかったが、その後、週1回、医師に注射してもらうタイプを別の製薬会社が開発した。
投与期間は製品によって異なるものの、副作用を避けるために最長2年までと決まっている。

骨折した直後は骨をつくる必要があるのでテリパラチドを使い、その後は骨の吸収を抑える薬を続けるのが望ましいという。

いずれにせよ、薬だけに頼らず、カルシウムやカルシウムの取り込みを助けるビタミンDの多い食事を心がけることが求められる。
具体的には魚、キノコ類、海藻などが挙げられる。

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出典
朝日新聞・朝刊 2014.9.2