鶏肉生食ご注意

生肉食いは高リスク 食中毒菌の感染率、鶏は77倍

ユッケや鳥わさなどの生肉を食べて食中毒になる事例が後を絶たない。
東京都で起きる食中毒の3件に1件は肉の生食が原因とみられている。
食品安全委員会のリスク評価では、飲食店で鶏肉を生で食べる人は、食中毒菌の一つのカンピロバクターに感染する確率が、食べない人に比べて約77倍も高いことが分かった。
同委員会は「生食を減らすための啓発が重要」と指摘している。

厚生労働省によると、2008年に全国で起きた食中毒1369件中、カンピロバクターによるものは509件で第1位。
「肉類を生食、加熱不十分で食べたことが原因の事例が多い」と同省食中毒被害情報管理室はみる。

また、生肉ではO(オー)157などの腸管出血性大腸菌の食中毒になる場合もある。

都内では08年に106件の食中毒が発生し、少なくとも34件は、生または半生の肉が原因と都は推定している。ほぼ3件に1件の割合だ。

カンピロバクター腸管出血性大腸菌は、牛や鶏の腸管にいる細菌。
肉の鮮度とは関係なく少量の菌でも発症させる力がある。加熱調理をすれば菌は死ぬので問題はない。

生食の実態を調べようと、都は09年に20歳以上の都民千人にネット調査した。
ユッケ、鳥わさ、レバ刺しなどの生肉を3カ月以内に食べた人は40%に達し、若い年代ほど割合が高く20代では53%に。
都健康安全課は「若者を中心に肉の生食が定着してしまっている」と話す。

飲食店に生の肉のメニューがあっても、実際には「生食用」の牛肉と鶏肉は現在流通していない。
牛肉と馬肉は、厚労省が定めた生食用衛生基準を満たした肉にのみ「生食用」と表示して売ることになっている。
だが、08年度の生食用牛肉の出荷実績はゼロ。鶏肉にはそもそも生食用の衛生基準がない。

飲食店は加熱用の肉を、「新鮮だから」などという判断で生肉として流用しているのが実態だ。
衛生基準はあくまで行政指導なので、守らなくても罰せられない。

食品安全委員会は昨年6月にまとめたリスク評価で、鶏肉料理でカンピロバクターに感染する確率をシミュレーションした。
飲食店で生の鶏肉を食べる人では、1回の食事あたり6.36%の確率で感染する可能性がある、と推計生で食べない人はわずか0.07%。
体の中に菌が入っても発症するとは限らないが、店で生肉を食べる人は食べない人に比べ約77倍感染しやすい、という結果だった。(大村美香)

出典 朝日新聞・夕刊 2010.2.27
版権 朝日新聞社




<関連サイト>
東京都福祉保健局 食肉の生食による食中毒防止のための効果的な普及啓発の検討(最終報告)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/hyouka/houkoku/report6.html
(東京都の食品安全情報サイト)

ご注意ください!お肉の生食・加熱不足による食中毒
http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201005/4.html
(2010.5の最新の政府広報オンライン。イラスト入りで分かりやすく解説されています)

ちょっと待って!お肉の生食
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/anzen_info/nama/index.html
厚生労働省は、「生食用食肉等の安全性確保について」の通知で、生食用食肉の衛生基準を示していますが、平成20年度にこの通知に基づいた生食用食肉の出荷実績があったのは、馬の肉・レバーだけでした。(つまり牛肉の生で飲食店で供されるほとんどは「生食用食肉」ではありません)
■鶏肉は生食用の衛生基準がありません。したがって、牛肉、鶏肉は、生で食べると食中毒になる可能性があります。

保健所だより第19号 食品の「生食」にご注意! 東京都多磨府中保健所
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/tamafuchu/kouhou/hokensho/ho19/index.html

お肉の生食や加熱不足にご注意ください!
http://www.pref.tokushima.jp/docs/2010071300204/


<番外編>
臓器移植:意思不明脳死 摘出された臓器、5病院で移植
近畿地方の病院で、家族の承諾のみで脳死判定された18歳以上の男性の臓器は19日午後、摘出された。
同日夜、全国5カ所の病院で、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓の移植手術が始まった。
臓器移植法に基づく脳死での臓器提供は88例目。

 中略

心臓は東京大病院で40代男性、両肺は大阪大病院で20代男性、肝臓は京都大病院で40代男性、腎臓は神戸大病院で60代男性、もう一つの腎臓と膵臓は名古屋第二赤十字病院で30代女性に移植される。
http://mainichi.jp/select/science/news/20100820ddm041040051000c.html
毎日新聞 2010年8月20日 東京朝刊
<コメント>
「意思不明脳死」で家族の同意だけで行われたということにニュース性があります。
心臓は実際に動いているわけですから、今後の脳死判定がより厳密に行われる必要がありそうです。


脳死判定」については、以下の記事が参考になります。


脳神経外科学会:脳死判定で7支部に支援組織を設置
日本脳神経外科学会は11日、脳死による臓器提供の対象者を拡大した臓器移植法改正に伴う地方の医療機関の負担を軽減するため、同学会の7支部に支援組織を設置すると発表した。
脳死臓器提供を経験した会員の脳神経外科医が中心となり、24時間体制で医療機関からの問い合わせに対応するほか、要請があれば施設に出向いて支援もする。
年内に体制を整備する。
http://mainichi.jp/select/science/news/20100812k0000m040102000c.html
毎日新聞 2010年8月11日


<きょうの一曲>
Michael Buble - Save the Last Dance For Me
http://www.youtube.com/watch?v=qmi3EPUrw6g&feature=related


<ある雑誌に出ていた西城秀樹のコメント>
越路吹雪のイメージが強い「ラストダンスは私に」も、なんとキューバ風のテイストで編曲されているため、自分のなかにあったこの曲のスタンダードが覆された。
もはや越路吹雪が歌っていた印象はどこにも残っていない。
自分がよく知っている曲に新しい発見があるこのアルバムは、マイケル・ブーブレの世界に触れるには最適だ。



読んでいただいて有難うございます。
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