けんしょう炎を防ぐコツ

パソコン、携帯…けんしょう炎を防ぐコツ

同じ動作を繰り返し、指や手首が痛んだり、思うように動かなくなったりするのが腱鞘炎だ。
パソコンの使用や携帯電話の操作、ゴルフや楽器演奏といった趣味など、腱鞘炎を引き起こす要因は生活のいたる所にある。
放っておくと指が動かなくなるなど重症化することも。

都内に住むAさん(35)は半年ほど前から、両手の親指と人さし指の付け根がひどく痛み出した。
「特に人さし指はなめらかに動かせず、常にひっかかる感じがした」。
朝起きた直後は指が動かないこともある。
整形外科を受診し、腱鞘炎と診断された。
1年前に職場の異動があり、事務作業が増えてパソコンのキーボードを使う時間が長くなったのが一因だったという。


若い人にも広がる
腱鞘炎になると、指や手首を動かすと痛んだり、指がなめらかに動かずガクガクとひっかかる「ばね指」と呼ぶ症状が出たりする。

腱鞘は指を動かす腱の回りをトンネルのように囲む膜状の組織だ。
腱が骨や筋肉から浮き上がらないようにする役割がある。
腱鞘が炎症を起こして腫れると、中を通る腱をしめつけ、指の動きを制限したり痛みが出たりする。

腱鞘炎の患者は40~50代の女性がほとんどで、ホルモンのバランスなどの影響で発症すると考えられてきた。
しかし、ここ数年は若い人でも指や手首の痛みを訴える人が増えてきている。
パソコンや携帯電話の普及で、指や手首を酷使する機会が増えたことが一因とみられる。

腱鞘炎は現代病の一種で、整形外科分野で最も患者の多い病気の一つ。
糖尿病や人工透析の患者は腱鞘炎を起こしやすいという。

パソコンをよく使う人は手首と親指や人さし指、携帯電話をよく使う人は親指に症状が出やすい。
ゴルフによる腱鞘炎は、プロや上級者では薬指や小指に、初心者では親指や人さし指に発症することが多く、クラブの握り方の上手、下手が関係している可能性があるという。

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重症なら手術必要
程度が軽ければ、手や指を休めると自然に腱鞘の腫れはおさまり、症状が改善することも多い。
炎症を抑える内服薬を飲めば治る場合もある。
痛みが続く場合は、ステロイド系の薬剤などを手のひらや手首に注射する。

注射でも改善しない場合や治っても再発を繰り返す場合は、手術が必要になる。
腱を圧迫していた腱鞘を切り開いて、腱がスムーズに動くようにする。

独自開発した専用の内視鏡を使い手術する医師もいる。
手のひらをわずか2ミリメートルほど切るだけですむ。
術後2~3日で日常生活に復帰でき、残る傷も小さい。
手のひらを大きく切開しないので、術後の傷が治りにくい糖尿病の患者にも向いている。
徐々に内視鏡手術が広まりつつあるという。

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日常生活の中で手を使わないわけにはいかないので、腱鞘炎を完全に予防することはなかなか難しい。
それでも、ちょっとした心がけや手のケアが予防につながる。

手を使った作業を長時間続けるのをなるべく避け、休憩を挟むことが大切。
また手を酷使した日は、お風呂に入った時に指のすべての関節をゆっくり動かしてほぐすとよい。
長時間の作業で手がほてっているときは、氷などを使って冷やすと、痛みが出るのを防ぐ効果がある。

手の「正しい使い方」を覚えるのも重要だ。
例えば、パソコンのキーボードを手元を見ずに操作する「ブラインドタッチ」は、文字を早く打てるだけでなく、指や肩など体への負担も少ない。
自己流の指の使い方でキーを打つのは負担が大きく腱鞘炎を起こしやすい。
マウスも大きすぎるものや小さすぎるものは手に負担がかかる。
自分の手に合ったサイズを選ぶとよい。

細かい作業ができるように手や指は複雑な構造をしており、デリケートな部分ともいえる。
現代の生活では手や指を酷使しがちだが、つらい痛みを予防するために日ごろから手をいたわるよう意識したい。                             (柏原康宏)

出典 日経新聞・朝刊 2010.10.17(一部改変)
版権 日経新聞



<番外編>

コレステロール高めが長生き」…「根拠乏しい」医師会など批判

日本医師会(日医)と日本医学会、日本動脈硬化学会は20日、東京都内で開かれた日医の定例記者会見で、「コレステロールは高めが長生き」とする日本脂質栄養学会作成の「長寿のためのコレステロールガイドライン(指針)」について、「科学的根拠に乏しい」と批判した。

日本動脈硬化学会は、LDL(悪玉)コレステロール値が140ミリ・グラム/デシ・リットル以上などを高脂血症脂質異常症)とする指針を定めている。
同学会は14日、日本脂質栄養学会の指針に反論する声明文を公表。
会見で、原中勝征・日本医師会会長と高久史麿・日本医学会会長もこれを支持する姿勢を示した。
高久医学会会長は、「LDLコレステロール心筋梗塞(こうそく)などと直接関係があることは世界的に認められている」と話した。

出典 読売新聞 2010.10.21
版権 読売新聞社


<番外編>
水虫菌検査キット開発 商品化へ、福井大など
福井大の法木左近准教授(病理学)らの研究グループは21日、水虫を発症する「白癬菌」を検出できる検査キットを開発し、商品化すると発表した。

患部の皮膚を界面活性剤に混ぜて試験紙に垂らす仕組み。
妊娠検査薬と同様に、陽性だと赤い線が浮かび上がる。水虫は皮膚科医が顕微鏡で調べて診断するが、商品化すれば誰でも手軽に検査できそうだ。

法木准教授らが白癬菌に反応する抗体の作製を東洋紡大阪市)に依頼し、抗体を吸着させた試験紙を試作した。
実用化に向けてチッソ(東京)と検討を始め、2012年をめどにキットの一般販売を目指す。

国内の水虫感染者は2500万人に上るとの推計があり、法木准教授は「水虫は最近、若い女性に増えているが、恥ずかしがって病院に行かない。早急に治療するきっかけになれば」と話している。
http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/10/22/127277/
出典 共同通信社 2010.10.22
版権 共同通信社

<私的コメント>
きちんと専門医の診察を受けて治療する方がいいのではないでしょうか。
水虫菌検査で陰性でも、水虫と鑑別すべき皮膚疾患があります。





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畑中義延 『リンゴとレモン』 洋画
http://www.seikougarou.co.jp/sell/hatanakayoshinobu/1480.html



読んでいただいて有難うございます。
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