髄膜炎菌性髄膜炎

ユッケ食中毒事件の熱(ほとぼ)りが冷めないうちに、細菌感染の恐怖を再認識させる新たなニュースがありました。

宮崎・高校生死亡:髄膜炎菌性髄膜炎か 県が感染経路調査

宮崎県○○市の△△高野球部の寮生4人が11~14日に発熱などの症状で入院し、うち1年生の男子生徒(15)が13日に死亡した。
同県は17日、死亡した生徒は、髄膜炎菌性髄膜炎の疑いが強いと発表した。
日本での発生はまれな感染症だが、県は集団発生の疑いがあるとみて感染経路などを調べる。

県によると死亡した生徒は12日、体調不良で部活動を休み、13日朝、意識不明になって病院に運ばれ同日夕、死亡した。
血液検査で髄膜炎菌の抗原を検出し、詳細検査中。

寮では野球部と柔道部の男子生徒44人が生活。
入院した他の3人のうち1人は17日までに退院、2人が入院中だが快方に向かっている。

髄膜炎菌性髄膜炎は、脳と頭蓋骨の間の髄膜に菌が入り、発熱や頭痛、意識障害などの症状が出る。
せきやくしゃみによる飛まつで感染するが、感染力は弱く、マスクや手洗いなどで予防できる。

国内の発生例は少なく▽10年に7例▽09年に10例▽今年は2例発生した。
                                      【石田宗久】
出典 毎日jp 2011.5.17
版権 毎日新聞社


<関連サイト>
髄膜炎菌性髄膜炎
http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k01_g3/k01_43/k01_43.html
■化膿性髄膜炎のなかで髄膜炎菌を起炎菌とする疾患を髄膜炎菌性髄膜炎という。髄膜炎を起こす病原性細菌はいくつか知られているが、大規模な流行性の髄膜炎の起炎菌は髄膜炎菌のみであることから、流行性髄膜炎ともよばれる。
■日本においては第二次世界大戦前後が症例数のピークで、1960年代前半からは激減しており、近年では極めて稀な疾患となっている。

イメージ 1


■一般的に患者としては生後6カ月から2年の幼児及び青年が多い。
髄膜炎菌は患者のみならず、健常者においても5~20%の保菌率を示す。
保菌者が何故無症状のままであるのかについては気候や空気汚染等の環境条件や栄養条件、宿主側の免疫力の相違などが原因因子の一部として考えられているが、現在のところ明確な見解はない。
■患者のみならず、健常者の鼻咽頭からも分離される。人以外からは分離されず、自然界の条件では生存不可能である。
この菌はくしゃみなどによる飛沫感染により伝播し、気道を介して血中に入り、さらには髄液にまで進入することにより敗血症や髄膜炎を起こす。
■気道を介してまず血中に入り、
1)菌血症(敗血症)を起こし、高熱や皮膚、粘膜における出血斑、関節炎等の症状が現れる。
引き続いて
2)髄膜炎に発展し、頭痛、吐き気、精神症状、発疹、項部硬直などの主症状を呈する。
3)劇症型の場合には、突然発症し、頭痛、高熱、けいれん、意識障害を呈し、DIC(汎発性血管内凝固症候群)を伴いショックに陥って死に至る(Waterhouse-Friderichsen 症候群)。
菌血症で症状が回復し、髄膜炎を起こさない場合もあるが、髄膜炎を起こした場合、治療を施さないとその死亡率はほぼ100%に達する。
抗菌薬が比較的有効に効力を発揮するので、早期に適切な治療を施せば治癒する。
潜伏期間は3~4日とされている。
■髄液、血液から分離培養し、グラム染色による検鏡及び生化学的性状により髄膜炎菌であることを確定する。
最近はラテックス凝集法による診断キットがSlidex (Bio‐ Merieux )から販売されており、髄液中の
細菌抗原の存在の有無によって検出する方法がある。
ただし、このキットはA, B, C 群の抗原しか検出できないので、その点に留意する必要がある。
■第一選択薬としてpenicillin Gが、第二選択薬としてはchloramphenicol が推奨されている。
また一般に髄膜炎の初期治療に用いられるcefotaxime(CTX)、ceftriaxone(CTRX)、cefuroximine は髄膜炎菌にも優れた抗菌力を発揮するので、菌の検査結果を待たずしてCTX 、CTRX をpenicillin G と併用すれば起炎菌に対して広範囲な効果を現し、早期治療の助けとなる。


髄膜炎菌性髄膜炎について
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/disease/mening1.html
(これ以上ないぐらいに詳述されています)

イメージ 2


イメージ 3



<私的コメント>
乳幼児の細菌性髄膜炎を予防するために最近ヒブ(Hib)ワクチンが接種されています。
このワクチンはインフルエンザ菌b型 Haemophilis influenzae type b 、略してHib=ヒブと呼ばれているものです。
したがって今回のニュースの髄膜炎菌性髄膜炎には予防効果はありません。




<番外編>
咲く術の5月17日は「高血圧の日」でした。

日本高血圧学会|一般のみなさまへ|「高血圧の日」について
http://www.jpnsh.org/general_0517.html


イメージ 4






他に
井蛙内科開業医/診療録(4)
http://wellfrog4.exblog.jp/
(H21.10.16~)
井蛙内科開業医/診療録(3)
http://wellfrog3.exblog.jp/
(H20.12.11~)
井蛙内科開業医/診療録(2)
http://wellfrog2.exblog.jp/
(H20.5.22~)
井蛙内科開業医/診療録 
http://wellfrog.exblog.jp/
(H19.8.3~)
(いずれも内科専門医向けのブログです)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/
葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
(循環器専門医向けのブログです)
「葦の髄」メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」のイラスト版です)
があります。